ことのは ⑥
グレジュビミニSS。
『ことのは』シリーズ ⑥
ほんわかギルドな風景。
どぞ。
*
仕事が終わって、帰り着いたギルドのドアをくぐると。
なにやら、奥の方で、人だかりが出来ていて、盛り上がっている。
一体、何をやってるんだろう?
ほんの少し、興味をひかれはしたが。
まぁしかし、うちのギルドに限って言うと、そもそも騒いでない日というのはそんなにはないので、珍しくも何ともない光景。
なので、たいして気にもとめずに、そのままカウンターの方へ進んだ。
「ただいま。ミラちゃん。」
「おかえりなさい。
お疲れさま」
笑顔で迎えてくれるミラちゃんに、軽く会釈して、カウンターの椅子に座った。
そのまま、簡単に仕事の報告を済ます。
そこまでいって、何やらいつもと違うような、どこか物足りないような、違和感を感じる。
……あぁ、そうか。
いつもいつも、一番に駆け寄ってくる、あの水色が来ねぇから。
い、いや、別に、待ってる訳じゃ、ねぇけど…!
一体どこにいるのだろう?
キョロキョロと、ギルドの中を見回していると、
目の前で、ミラちゃんが、くすっと笑った。
「ジュビア?」
「……っ、ち、ちが、」
「ジュビア、あそこよ?」
俺の否定の言葉なんて意にも介さず、ミラちゃんはそう言って、向こうのテーブルの喧騒を指差した。
あぁ、入ってきた時に気になった、人だかり。
なるほど、確かにその中心にジュビアはいた。
カナと向かい合わせに座って、何やら真剣な顔で手の中を覗きこんでいる。
……何、してんだよ?
あんなとこで。
気付いてねぇのか?
俺が、戻ってることに。
何となく面白くなくて、ガタンと席を立って、その喧騒の方へ向かった。
一体何にそんなに真剣になってんだ…?
人垣を掻き分けて、ジュビアの後ろに立つ。
そして、じっと手の中を覗きこんでいるジュビアを見てみると、どうやらカードを何枚か持っているようだ。
「……何、やってんだ?」
後ろから、ジュビアに向かって、ゆっくりと声をかけた。
しかし、ジュビアは俺が話しかけたにも関わらず、こちらには全く目もくれない。
「……。ジュビア?」
なんとなく、ムカッとして、ジュビアの名前を呼んでみる。
すると。
「グレイ様。
ジュビアは、今、人生の大勝負中なので、話しかけないでください。」
ジュビアは、こちらの方を見もせずに、そう返事をした。
なんだよ。人生の大勝負って。
「ちょっと、グレイ。じゃましないでよ~。」
今度はテーブルの向かい側から、カナの声が聞こえてくる。
ジュビアのカード勝負の相手をしているのは、カナだった。
「…じゃま、って。
…つか、何やってんだよ?」
「えー、ジュビアと、勝負だけどー?」
「勝負って、何の?」
俺がそう訊くと、今度はジュビアが、
「ジュビアは、この勝負に、絶対に、絶対に、
勝つのです~。」
と言って、さらに食い入るように見つめながら、カードを手に取った。
ダメだ。
ジュビアは、まともに話にならねぇ。
こうなったら、カナの方に事情を聞いた方が、早そうだ。
「…カナ。何、企んでやがる?」
「やぁだ。企むなんて、人聞きの悪いこと言わないでよね~」
カナは、片手に持っていた酒をくっと、飲み干してから。
「ジュビアと、ちょっとした賭けをしてるだけだよ。
ねー、ジュビア」
と、にやっと笑って、そう言った。
「賭け?」
「そうです~!
ジュビアは、ジュビアは、この勝負に勝って…」
この、勝負に、勝って?
「カナさんだけが知っている、グレイ様の秘密を教えてもらうのです~!」
ジュビアは、真剣な瞳でカードを見つめたまま、キッパリとそう言い放った。
はぁぁ!?
なんだよ!それ。
つか、カナしか、知らない俺の秘密……って……。
言われた言葉にどぎまぎしながら、そーっとカナの方に視線をやると。
カナは、悪戯っけたっぷりの瞳で俺の方を見て、にやっと笑った。
…ヤバイ。
間違いなく、アレだ。
この間の、アレ。
皆が酔いつぶれていたから、誰にも、見られてねぇと思ってたのに。
……あの、次の日、コソッと俺に近付いてきたカナは、耳元で「…ふふふ、やるね~、グレイ」と俺に呟いたのだ。
「…カ、カナ!…おまえ…!」
俺が、焦ってそう怒鳴ると。
「もう!グレイ様、静かにしてください。
ジュビア、集中できません…!」
今度は、斜め前から、ぷぅっと膨れたジュビアの声が聞こえた。
テーブルの周りには、ナツやガジル、マックス、それから、リサーナや、ルーシィにレビィといった野次馬達がいて、興味津々に二人のカード勝負を見守っていた。
「…てかさー、ジュビアが勝ったら、グレイの秘密を教えてもらう、っていうのはわかるんだけど。
じゃあ、カナが勝ったら、どうなるの?」
当然の、純粋な疑問を、リサーナがカナに投げかける。
…そうだよな。
賭けっていうくらいだから、カナにもメリットがねぇと、成立しねぇ。
「…ん?
あぁ、それはねぇ。」
カナは、一旦そこで、言葉を切った後で。
「私が勝ったらね、ジュビアに合コンに参加してもらうことになってんの。」
と、ニヤニヤ笑いながら、そう続けた。
「…はぁ!?」
カナから出た、またもやのその爆弾発言に、俺は再度、全力で突っ込みの声をあげた。
「ご、ご、合コンって、おま…!」
「…もぉ~、うるさいな、グレイ」
「…ふざけんな!そんなもん、どっちが勝っても……っ」
そこまで怒鳴ってから、ヤバいと思った俺は慌てて、口をつぐんだ。
あぶねぇ…。何言うとこだったんだよ。
「…どっちが、勝っても、なに?」
カナは、ニヤリと笑って、そう追及してくる。
俺は思わずかっと赤くなってしまった顔を握りこぶしで必死に隠した。
…どっちが勝っても、俺に都合の悪いことばっかじゃねぇか…!
言いかけて、すんでの所で口を塞いだ台詞は、まさにそれだったが。
いやいや、とんでもねぇ事を、口走らなくてよかった。
しかし、それはそれとして。
今は、問題は、そこではない。
ジュビアが、勝ったら、俺の秘密を教える。
いや、アレ。アレは、まずい。
どう考えても、それは阻止したいところだ。
しかし、カナが、勝ったら、…合コン…。
クソ、…ねぇだろ、それも!
なんで、わざわざ、ジュビアを合コンなんてもんに行かせなきゃなんねぇんだ。
そんなとこ、思いっきり、彼女を作る目的かもしくはお持ち帰り目的かの男しか来ねぇだろ…!
ダメだダメだ。それは、何としても阻止せねばならない。
くそ、どーすりゃいいんだよ。
とにかく、この、馬鹿げた賭けのカード勝負を、なんとかやめさせなければ…!
俺の頭の中は、この事態を打開すべく、
ぐるぐると最高速で、回転をはじめた。
終? or 続?
**
終わるか、続けるか……笑
アレ。が、気になるところ。
グレイ様、酔いつぶれて、クタッと突っ伏したジュビたんに、〇〇〇して、〇〇〇しながら、〇〇〇したところを
カナに見られちゃったんですね////。