glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑤

グレジュビSS。
『ことのは』シリーズ⑤
③の続きです。

ではでは、どぞ!






ホテルのプールサイドで、グレイ様と二人。
なぜだか、ジュビアはグレイ様の腕の中にいた。
えっとえっと、これは、あの、どういう…!?





「ジュビア、今からちょっとプールに行ってくれない?」
「…?プールですか?
どうしてですか?」
「いいから、いいから。
ちょっとだけ。ねっ?」

なんだかよくわからないままに、同室のルーシィに無理矢理部屋を追い出されたので、仕方なくプールに行ったら、そこにグレイ様がいた。

ルーシィったら、プールに一体何があるのかしら?
でもでも、グレイ様に会えるなんて、なんて素敵な偶然…!
そう思っていたら、グレイ様が、ジュビアの方に近寄ってきた。

「ジュビア」

グレイ様が、ジュビアを呼んでくれた。
それだけで、パァァと顔が綻んでしまうくらい嬉しくなってしまう。
こんなに素敵な偶然をくれたのだから、後でルーシィにはお礼を言っておこう。

「グレイ様、こんなとこで何してるんですか?」
「……は?」
「あ、もしかして夜のプールで、ひと泳ぎですか?
昼間、あんまり泳げなかったですもんね?」

ニコニコと笑ってそう言った。
途端にグレイ様が苦虫を潰したような顔をする。

「………」
「…ジュビアは、何だかよくわからないんですけど、
ルーシィにちょっとプールに行ってって言われて…。
でも、やっぱり、何もないですね?
……もう、ルーシィったら。」
「……いや、あのさ…」

プールで、キョロキョロと周りを見回しても、特に何も変わった所はなかった。
…ハァ…、もう何だったの…。

「……グレイ様、おじゃましてしまってすみません。
ジュビア、もう、お部屋に戻りま…」
「だから、ちょっと待てって!」

グレイ様が焦って、ジュビアの手を掴んだ。

ググググレイ様!?
手っ、手が、あのっ…////。

顔が、ポォォッと火照ってくるのが、わかる。
恥ずかしい…!

「……ったく、なんで、お前は…。
普段、あんなにガツガツ来るくせに…。」
「……はい?////」
「……、……俺、だよ。」
「……?…何がです?」
「…~~っ、だから!
お前に用があるのは、俺だ、っつってんだ!」

グレイ様は、何だか真っ赤な顔をして、そう叫んだ。

グレイ様が?
ジュビアに?

言われた事がよくわからなくて、キョトンとしてグレイ様を見つめたら。

グレイ様は赤い顔のままで、
小さくため息をついた。


***



なんで、そこでキョトンとすんだよ。
プールに呼び出されて来て、そこに俺しかいなかったら、普通呼び出したのは俺だってわかるだろ、くそ。

コイツはいつもそうだ。

自分からは惜しみ無く気持ちを振り撒くくせに、
俺が、少しでも動こうとすると、途端に鈍感になる。

「……、…グレイ様が?」

大きな目を見開いて、そう訊ねてきたジュビアに、コクンと頷く。

「……えっと、……?」

訳が判らないといった様子のジュビアを見て、また1つ小さく息を吐く。

そのまま、掴んでいた手をゆっくりと持ち上げて。
そっとジュビアの掌を開いた。

そして、そこに、コロン、と、小さな髪飾りをのせる。
それから、そっと繋いでいた手を外した。



「…………これ…」

ジュビアは、しばらくの間、じっと自分の掌の上の髪飾りを見つめたあとで。
ボソッ、とそう言った。

そして、自信無さげに、
「……あの、…」
と呟く。

「……お前に、だよ。」

あぁ、多分、俺の顔も真っ赤になってるに違いない。
顔の中心部に、熱が集まって来るのがわかる。

「……ジュビアに?」
「……そうだよ。」
「…、あの、ジュビアに、ですか?」
「…だから、そうだって…!」

ジュビアは、しばらくそんな俺の様子を呆然と見つめたあとで。

もう一度、ゆっくりと掌の髪飾りに目を落とした。

「…………」
「…氷、だと、…消えてなくなっちまう、から。」
「…………」

俺が、呟いた一言にも、ジュビアは何の反応も示さなかった。
ただ、じっと、掌の上を見つめている。

…き、気に入らなかった、…か?

「…ジュビア?」
「…………」

くそ、なんでもいいから、なんか言えよ…!

「……、コレが嫌だったら、何か別の…」

俺がそう言った瞬間、ジュビアは、ハッと顔を上げて、そして、両手でギュッと、掌を握りしめた。
それから、掌ごと、髪飾りを胸の前で抱き締める。

……その、あと。
……ジュビアの、瞳には、みるみる内に雫がたまっていって。

瞬きした弾みに、ポロポロとその綺麗な雫が、こぼれ落ちていった。

「……ジュビア?」

ジュビアは、相変わらず、胸の前で、掌で掌を覆ったまま。
大事そうに、ソレを抱きしめて。

「…………」

綺麗なあの大きな猫目で、じっと俺を見つめてきた。

それから、涙混じりの声で。

「……う、嬉しい…です…、…」

と、何とか一言、そう囁いた。



***



グレイ様が、ジュビアに髪飾りを、くれた。

なんで?
なんで、だろう。

わからないけど。

でも、……嬉しい。
嬉しくて、…涙が、勝手に出てきて、
何も言葉にできなかった。

ジュビアのために、選んで、くれたのかな。
その時は、少しはジュビアの事を、考えてくれたの、かな。

…はっ、もしかしたら、…別の、誰かにあげる予定だった物が、何かでたまたま、ジュビアの所に来たのかな。
ジュビアなら、何でも、グレイ様の要らない物でも、グレイ様がくれる物なら何でも、喜ぶから。

…そうなのかも、しれない。
だって、…あり得ないもの。
グレイ様がジュビアに、なんて。

でも、でも、それでもいい。
それでも、ジュビアは、もう充分すぎる位、嬉しいから。


「……ありがとう、ございます。」

ちゃんと、お礼を言わなくちゃ。
そう思って、グレイ様の目を見て、そう言った。

「……//////。
気に、入ってくれた、か?」
「……!
…はい…!
…はい、…勿論です。」

グレイ様は、大きな手で、自分の顔を覆うように隠してしまう。
隠されたその表情が、少しだけ赤いように見えたのは、ジュビアの気のせいかしら?

「…////…だったら、…よかった。」
「………」
「すげぇ、悩んだから、さ。
…いいな、と思うのが、2個あってよ…」

グレイ様は、手で顔を覆ったまま、僅かにそっぽを向いてそう言った。


「……あ、の、グレイ様」
「……ん?」
「…それって、…それって、
あの、……」
「………?」
「……あ、の…」
「……だから、なんだよ?」
「…ジュビアの、ために、
…え、選んでくれた、って、ことですか?////」

ジュビアが、そう訊ねると、グレイ様は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして。
それから、ちょっとだけ眉間に皺を寄せた。

「……あっ、ちち違います、よね。
ごめんなさい……」

調子に乗った発言をした自分が、ホントに恥ずかしくなって、どこかに隠れたくなった。

馬鹿ジュビア…!

「…あの、あの、ジュビアは、グレイ様がくれる物なら、何でも…」

そう言いかけたジュビアの腕を、グレイ様が、突然グッと掴んだ。



***



コイツは、一体、何を言い出すのだろう。

思わず、掴んだ手に力が籠る。

「…っ、グレイ様…?」

お前のために選ぶんじゃなかったら、一体誰のために選ぶんだよ。

お前が、あんなに拗ねてたからだろ。
昼間の、くすんと泣いてた様子が頭から離れなくて。
それで、…それで。

どっちの方が似合うかな、って、真剣に悩んで、選べなくて。

あの、『グレイ様~~////』って、笑顔が、見たくて。

…喜ぶかな、…笑って、くれっかな、って。


じっとジュビアを見つめたまま。
眉間の皺が、また少し深くなる。

「…っ、グレイ様?」

「…おまえさ…」

「…はい?」

「……お前のじゃなかったら、…他に誰のために選ぶって思うわけ?」

「……えっ?」

ジュビアが、心底判らないといった表情で俺を見つめてくるから。
なんとなくイラッとしてくる。

「…~~っ、だから!
お前以外の誰に、俺がこんなことすんだよ!?
……ねぇだろ!?」

「……そ、そうです、か?」

「…そうだろ!?
普通に考えたら、わかるだろ!?」

「……ええっと、はい…??」

俺の迫力に圧されてか、納得したような、してないような、よく判らないといった顔で、ジュビアが頷く。

「…よし。」

…まぁ、わかりゃいいんだけどよ。

とりあえずは、納得したらしいジュビアを見て、俺も一応は掴んでいた腕を少しだけ緩めた。

ジュビアは、相変わらずキョトンとしていたが。

でも、そのまま、もう一度、掌の中の髪飾りにゆっくりと視線を移して。

ソレを見て、これ以上ない位幸せそうな顔をして、花が綻ぶように、微笑った。

それから、
おもむろにごそごそと動いて、一所懸命に、その髪飾りをつけようとし始めた。

でも、鏡がないからか、どうやら上手くいかないみたいで。

何だか、四苦八苦しているその姿に、ぷっ、と噴き出す。

そっと、ジュビアの手首を掴んだ。

ゆっくりと、ジュビアの手から、髪飾りを取り上げる。

そして、フワフワとしたその水色の髪に手を通して、
パチン、とその髪飾りをつけてやった。

ジュビアの綺麗な髪の上で、ソレが、キラキラと輝いている。

「…に、似合ってます、か?」

ジュビアが真っ赤な顔をして、そう訊いてきたから。

……~~っ。……クソ。

何も言えなくなって、プイ、と目を反らす。

すると、今度は。
またちょっとだけ、瞳をうるっ、とさせて、

「…やややっぱり、……似合って、ないですか?」

と呟いた。

……あぁぁ、っ、もう…!

そのまま、そっとジュビアを引き寄せて、ふんわりと腕の中に閉じ込める。

「……ああああの、グレイさま!?」
「……おまえさ、俺をどーしたいの?」
「…はい?」
「……つーか、そういうとこ、ホント……
マジで、勘弁して…」
「………??」





(……~~っ…なに、この、かわいい奴…!)







〈了〉








自覚は全くないくせに、無意識の内に、もうコレ告ってんじゃねーの?なグレイ様と、全然判ってないジュビたん。
そして、グレイ様、自分の発言の内容がほぼ告ったことに気づいてないの巻…!