glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

craving for you

グレジュビ、大人向け。
初H物です。

苦手な方は、ラストの描写の手前で止めて下さっても、お話的には問題ありませんので。

では、どうぞ。




*****


craving for you


「楽しかったですね!グレイ様」

劇場を出て第一声、少し興奮ぎみにそう言ってパンフレットを握りしめた。

「おう。そんなに期待してなかった割には、結構面白かったよな。」

グレイ様も楽しそうに笑いながらそう返してくる。
今日は、二人で、学生主催の演劇イベントにやってきていた。先日、ジュビアが行った仕事先で、報酬とは別でお礼だと言ってチケットを貰ったのだ。
「プロの劇団ではないですが、毎年とても人気のあるイベントなので、もしよかったら是非!」
そう言って差し出されたチケットは、ペアで2組分あったので、とりあえず一つはカジルくんにあげた。
「ちゃんと、レビィさんを誘わなきゃダメだよ?」
そう言うと、
「…はぁ!?
なんで俺がアイツを誘わなきゃなんねぇんだ!」
と、半ば無理やりな感じでキレていたが、その頬が少しだけ赤かったのも、そのあとでブツブツ言いながらもチケットと小さな青髪の彼女とを交互に見つめていたのも
ジュビアは知っている。
ふふ、ちゃんと誘えたのかな、ガジルくん。

そして今日、残ったもう一組のチケットを使ってグレイ様と久々のデートをした。
最近、あまり二人きりで会えていなかったから、
もしかしたら断られるかも…、そう思って少しだけビクビクしながら誘ってみたら、
「へぇ…面白そうじゃん」
そう言って、くしゃっと微笑んでオッケーしてくれた。
…よかった。心の中でこっそりとホッとした事は誰にも言えない。


劇場を出て、夕方のマグノリアの街を二人で歩く。もうすぐ冬のお祭りがやってくるせいだろうか、街全体がなんだか色とりどりにライトアップされていて、見ているだけで気持ちが浮き立つ気がする。

「綺麗ですね!グレイ様」

そう言いながら、グレイ様の袖口をおずおずとつまんでみた。
ホントは、手を、つなぎたい…。そう思ったけれど、今はその勇気は、ちょっとない。
グレイ様はそんなジュビアを見て、
困ったように目尻を下げて、
「そうだな」
と言った。

また、だ。
また、あの顔。

あぁ、やっぱり、こんな風に甘えたりしたらダメなんだ。

ジュビアがシュンと俯いて、そっと手を離そうすると。

…グレイ様がなんだか焦って追いかけるように、ぎゅっ、と手を握ってきてくれた。
びっくりして顔を上げると、やっぱりなんだか焦ったような困ったような顔でジュビアを見つめているグレイ様がいた。

…触れて、くれた。

嬉しくて、なんだかちょっと涙ぐみそうになりながら、じっ…とグレイ様の顔を見つめていると、掴んでくれていた手に少しだけグッと力がこもった。
でも、そのあとグレイ様はまたちょっと困ったような顔で微笑んでから、
バッ…と顔を反らせて。
そして、

「…なんか食いにいくか、何がいい?」

なんだか、取り繕うような感じでそう言った。


最近は、いつもこんな感じだ。
皆でいるときは、いつも通りのグレイ様なのに。
ジュビアと二人でいると、とたんに苦しいような困ったような、そんな顔をするようになった。
ジュビアが、何かしてしまったのかな…。
もしかしたらもう、
グレイ様に嫌われてしまったのかな…。


グレイ様とお付き合いを始めたのは、3ヶ月位前の事だ。
あの時は、何が何だかよくわからなかったけど。

ギルドに急にリオン様がやって来て、ジュビアの肩を抱いて『ラミアのパーティーがあるから一緒に行かないか。』と誘われて。

そうしたら『いきなり現れて何言ってやがんだ!テメェは!』とグレイ様が怒鳴って、いつものようにグレイ様とリオン様とのケンカが始まって。

あぁ、やっぱりグレイ様はリオン様の事がお好きなの!?
そう思ってジュビアがあたふたしていると、

『~~っ、ちょっと来い!』

そう言って、グレイ様がジュビアの腕を掴んで。

ふっと横を見ると、蹴り倒されて氷漬けになったリオン様がいて。

そしてそのままギルドの裏庭に引っ張って行かれた。
ジュビアがオロオロしていると、裏庭に着いたとたん、グレイ様に両肩をガシッと掴まれた。
そして、

『~っ、誰にでもベタベタ触らせんじゃねぇって、何回言わせんだ!この馬鹿女!』

そう言って思いきり怒鳴られた。
グレイ様に、そんなこと言われた事なんてあったっけ?
とジュビアがポカーンとしていたら、グレイ様が『しまった』って顔で気まずそうに宙を仰いで。

そうして、

『…あの、さ…』

何かを言いにくそうに口ごもった。

グレイ様が何を言いたいのか、ジュビアにはよく分からなくて、覗き込むようにグレイ様の顔を見上げたら。

『…くそっ…』

そう言ったグレイ様の顔がゆっくりと近付いてきて。
そして、いきなり唇を塞がれた。

こここれって、
キ、キキ、キス!?
グレイ様がジュビアに!?
なんで、なんで?
いきなり、あのっ、どういう…

パニックになった頭は全く回らなくて、恥ずかしさで真っ赤に染まった顔からはプシューっと水蒸気が出そうになって、ただ必死でグレイ様の上着をぎゅっと握るので精一杯だった。

唇を放したあとで、崩れ落ちそうなジュビアをグレイ様が優しく抱きとめてくれた。
でも、一瞬後には、今度は痛い位の凄い力で抱きすくめられて。
そして、掠れるような低い声で

『…好きなんだよ…。おまえのことが…』

そう言って、抱え込むようにギュッと抱きしめてくれた。
グレイ様がゆっくりと腕をほどいて、ジュビアの額にコツン、と額を当ててくる。
それから、グレイ様の両手がそっとジュビアの頬を覆って、また、唇が塞がれた。
さっきのよりも、もっともっと深いキスだったから、ジュビアはもう立っているのがやっとだった。


その様子をガッツリ覗いていたギルドのメンバーには、後でさんざん冷やかされたけれど、でもたくさん祝福もして貰った。
『やっとかよ』
『ホント、遅せぇっうか、ダセェっつーか』
『見てる方がイライラしたわよね』
『まぁ、グレイにしたら頑張った方じゃない?』
などと、ジュビアにはよくわからない言葉もたくさんあったが(そしてジュビアがキョトンとしている横で、グレイ様はその度にキレていたが)皆に『おめでとう!ジュビア』って言って貰って、とっても嬉しくて幸せだった。


…なのに…。

いつから、かな。
グレイ様の気持ちが分からなくなってしまったのは。
グレイ様が、ジュビアに、触れてくれなくなったのは。

こうやって外で会ったり、一緒に仕事に行ったりする事を誘った時には、ニッコリ笑って
「いいぜ。一緒に行こう」
と、快諾してくれる。
だから、ジュビアと一緒にいるのが嫌だとか、そんな風には思われてない、と思う。
二人で出掛けても、前と変わらずにとても優しい。

でも、ジュビアが、グレイ様の腕にそっと触れたり、近づいてじっとグレイ様の顔を見つめたりすると、とたんに困ったような顔をして、スッと距離を取ろうとする。

キス……も、して、くれなくなった。
でも、『キスして欲しい』…なんて、ジュビアの口から言える訳もなく。

ジュビアの何が、いけなかったのかな。
ジュビアのことなんて、もう、好きじゃなくなってしまったのかな。
考えても考えても、答えは出てこないままだった。



「…どうする? 何、食いたい?」

グレイ様が優しく微笑んで、そう聞いてくれた。
こうやって訊ねてくれる笑顔は、とても優しいのに。
久しぶりに繋いでくれた手も、こんなに温かいのに。
心の中は、少しだけ風が吹いていて淋しい。
でも、勇気を出して、お願いしてみることにした。

「…グレイ様、あの…」
「ん?」
「あの、…なんでもいいですか?」
「おう。ジュビアの気分に合わせるから。
何でもいいぜ、何にする?」
「…じゃあ、あの…」
「…うん?」
「…あの、ジュビア。
…グレイ様のおうちで、お料理したい、です」

勇気を出して、そう言ってみた。
それを聞いたグレイ様は、ぴたり、と動きを止めて、ジュビアの顔をじっと見つめてきた。
それから、またいつものあの、少し苦しそうな顔をして、

「…あー、…いや」

と返事をした。

やっぱり、断られてしまうのかな。
この間も、部屋に行きたいって言ったら、なんだかんだとはぐらかされて、結局連れて行ってはもらえなかった。

「ダメですか?」
「…いやっ、ダメ、って事はねぇけど…」
「…じゃあ、」
「いや、でも、外で 食わねぇ?
…家も、とっ散らかってるし、
作って貰うのも、悪ぃし…」
「そんなの、全然っ。大丈夫です!
あのっ実は、もう材料も買っていて…」


この間、カナさんが教えてくれたから。
ジュビアが悩んでいたら
「どうしたの?ジュビア。悩み事があるんなら、何でもこのカナ姐さんに言ってみな?」
そう、カナさんが言ってくれたので、少しだけ相談してみた。

グレイ様の態度がよそよそしいこと。
ジュビアに、触れてくれなくなった、こと。

すると、カナさんは
「ははっ、…大丈夫だよ。ジュビア」
クスクスと笑いながら、ジュビアの背中をバンバンと叩いてそう言った。

「…グレイはね、ジュビアの事が大事すぎて、
どうしたらいいか分からなくなってるだけだよ。」
「…よく、分かりません。
グレイ様を困らせないように、ジュビアはどうしたらいいんでしょう?」
「…んーと、そうだねぇ。
…そうだ! 今度さ、グレイの家に無理やり押し掛けちゃえばいいんだよ。」
「グレイ様のおうちに、ですか?」
「そう!
で、そこでグレイに、思いきり甘えてみな。
ふふ、そしたらさ。
万事、一気に解決ってなるよ。きっと。」
カナさんはいつものようにお酒を煽りながら、ニッコリ笑ってそう言った。


カナさんのアドバイス通りに、出掛ける前に前もって材料を買っておいた。
ジュビアが鞄の中身を見せると、グレイ様はその中をじっと覗きこんだ後で、固まったように反応しなくなってしまった。

ちょっと、強引だったかな…。
そんなに無理難題なことを言ったのだろうか。
でも、なんでもいいって、ジュビアに合わせるって、そう言ったくせに。
そう考えると、なんだかちょっと悔しくなって
涙ぐみそうになった。

「…ダメ、ですか?
ジュビアが、お部屋に行ってお料理するの、
……嫌、ですか?」

少し、声が潤んでしまったかもしれない。
目尻の辺りもジワッと水気が浮かびそうになるのを、必死で我慢した。
けれど、もしかしたらバレてしまったのかもしれない。
グレイ様は
「、ばっ…そんなわけねぇだろ」
少し焦った様子でそう言った後。

髪をくしゃっとかきあげながら、
「…あー…」
と唸るように呟いた。
そして、

「…わかった。」

一言そう言うと、ジュビアの手を引いて、グレイ様のお部屋の方に向かって歩き出した--。




***





「スゲェ美味かった!
ご馳走さん。」

料理をすべて平らげた後、両手を合わせて満腹感たっぷりにそう礼を言った。
並べられていたのは、ビーフシチューやシーフードのマリネ、ガーリックトーストに根菜のサラダと、どれも俺の好きなものばかりだ。

「はい!
グレイ様がたくさん食べて下さってよかった。
ちょっと作り過ぎちゃいましたね。
ジュビアも、お腹一杯です~」

俺のセリフに対してジュビアもニッコリ笑ってそう返事をしてくる。
いや、作ってくれた料理はどれもこれもお世辞抜きで美味かった。
コイツ、いい嫁になるよなぁ、なんて思ってしまってから、「何考えてんだ、俺は」と自分で自分に突っ込んでしまったが。

「片付けは俺がするからさ。
お前は座ってろよ。」
「えっ…?
いえっ、いいです!
ジュビアが片付けますから、グレイ様こそ座ってて下さい!」
「いいって。
片付けして、珈琲入れるくらいは俺にも出来る。
いいから、お前はあそこに座ってろ。
命令。」

そう言って、ジュビアの頭をポンポンと押さえつけながら、ソファーを指差した。
そうして、さっさと席を立つ。

「…あぅー」

先に仕事を奪われてしまったジュビアは、恨めしそうにジトッとこちらを見つめていたが、やがて諦めたのか素直にソファーに向かっていってポフッとそこに座った。


ザーッと水を流しながら食器を洗って立て掛けてゆく。
こうやって作業をしている方がいい。
余計なことを色々と考えずに済む。

ジュビアが、『家に来たい』と言い出した時には、どうしようかと思った。
なんとかして断ろうと思っていたら、もう買い物もしてあると言って鞄の中身を見せてきた。

…マジかよ…。
いや、でも、やっぱり家は…

そんな風に逡巡していると、 繋いでいた手にジュビアがギュッと力を入れて…
そして今にも泣きそうな顔で
「…ダメですか?」
と訊いてきた。

…しっかりしろよ、俺。
ジュビアに、こんな顔させたい訳じゃねえだろ。
俺さえきちんとしてれば、何も問題ねぇはずだろ。

自分で自分を叱咤して、思いきり自分の心に釘をさして、そうしてコイツを連れて家に帰った。


最近は、ジュビアと二人きりになるのが怖い。
ギルドで会ったり、今日みたいに外で人目もある場所に出掛けたり、というのはまだマシだが。
二人きりになると、とたんに自分の気持ちが抑えられなくなるのがわかる。

抱き締めて、キスして…
そして、もっともっとと、そこから先を求める自分がいるのを、どうやっても自覚してしまう。

付き合い始めてしばらく経った頃に、ジュビアをこの部屋に連れてきた。
今日と同じように、料理を作ってくれて、二人で他愛もない話をして。
そんな中で、わざとルーシィやエルザの名前を出したりしてジュビアの事をからかっているうちに、二人してソファーに倒れこんでしまった。

腕の中に、ジュビアがいて。
からかわれたせいか少し潤んだ瞳で、キッ…と上目使いに俺の事を睨んできた。
本人は、必死で威嚇しているつもりなのかもしれないが、そんな可愛い顔で睨まれても逆に煽られるだけで。
そのまま、吸い寄せられるようにキスをした。

「…ん、っ…あ…」

どんどん深くなっていくキスとジュビアの甘い声に頭の奥がクラクラして、理性の糸はもう切れる寸前だった、と思う。

でも。
俺が少し近付くだけでビクッとして震えたり、
キスして耳元に触れるだけで一杯一杯のジュビアを見て、
『あぁ…、まだ 早ぇんだな。』
と、そう、思った。

急いで、身体を繋げたいと思ってるわけじゃない。ジュビアの事が大事だから、コイツの気持ちが追い付くのを待って、ゆっくりゆっくりいけばいい。
本当に本心からそんな風に思って、ずっとそれからの日々を過ごしてきた。


でも。

でも、もう、駄目なんだ、ジュビア。

お前が無邪気に俺に触れてきたり、無意識に甘えてきたりするたびに、お前のことが欲しくてたまらなくて、どうしようもなくなるんだ。
お前がそんなつもりじゃないことも、充分 分かってるのに。
ドロドロとした汚ねぇ欲が沸き上がって来るのを止められない。

そんな自分を自覚してからは、ジュビアに触れることも出来なくなってしまった。
ましてや、キスなんて…。
今、ジュビアにキスして、そこで止まってやれる自信は俺にはない。
そのぐらい、俺ももう一杯一杯なんだよ。
お前がときどき、淋しそうな顔をしてるのにも気付いてる。
今日も、辛そうな悲しそうな顔して、俺の袖口から手を離そうとしたから、無意識に慌てて追いかけて手を掴んだ。
久しぶりに繋いだ手から伝わる体温に、クラクラした。
じっ…と、見上げてくるジュビアを見ているだけで、もう、ヤバイ、と思った。

大切にしてやりたい気持ちと、今すぐにも抱き上げて俺のものにしてしまいたい気持ちとが螺旋階段のように絡まって、身動きがとれない。この迷路の出口は、一体どこにあるのだろう。



「うしっ、完了。
ジュビア、珈琲入れ……」

洗い物を終えて、ソファーの方を振り返りながらそう言ったセリフは途中で切れてしまった。
…寝て、やがる。
クッションに埋もれた状態で、すぅすぅとジュビアが眠っていた。

そっと、ソファーに近付いて、床に膝をついた。
…疲れたんだよな。
腹も膨れたし、眠くなるのも当然か。
ジュビアの青い髪にそっと手を入れて透いてやると、気持ち良かったのか瞳を閉じたままフニャッと頬を緩ませた。

…くそっ、かわいい…。

なんで、こんなに無防備なんだよ。
ここに、こんなにお前に餓えた男がいるっていうのに。
だいたい、部屋に来たいって言う時点で、ちょっとはそういう事も考えろよ。
好きな女が、自分の部屋で目の前にいて、手ェ出さねぇヤツなんていねぇだろうが。
お前はそういうとこが、全然分かってない。

…あぁ、クソ。
このままじゃ、マジで、…ヤバイ。
さっさと起こすに限る。
そう思って、ジュビアの頬をフニッとつねってやった。

「…むぅー…」
「…ほら、起きろって。ジュビア」
「‥はれ?…グレイ様?」

眠りは浅かったようで、ジュビアはすぐに目を覚ました。
まだ少し寝ぼけているのか、目をコシコシとこすっている。
かと思ったら、突然、ガバッと起き上がって、

「はわわ!すみません、グレイ様!
ジュビア、寝てしまうなんて…!」

慌ててそう言って、俺の腕をギュッと掴んだ。

ジュビアが一気に距離をつめてきたせいで、目の前にジュビアの顔がやって来た。

……近い。
この、距離はまずい。

俺は慌てて顔をバッと反らすと、

「…いいから。…疲れたんだよな。
今日はもう送っていくから、
…とりあえず起きろ。」

そう言ってその場を離れようとした。
少し、怒ったような声になってしまったかもしれない。
そのぐらい、全く余裕がなかった。

でも。

ジュビアは掴んでいた俺の腕を離そうとはしなかった。
そして、

「…グレイ様…っ…あのっ、」
「…なんだよ」
「ごめんなさい。
寝てしまったのは謝ります。
だから…」
「………」
「だから、あの、もう少し一緒にいてください…」

必死にそう訴えてきた。
思わず、視線を戻してジュビアの顔を見つめると、本当に必死な様子でジュビアが俺の腕を更にギュッと掴んでくる。
瞳には、今にも決壊しそうに涙が浮かび上がっていた。

「…ジュビア…」

「…お、送っていく、とか、帰れ、とか言わないで…
グレイ様と、一緒にいたいんです」

涙声でそう言って、潤んだ瞳でじっと見上げてくる。

「……っ」

「…ジュビアと、一緒にいるの、
…いや、ですか?
どこか…、わ、悪いところがあるなら、直しますから…!
だ、だから、キライに、ならないで下さ…」

…限界、だった。

ジュビアの台詞の途中で、そのまま、一気に引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。

「…っ、グレイ様…?」

抱きしめたジュビアの香りに、身体の奥の方が熱を帯びる。

「…お前は、なんも分かってねぇ…」
「…グレ…」
「俺が!…いつもどんな目でお前を見てるか。
どれだけ、必死で我慢してるか…!」

抱きしめる腕に込める力を抑えることなんて出来るはずもなく。
そのまま、壊してしまいそうなくらいに強く抱きしめた。

「…こんな風に、夜に部屋でそんなこと言ったら、どうなるかって事も分かってない。」
「…っ…わかってます…!」
「…分かってねぇだろ!
こうやって、お前に触れてしまったら…
そのままお前の事、抱くっつってんだ!
お前が、…どんなに嫌がったって…、
途中で、止めてやれないっつってんだよ!」
「…わかってます…っ!」

腕の中でジュビアが、そう、叫んだ。
吃驚して、少し腕を弛めて、ジュビアの方を覗きこんだ。
ジュビアは、濡れた瞳で上目使いにキッ…と俺の方を見てから、今度はもう一度、ゆっくりと噛みしめるように、

「…ちゃんと、わかってます…
ジュ、ジュビアは、グレイ様なら…
グレイ様だから…、」

そう言って、ギュッと俺に抱き付いてきた。

あぁ、…ごめん、ジュビア。
もう、ほんとにこれ以上は無理だわ、俺。

ジュビアの後頭部を抱え込んで、そのまま噛みつくように口づけた。
んっ、とジュビアが声を上げた隙にすかさず舌を差し入れて、ジュビアの舌を絡めとる。

「…あ、っ……」

ジュビアの甘い声に、今まで必死に抑えてきた理性の針は、一瞬で振り切れて。
俺の忍耐力なんて、こうして壁を乗り越えて来てくれたジュビアの前に、呆気なく崩れ去った。

「…朝まで、離さねぇからな。
覚悟しろよ。」

そのまま、一気にジュビアを抱き上げる。

そうして、ジュビアのこめかみにそっとキスを落としながら、寝室に向かって歩き出した―。





***





「…っ、あっ、」

ベッドにジュビアを沈めて、両手をシーツに縫い止める。
そのまま、首筋に唇を這わせた。

「…っ、グレイ様っ、
待っ、て…」
「…待つかよ。」
「ちがっ、あの…っ、シャワーを、…」
「…いらねぇ。お前、いい匂いだし」
「…やっ、でも…」
「…あぁ、もう、
これ以上焦らすなよ。
…ますます手加減してやれなくなる。」

煩い口を手でふさいで、耳に舌を差し入れた。
そのまま、頬、鼻筋、唇とキスを降らせていく。
首筋にたどり着いた時には、思いきり吸い上げて、赤い印を幾つもつけてやった。
俺のもんだっていう印。

服に手をかけて、1枚1枚剥ぎ取ってゆくと、恥ずかしいのかジュビアは両手で顔を隠してしまった。
その両手をそっと外して、もう一度シーツに縫い止める。

「…顔、隠すなよ」
「だ、だって、恥ずかしくて…、
死にそうです…」
「…何、言ってんだ。
これからだろ」

そう言って、ジュビアの豊満な胸を掌でもみあげた。
紅く染まった頂きを指でそっと転がしてやると、
「…あっ…っ、」
とまた甘い声が飛びだす。
そのまま、硬くなってきたそこに舌を這わせて、唇で吸い上げた。

「…あ、あっ、グレイ様、やっ」

何度も何度も、左右交互に舌で転がして舐めあげてやると、ジュビアの身体から力が抜けて、グッタリとしてきた。
…かわいい。
もう、どうにかなりそうだ。

ゆっくりと手を下肢の方に下ろしていく。
身体に1枚だけ身に付けているショーツの上から、そっと秘部に手を這わせた。

「…やぁっ、待っ、…やっ」

布地の上からでも、少ししっとりとしているのが分かって、ほっと胸を撫で下ろす。
嫌がってる、わけじゃねぇんだな。
もう、ここまできて、止めてやれない事は確実だけど。
出来れば無理矢理怖がらせるようにはしたくない。

指を、自分の唾液で充分湿らせてから、ショーツの隙間から差し入れた。

「…ああっ、やめ…、待っ…やぁっ」

何度も何度も溝の辺りを往復させてゆっくりと馴らしていく。
しつこい位に入口の処を擦りあげながら、
胸を甘噛みしてやると、ジュビアの口から「イヤ…ダメ…」というとんでもなく甘い声が聞こえてきた。
あぁ、もう、ヤバイ。
大事に、抱いてやりたいのに。
ジュビアの声が俺の余裕を根こそぎ奪ってゆく。

しばらくすると、馴らしていたそこが充分に潤ってくるのがわかった。
水音が脳天を刺激する。
ジュビアの身体から、最後の1枚を剥ぎ取って、そして、ゆっくりと中指をそこに埋めた。

「やぁぁっ、…あ、っ、」

初めて入ってくる感覚にジュビアの声も大きくなる。

「‥きつっ…。
ジュビア、力抜け」
「…やっ、無理…無理です…」
「動かすぞ」
「…え、…?
やっ、…あっ、やめて」

ジュビアの甘い声に押されて、中に入れた指を抜いたり入れたり、中をかきまぜたり。
少しずつ指を増やして、中でバラバラにくっと折り曲げると、「やぁぁ…っ」というジュビアの声が響いた。

「…見つけた。ここ、だろ」
「や…っ、いやっ、…やめて。
や、…あぁ、っ、」

弱い処を見つけたので、思いきり撫で上げてやると、ジュビアがぽろぽろと涙をこぼしながら声を上げてくる。

…クソッ、やばい。
そんな可愛い反応されたら、もうおかしくなりそうだ。

指を3本入れたまま、親指で紅く熟れた粒を転がして刺激すると、水音がますます大きくなった。
そのまま誘われるように、ゆっくりと顔を下肢の間に移動させると、ジュビアの身体がビクッと強張った。

「…ジュビア、脚、開いて」
「…ダメ、っ…。そんなの無理です…っ」
「…大丈夫だから。
ここに、キスさせて」
「…ぃやっ、ダメ…
…!?……きゃあっ」

ジュビアの抵抗は無視して、強引に脚を開くと紅く熟れた粒にそっとキスをした。
そしてそのまま、そこに舌を這わせると、
「…い、やぁっ、…あっ、」
声を上げて、ジュビアがまた震えた。
震えながらも、ジュビアの身体がピンと張りつめる。
目に雫をためながら震えるジュビアが可愛くて、グッタリとするまで散々そこを舌で愛し続けた。


身体に力が入らなくなってしまったジュビアを見つめて、そっと顔を上げた。
そのままギュッとジュビアを抱き締める。
両手で頬を覆って、額と額をコツンと合わせた。

「…ジュビア、ごめん。
もっと、してやりてぇけど…
俺が、もう、限界…」

散々、ジュビアに触れて、甘い声を聞いて、
こんなに可愛い姿を見せられて。
もう、限界なんてとっくに超えてる。

「…抱いて、いい?」

息詰まるような、懇願するような声で、そう聞いた。
ギリギリまで切羽詰まった俺の顔は、さぞかし情けなかったに違いない。
ジュビアが、コクッ、と小さく頷いてくれた。

「…そのまま、力抜いてろよ」

そう言って、限界まで張りつめた自分のそれを、そっと秘部に這わせる。
クッ、と入口に射し込んだ後は、一気に奥まで突き上げた。
ゆっくりゆっくり挿入してやる余裕は、もう、なかった。

「…や、あぁぁっ」

初めての痛みにジュビアの身体も跳ね上がった。
呼吸もままならない位に、ハァハァと息を詰めている。

「…大丈夫、か?」

脳天を突き上げるような快感のなか、息を吐いてそう聞いた。

大丈夫、なわけねぇよな。
…痛かったよな、ごめん。

でも、やっと、こうして抱くことが出来た。
ジュビアの全部、俺のものだ。
全身を突き抜けていく快感と、こみ上げるとてつもない愛しさとで、頭がどうにかなりそうだった。

「…っ…大丈夫、です…」

ジュビアが、必死に息を整えながら、そう言った。
そして、目尻に涙を潤ませながら、

「…グレイ様で、いっぱい…で、
ジュビア…、幸せ、です…」

にっこり微笑んで、そう 言った。

その言葉の破壊力はもうとんでもなくて、俺のなけなしの理性を吹き飛ばすには充分すぎた。
…クソッ…大事に抱いてやりてぇ、のに…

「…、ごめん、ジュビア…っ」

ジュビアの両膝を抱え込んで、一度引き抜いたそれを、再度思いきり奥まで打ち込んで。
そのまま手加減なしに、溢れでる気持ちのままに何度も何度も突き上げた。

「、あ、あっ、や、待っ…」
「…ジュビア、…っ、
ジュビア…」
「…グレイ様、…っ、あ、」

あぁ、駄目だ。
こんな抱き方して、ごめん、ジュビア。
でも、愛しすぎて、かわいすぎて、止まってやれない。
俺に突き上げられるままに、ジュビアが腕の中で震えて啼いてる。

「……、好きだ、」
「…あぁっ、まって…ダメ…」
「……ジュビ、ア…
ごめん、もう…」
「…あ、っ、やぁぁっ…」

白濁する意識の中で、こみ上げる愛しさと一緒に、ジュビアの中で果てた。
そのまま崩れ落ちるように、ジュビアの上に倒れこんで。
そして、
ビクビクと波打つジュビアの身体をギュッと抱きしめた。

ジュビアも、俺の背中に腕を廻して、しがみつくように抱き付いてくる。

二人の呼吸が落ち着いてから、
そっと顔を上げると、ジュビアが涙と恥ずかしさとで瞳を真っ赤にして、
でも、俺を見て、幸せそうに微笑った。


あぁ…、愛してる、ってこういう事を言うんだな、きっと。
愛しくて、切なくて、幸せで。
何よりも大切で、離したくない。

「…ありがとな。」

そう言って、もう一度ジュビアを抱き締めた。

「…グレイ様、…大好き、です」

ジュビアも廻した腕にまたギュッと力を入れて、抱き付いてくる。
そうして、子猫のように頬をすり寄せた後で、ジュビアはまたこのうえなく可愛い顔で微笑んだ--。




〈了〉








∞∞後書き∞∞



すみません。
がっつり、大人向けにやってしまいました(>_<)。
不快に思われた方がいらっしゃいましたら、
ごめんなさいです。
タイトルの和訳は『渇望』です。
グレイ様、全く余裕がない、の巻でした。


今回、前話の『天使』とちょっとだけ繋げてみました。
こっそり過ぎて、きっと誰も気づかないかも、です。

ここまでお付き合い下さって、ありがとうございました。
初H物だけで、5本でも10本でも書ける私ですが(笑)、次はちゃんと全年齢物を書きたいと思っています。
また、よろしくお願いします(*^^*)