glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ③

グレジュビSS。
『ことのは』シリーズ③
ルーシィ視点。


ではでは。





「何してんの?」

ホテルの下の、ショッピングモールで。
後ろからそう声をかけると、背の高い黒髪の男が、目の前でビクーッと跳ねた。
そうして、恐る恐るといった体で、そぉっとこちらを振り向く。


「……ルーシィ」
「何してんの?グレイ」


ニッと笑って、そう訊ねる。

何してる、も、くそもないわよね。

こんな可愛いアクセサリーショップで。

私が後ろから近付いた事にも気付かずに、真剣に。


「…髪飾り?」
「…う、…いや…/////」


グレイが両手に1つずつ、持っていたソレを見つめて、そう訊ねる。


「…どっちにしようか、悩んでんだ?」
「…べっ、べべ別に、そういう訳じゃ…!」


グレイは、そういうと慌てて持っていた髪飾りをどちらもディスプレイ台の上に戻した。

戻されたその2つを、そっと手に取って見つめてみる。

1つは、透き通るような硝子細工の淡いオレンジの花を2つ並べてその周りをシルバーの枠で囲ったもの。
もうひとつは、真っ白の三日月の周りに小さな水色の星がくるりと環を描いているもの。

どちらも、上品でお洒落で、そしてとても可愛い。


「…素敵。
きっと、すごく喜ぶよ。」
「…っ、別に、ジュビアにやるなんて言ってねぇだろ…!」
「…誰も、ジュビアだとは、言ってないけど?」
「………!!」


自分で墓穴を掘った氷の魔導士は、しまったとばかりに顔を真っ赤にする。

そして、気まずいのか、手で顔を覆ったまま、そのままプイ、と横を向いてしまった。


「……(くすっ)……、昼間、拗ねてたもんね?」
「………//////」
「…頬っぺた、ぷうっと膨らましてさ。
でも、その後、木の陰で、くすんって泣いてたもんね?」
「……知らねぇよ。」


ギルドの皆で、雑誌の取材で写真を撮った。
ウェンディが可愛い絵本を見てて。
それを見たグレイが、ウェンディに氷の王冠を作って頭に載せてやったのを見て。

可愛い彼女は、最初は
「グレイ様、ジュビアも!ジュビアも欲しいです~!(>_<")」
と、強請っていたのだけれど。
照れたグレイに「はぁ!?子供かよ!」と一喝されて、しゅんと落ち込んでいた。

でも。
そのあとビーチの向こう側の木の陰で、くすんと拗ねていたジュビアを、グレイがチラチラと気にして見ていたのは、ギルドのメンバーのほとんどが知っている。
暫くウロウロと悩んだ挙げ句に、手の中で小さな王冠を作ったと思ったら、周りの目を気にしながらそっとジュビアに近付いて行ったことも。
頭に載せてやろうとしたら、肝心のジュビアが拗ねて涙ぐんだまま眠ってしまっていたことも。
そして、ため息をついたグレイが、手の中の王冠を氷の欠片に変えてキラキラとジュビアの周りで光らせたことも。



「…ホント、可愛いよね。」

私がクスリと笑ってそう言うと、グレイは横を向いたまま、ハァ、とわざとらしいため息をついた。

それから。
覚悟を決めたようにぐっとこっちを向く。

そうして、これ以上ないくらい照れて赤くなった顔で、
私の手の中にある2つの髪飾りを見つめて。




「…どっちの方が、似合うと、思う?」

と、訊いてきたから。


その、あまりの微笑ましさに、私の心の中までが、
ポカポカと暖かくなった。



「…そうね。
んー、…こっちかな!」





(……その顔。なんでジュビアに見せてやらないかなぁ…!)






〈了〉







マガジンの扉絵より。
素直になれや!ヘタレさんめ~~!
髪飾りは、皆さんが似合うと思われる方をどぞ。