glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑧

グレジュビ 短文 『ことのは』シリーズ⑧

ピクシブであげた作品の続きのような……。

では。








「寝たか?」

「はい、やっと寝てくれました。」

ベッドの上で座って、雑誌を読んでいたグレイ様の台詞に、にっこりと笑ってそう返事をした。

さっきまで、寝付けなくてぐずぐずと寝愚図っていたアッシュは、ユラユラと振ってやっているうちに、自分の指をチュッチュッと吸いながらなんとか眠ってくれた。

お昼にちょっと興奮することがあったから、なかなか寝付けなかったのだろう。
でも、きっとそのせいで疲れてもいるから、コテンと寝てしまったら最後、朝までぐっすりコースかもしれない。

ベビーベッドにアッシュを降ろしてそっと布団を掛けてやってから、自分とグレイ様のベッドの方に戻ると。

「…ジュビア」

優しく、そう呼んでくれたグレイ様は、そっとジュビアの腕を引いて、自分の腕の中にジュビアを閉じ込めた。
ジュビアも、ストン、と、グレイ様に身体を預ける。

ゆっくりと、引き倒されたと思ったら、そのまま覆い被さるように、グレイ様がジュビアを抱き締めてくれた。

それから、そっと、唇を塞いでくる。

舌でこじ開けられた唇を仕方なく少し開くと、当然だと言わんばかりに舌がジュビアの口内を喰らい尽くしてきた。

グレイ様の下半身が、どんどん熱を帯びていって、ぐっと押し付けられるようにジュビアの身体に密着してくる。

熱い、吐息や、腕の強さに。

うっとりして、頭もぼぅっとして、グレイ様の体温を感じているだけで、ふわふわと幸せな気持ちになる。

でも……。

でも。

グレイ様が、ゆっくりと、ジュビアの唇から、キスをほどいた。

そして、にっこりと微笑んで、ジュビアの頭をポンポンと、してくれる。

そのまま、ぎゅぅって抱き締めてくれて、ジュビアを腕の中に閉じ込めたまま、ゆっくりと横になった。

「……おやすみ」

優しく、グレイ様がそう言ってくれたので。

「……おやすみ、…なさい。」

ジュビアも、まだ半分頬を赤くしたまま、
じっとグレイ様を見つめて、そう、……返事をした。

そしたら、グレイ様は、何だか切なそうにジュビアを見つめて。

でも、また、にっこりと笑って、
『おやすみ、ジュビア』と、言ってくれた。

ぎゅぅぅと抱き締められて、
……痛いくらいの力で、ジュビアを腕に閉じ込めて、
グレイ様が眼を閉じる。

毎日、毎日、それの、繰返し。



病院から退院して、もう、随分と時間が過ぎた。
身体もすっかり元通りになって、仕事にだって行こうと思ったら行ける位になった。

今は、アッシュの世話があるから、なかなか仕事にはいけないけれど、それでも少し落ち着いたら、またギルドの一員として働きたいと、思う。

グレイ様とアッシュと。
3人でのこの家での生活は、幸せ過ぎて、毎日があっという間に過ぎてゆく。

毎日毎日、小さなアッシュが、いろんな表情を見せてくれるだけで、愛しくて可愛い過ぎて、大騒ぎになってしまうし。
ジュビアが、アッシュにばかりかまけていると、ちょっとずつ不機嫌になってゆくグレイ様を見てるのも、嬉しい。

失った2ヶ月は、取り戻せなくて悔しいけれど、
でも、それよりももっと、日々感じる幸せに感謝する気持ちの方が大きかった。



こんなに、幸せなのに、な。

でも、最近は、……少しだけ、寂しい。
ほんとに、少しだけ。

グレイ様は。

こうして痛いくらいの力で抱き締めてくれるけれど、
……息つく間もないくらいのキスも、してくれるけれど。

でも。

家に帰ってから、一度も、
ジュビアのことを、……抱いてくれなく、なった。

優しく、優しく、微笑んで、
「おやすみ」と言ってくれる。

もちろん、それだけで、充分に幸せなのに。

ジュビアは、贅沢者になってしまったのかも、しれない。


……抱き締めてくれる時には、グレイ様の身体が爆ぜそうに熱を持っているのも感じる。
キスは、……キスだけは、何度も何度も繰返し求められて、息苦しくなったジュビアがどんなに逃れようとしても、決して逃がしては、くれない。
そして、眠っている間も、少しでも腕の中から抜け出そうとすると、とんでもない力でグレイ様の腕の中に引き戻される。

でも、そこまで。
それ以上、決して、進むことはなかった。


「……グレイ様」

「……ん?」

少しだけ、ほんの、少しだけ不安になって、
グレイ様の名前を呼んでみたら。
この上なく優しい声で、返事をくれた。

どした?
グレイ様の瞳が、そう、訊いてくれている。

「……なんでも、ありません。」

何を、どう言えばいいのか、わからなくて、

結局、なんでもない、と答えることしか出来なかった。


うん。

そうだよね。

こんなに、幸せなんだもの。

これ以上、一体、何が要るというの、ジュビア。



ギュッと、グレイ様にしがみつく。

それから、一言。


「…おやすみ、なさい、グレイ様。
大好き、です。」


毎日毎日呟くその台詞を口にすると、グレイ様は、また更に力を込めて、ジュビアを抱き締めてくれたから。

グレイの腕と体温にに包まれて、
ジュビアは、そのまま、そっと、眠りに落ちた。







終 or 続?