glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

君と聴く光の雫 ⑤ ~ハートピー後編

グレジュビ学パロ、最終話後編ですね。

ではでは、どうぞ。











ハァハァと喘ぐ息を整えて、扉の前で、大きく深呼吸を1つ。

そうして、ゆっくりと、図書館の扉を開けた。

奥の書棚の方で、何人かが話している声が聞こえてきたのでそちらの方に足を向けようとすると、カウンターの中から、

「あれ?グレイ?」

という声が聞こえてきた。

「レビィ」
「どうしたの?
今日、当番じゃないよね?」

声をかけてきたレビィは、
不思議そうにこちらを見ている。

「…あぁ。
…ちょっと、ジュビアに話があって。
…あっちに、いるよな?」
俺がそう言うと、レビィは、あれ? という顔をして、
「ジュビアなら、さっき出ていったよ?
その辺で会わなかった?」
と答えた。

「…出てった…って、なんで?」

「なんかねぇ、同じクラス?の男子に、呼び出されて行ったの~!
ふふっ、私が思うに、あれは告白だな~、きっと」

……はぁ!?

レビィは、楽しそうにニコニコと微笑んで、俺の問いに対して、ありえねぇとんでもない答えを返してきた。

こく、告白、って、呼び出しって、何だよ、それ!

「どこ行ったんだよ!?」

俺が、カウンターの台の上にバンッと手をついてそう怒鳴ると、

「しっ、知らないわよ…!
どこか、その辺にいるんじゃない?
鞄もあるし、待ってたらそのうち戻ってく……」

レビィのセリフが全部終わらないうちに、俺は元来た扉の方に向かってクルリと踵を返した。

「ちょっと、グレイ!?」

レビィが背後の方で俺の名前を呼んでいたが、そんなのにはお構いなしに、俺は図書館を飛び出した。

辺りをざっと見回して、ジュビアの姿を探す。

くそ、いねぇ…。
どこ行った?

大体、どこのどいつだよ!?
何、勝手に連れ出して、告ろうとなんてしてやがんだ!

……告る、となると、人目につかねぇとこだよな、きっと。

俺は図書館の裏手にあたる、中庭の奥の方に向かって駆け出した。

ぐるり、と図書館の周りを半周して、ちょうど図書館の裏側の中庭に辿り着いた時。

少し向こうに、ジュビアの青い髪が揺れているのが見えた。
斜め前には、後ろ姿の黒髪の男子生徒。

「…ジュビア!!」

思わず、状況も省みずに大声で名前を呼んで、二人の元に駆けていく。

俺のその声に、ジュビアがハッとして、顔をあげた。

「…グレイ先輩!?」

そして、ジュビアの前に居た男も弾かれたようにこっちを向いた。
そのまま、俺を見て、大きく目を見開く。

「グレイさん!?」
「ローグ!?」

ジュビアの前に居た男は、ローグだった。
突然の俺の乱入に、信じられないものでも見るような表情でこっちを見ていた。

告白、って、…お前かよ!
そういや、なんかスティングが、そんなような事を言ってたな…。
あれは、いつだっけ。
俺が、まだジュビアに告る前、そうか、2週間位前のことだっけ。

「グレイさんが、…なんで?」

ローグは、呆然とした表情でそう、呟いた。
それから、スッとジュビアの方に視線を移す。

俺は、そんなローグをチラッと見てから、そのままローグを無視して、ジュビアに近寄った。
そして、グッとジュビアの腕を掴んで、こっちを向かせる。

「…グレイ先輩…!」

「…話があって図書館行ったら、
…呼び出されていった、っつーから」

「…先輩」

「…ホントに、油断も隙もねぇな」

そう言って、ほんの少し力を込めて、僅かにジュビアを自分の方に引き寄せてから、
俺はローグの方をじっと見た。

ローグは、そんな俺達の前にただ呆然と立ち尽くしていたが、やがて状況を把握したのか、今度は順番に、俺と、ジュビアの顔を見つめてきた。

俺が、射抜くようにローグを見つめている横で、ジュビアは、真っ赤になってオロオロと焦っている。

するとローグは、俺達2人の方をじっと見つめた、その後で。
静かに目を伏せて、それから、何かを納得したように、フッと笑った。

そして。

「……グレイさん、だったんだ。
…じゃあ、もう俺の出る幕なんて少しもない、ね」

そう言って、ジュビアの方を見た。

何の、話だよ。

それからローグは、今度は俺の方を見て、

「…安心してください。
キッパリ、言われましたから。
『他に好きな人がいます』って」

もう一度、苦く笑って、そう言った。

他に、好きな人がいる、…って。

俺がローグの言葉を反芻していると、ローグは付き合ってられないとでも言いたげに、ため息をついたその後で。

「…いつまでもココに居るのも間抜けなんで、
…俺は、退散します。
じゃ。」

そう言って、ペコリと、軽く頭を下げてから、図書館の正面の方に向かって歩いて行った。

二人して、黙ったままその場に立ちすくむ。



「あ、の、グレイ先輩…」

ジュビアが、困ったようにそっと俺の名前を呼んだ。
視線を落とすと、いまだジュビアの腕を掴んだままの自分の手が目に入る。

「あ…、悪ぃ」

そう言って、慌ててジュビアの腕を解放した。
ジュビアは、ほんの少しだけ俺との距離を取って、それから、じっと俺の方を見つめてきた。

「…あの…」

「…話があって、来たんだ。
…大事な、大事な話」

そう言って、俺も、真っ直ぐにジュビアに向き合う。

「…でも、その前に、ひとつ訊いていい?

…さっきの、ローグの話、あれどういう意味?」

ジュビアの目を覗き込むようにして、そう訊ねた。

「他に、好きな奴がいる、って。
……この前、俺が訊いた時は、『いない』つったよな?」

「……!」

「…この間から、今日までの間に、誰か好きな奴が出来た、ってこと?
…それとも…」

俺の追求の声に、ジュビアがビクリ、と跳ねる。

それとも。

「ち、違います…!
あのっ、」

「何?…どう、違うの?」

「……っ、」

「ちゃんと、答えて、ジュビア。
答えないなら、俺勝手に、自分の都合のいいように解釈するよ?」

「……!!」

俺のセリフに、ジュビアが真っ赤になって目を見開く。
そして、そのまままた、何も言わずに俯いてしまった。

そっと、真っ赤になった、その頬に右手で触れる。

それから、じっと、ジュビアを見つめた。

胸が、つぶれそうな位に痛くなって、心の中から、どんどんどんどん、色んな気持ちが溢れてくる。

目の奥が、じんわりと滲むのを感じた。

そのまま、掌で、頬を包み込んだまま、静かに言葉を紡ぐ。


「……ガジルに、聞いたよ」

俺のその言葉に、ジュビアはビクッとして、それから、ばっと顔をあげた。
大きな猫目をこれ以上ないくらいに見開いて、顔には驚きの表情を張り付かせて。

ジュビアの瞳の奥で、戸惑いと不安の色が揺れた。

頬に触れていない方の手で、ジュビアの手をそっと握る。

「…ごめん。
ごめんな。…気づいて、やれなくて」

そう言って、頬に触れていた右手を少しだけずらして、ジュビアの左の耳にそっと触れた。

ジュビアは、びくん、と小さく身動ぎをして。

それから、瞳に、抱えきれないほどの涙を、みるみる貯めてゆく。

「…ごめんな。
なんも、知らなくて、いっぱいいっぱい泣かせて…」

俺がそう言うと、ジュビアは、ギュッと目を閉じて、ふるふると首を横に振った。
その弾みに、ジュビアの瞳から、大粒の涙が零れて落ちる。

「……グ、グレイ先輩が、
謝る事なんて、何もないんです。
…ごめんなさい。
…ジュビアのせいで、…先輩に…」

ジュビアの口許を、そっと親指で押さえて、言いかけた言葉を遮った。

それから、今度は右手で、ジュビアの頭をゆっくりと引き寄せて、額と額を、こつん、と合わせる。

ジュビアの瞳から、ぽろぽろぽろぽろと、涙が零れているのが見えて、俺も目尻に熱いものがたまってゆく。

溢れる気持ちを吐き出すように、言いたくて仕方なかった言葉をジュビアに告げた。

「…好きだ」

ジュビアが、驚いて目を見開く。

「…好きだ。
気持ちが、溢れて、どうしようもない」

額を外して、少しだけ距離をあけて、ジュビアの顔を覗き込む。
ジュビアも、瞳いっぱいに涙を貯めて、じっとこっちを見ていた。
その表情に、たまらなくなって、ゆっくりと握っていた左手を引いて、ジュビアを腕の中に閉じ込めた。

「…グレイ先輩…」

ジュビアが、消え入りそうな声で俺の名前を呼んだ。
その瞬間に、とても我慢が出来なくなって、閉じ込めた腕に力を込めて、思いきりギュッと抱きしめた。



「俺が、ジュビアの、耳になる」


ジュビアの、聞こえてる方の右側の肩口に顔を埋めて。
これ以上ないほどの真剣な声で、そう、言った。

「……!」


俺が、これからずっと、ジュビアの世界の音を一緒に聴いてゆく。
この世界が織り成す、どんな小さな音だって、例えば、光の雫から洩れるような、ホントに微かな音だって、全部全部、俺が一緒に聴くから。

「…先、輩」

「…こっち側で、こうやったら、…ちゃんと聴こえる?」

耳許に、そっとキスするように唇を寄せて訊ねた。

ジュビアが、腕の中で、こくん、と小さく頷いた。

そのまま、ジュビアの耳許で、注ぎ込むように自分の気持ちを、伝える。

「…この間、言ったよな。
何度でも言うよ、って」

「…せん…」

「…ジュビアが、好きだ。
…だから、
俺が、ジュビアの、耳になりたい」

「……っ…」

「…ぜってぇ、大事に、するから。


だから、頼む。


俺の、もんに、なって。……ジュビア」







***







抱きしめられたグレイ先輩の腕の中で、
ほんのちょっとだけ身動いて、グレイ先輩の胸に手をついた。

…どうしよう。

唇を噛んで、俯く。

ガジルくんが、話してしまった。
…話して、くれた。

今まで、一度もそんなことしなかった、のに。

グレイ先輩が、全部わかっても、
それでも、ジュビアが好きだ、って、そう言ってくれた。

ジュビアの、耳になりたい、って。

……嬉しい。

嬉しくて、温かくて、…心が、ちぎれそう。


でも、駄目だよ。

ここで、頷いたら、きっとまた、後悔する。
きっと、グレイ先輩に迷惑をかける。
ジュビアの人生に、グレイ先輩を巻き込むことになる。

駄目だよ。駄目。

そう、思うのに、もう、グレイ先輩を拒む言葉が、出てこない。

…駄目だよ、ジュビア。


「…ジュビア」

グレイ先輩が、泣きそうに切ない声でジュビアの名前を呼ぶ。

駄目。

手に、一生懸命力を込めて、グレイ先輩から逃れようと、先輩の胸を押し返した。
そしたら、思いきり引き寄せられて、またギュッと、抱き締められた。

「離さねぇ」

耳許で、グレイ先輩の絞り出すような声が聴こえた。

…先輩…。

どうしよう。
ダメだ、って、何度も何度も言い聞かせてるのに。
もう心が、言うことをきいてくれない。


「……せんぱい…」

「………」

「…ジュビア、……映画に、行くことも出来ません…」

涙に滲んだ声で、そう言った。

グレイ先輩は、またもっとギュッとジュビアを抱きしめながら、

「…いいよ。
家で、DVD借りて、
ジュビアのこと、…後ろからギュッってしながら、一緒に観るから」

泣きそうな位に温かい声で、そう言った。

「……夏に、…プールや、海にも、行けません…」

「…いいよ。
…水に入らなきゃ、いいんだろ?
……皆で行って、夏気分を味わって、皆が泳いでるのを、二人でベタベタしながら見てればいいよ」

グレイ先輩は、フッと楽しそうに笑ってそう言うと、また抱きしめる腕に力を込めた。

「……、……街に出たり、人や音が多いところに行ったら、…また、先輩に、迷惑を、かけてしまうかも、……っ…!」

言いかけた台詞は、最後までは言えなかった。

先輩の指がそっと唇に触れて、ジュビアの声を飲み込んでしまったから。

ゆるりと、人差し指がジュビアの唇をなぞった。

「……っ」

焦って身動いだジュビアから、グレイ先輩が、優しく指を離す。

それから、ホントに切なそうな顔で、

「…ジュビア」

と、名前を呼ばれた。


「…そんなことは、言わなくていいんだよ。
…それより、一番聞きたい台詞を、
まだ、ジュビアから、聞いてない……」

「………?」

言われた意味がよくわからなくて、ジュビアがキョトンとしていると、グレイ先輩は困ったように、くしゃっと笑って、

「…俺のこと、…どう思ってる?」

と、訊いてきた。

言われたセリフに、一瞬固まったあとで、ぼっと顔が火照ってくるのが自分でも判った。

ど、ど、どうって、どう思う、って……

グレイ先輩は、そんなジュビアの様子に少しだけ優しく笑ってから。

物凄く真剣な顔になって、

「…ちゃんと、言って、ジュビア。
ジュビアの、口から、ちゃんと聞きたい」

絞り出すような声で、そう、言った。


じっと、グレイ先輩の顔を見つめた。

涙で、視界がどんどん滲んでくる。

「……き、です…」

声にならないくらいの、小さな声で、そう言った。

「…もう一回。…ちゃんと」

グレイ先輩が、親指でジュビアの涙を拭う。

もう、気持ちを止める事が出来なかった。


「…好きです…」

ジュビアが、そう言ったその瞬間。

グレイ先輩は、ぐっとジュビアの後頭部を引き寄せたかと思うと、そのまま噛みつくようにジュビアにキスをした。

「……っ…」

突然のキスに驚いて、ジュビアが後ずさるように身体を引こうとすると、そのまま頭と腰を抱えこまれて、さらに深く口付けられた。

…こんなの、初めてで、

もう、真っ直ぐ立っていられない。

ジュビアは、グレイ先輩の上着にしがみつくだけで、もう精一杯だった。

呼吸ごと食い尽くすようなキスが終わって、先輩が、ゆっくりと唇を離す。


「…好きだ。
…もう、…ぜってぇ、離さねぇからな」


ジュビアの右耳にキスを落としながら、

グレイ先輩は、もう一度、

囁くように、そう、言ったーー。








***








GW後半になって、いよいよ、インターハイ予選が始まった。

県予選2回戦。
俺達は一回戦はシードだったので、こうして2回戦からの参戦となっている。

パラパラとまばらに人がいるスタンドを見上げると、前から3列目の席にジュビアが座っているのが見えた。
隣には、リサーナとカナが座っている。

ふっと顔をあげて、手を振ると、ニッコリ笑ってジュビアも手を振り返してくれた。

「……見せつけてくれるよねぇ」

隣で、ロキがニヤニヤと笑って、からかってくる。

「うっせぇな」

ゲンナリしてそう答えると、今度はルーシィが、

「…大丈夫なのかなぁ、ジュビア…」

と、心配そうに声をかけてきた。

「……見に来なくていいっつったんだげどな。
どうしても、来る、っつーから」

俺が、苦笑してそう言うと、ルーシィも困ったように微笑んだ。


先週、ジュビアと気持ちが通じあって、
ちゃんと付き合うことになったことを、皆に報告したら、周りの奴等は何だかちょっと大げさ過ぎるんじゃねぇの?っていう位に、オーバーに喜んでくれた。
その時の照れ臭さはもう半端なくて、嬉しい反面、もうあんな思いは二度とごめんだと思う位に。

付き合うことを話した時に、ジュビアの事情も説明した。
ナツや、ロキは、ただ黙って聴いてくれていたが、ルーシィは、途中からもう、ポロポロと涙をこぼして泣いていた。

今日の試合もわざわざ見に来なくていいって言ったのに、どうしても来たいと言ってスタジアムまでやって来た。
まぁ、まだ2回戦だし、人もそう多くはないが。
辛くなったらすぐに医務室に行けよと強く言っておいたが、ああ見えて意外と頑固なので、素直に言うことを聞くかどうかは疑問だ。


すっと、ベンチの方に視線を戻した。

今日は、皆に、伝えなくてはならない事が、ある。


「…ナツ、ロキ」

静かに、二人を呼んだ。

「なんだよ?」

「……どしたの?
急にそんな真顔になっちゃって、不気味なんだけど」

何だか真剣な空気を察したのか、ロキが茶化すようにそう言った。

そんなロキの優しさに、おれも小さく笑って二人を見る。
そして、

「……俺さ、このインターハイで、部活引退するから」

ニッ、と笑って、二人に向かって、そう、言った。

「…は!?」

「ごめんな。だから、この5月が高校最後の大会」

「…何でだよ!?」
「ついこないだ、8月までって言ってたじゃん」

ナツとロキが、驚きを隠せない様子でそう訊いてきた。
…そりゃそうだよな。
俺自身もそう思ってたんだからさ。

「俺、進路、変更することにしたんだ。
なりたいもんが出来たから」

「…進路、変更って…」

「……医学部に、行く。
医者に、なりたいんだ」

「「医学部!?」」

ナツとロキは、またしても心底吃驚した声で、そう叫んだ。

「……は、医者って、おまえ、建築は?」

「元々、それも何となく決めただけだったし。モノ造るの好きだしなぁ位で。
でも、今はちゃんとはっきり、
……なりたいもんが、出来たんだ。

耳の、医者になりたい」

「…グレイ…」

二人は、驚きとも困惑とも違う、なんというか言うなれば尊敬と呆れと感動を足して3で割ったような顔をして、俺を見た。

「……出来れば、内部推薦で、上の医学部に行きたいから。
でも、今のままの成績じゃ無理だからさ。
ダメなら、外部受験も考えなきゃなんねぇし。
俺、こっから、ちょっと死ぬ気で勉強するから」

「…グレイ…」

「だから、部活は、5月で、引退」

ごめんな。
そう言って、俺は清々しく笑って、二人に向かって自分の決心を伝えた。

医学部に、となると、他の学部と違って、成績も上位5位以内に入ってないと、推薦はまず難しくなる。
さらに、外部の大学を受験するとなると、もっともっとハードルも上がる。

8月の大会まで、お前らと一緒にサッカーしたかったけど、ちょっとそれも無理そうだわ。

俺は、静かに笑って二人を見つめた。

「……だから、なるべくたくさん勝ち進めると、嬉しい。
頼んだぜ、点取り屋二人」

キャプテンでFWのナツと、そこに繋ぐMFのロキの肩を、グーでガツンと叩いた。
俺も、頑張ってゴールを守るからさ。

二人は、じっと何ともいえない顔で俺を見た。

それから、静かに少しだけ目線を落として。

そのあとで、ゆっくりと顔をあげると、穏やかに微笑ってくれた。



「…テメェが、一点も入れさせなきゃ負けねぇだろ」

ナツが、ニヤッと笑ってそう言った。

「…だね」

ロキも、ナツと同じ顔で、皮肉に笑う。

「無茶言うなよ」

二人が笑ってくれたので、俺も一緒になって笑ってそう言った。




「あぁ~!
クソ、なんかちょっと悔しいんだけど!?」

突然ナツが、ボカッと俺の足を蹴ったと思ったら、苦虫を潰したような顔でそう噛みついてくる。

「…はぁ!?
何がだよ?」

「いや、なんつーか、
悔しいから、ぜってぇぜってぇ言いたくねぇんだけど、こう、なぁ!?」

ナツは、ロキに向かって悔しそうにそう叫んだ。

だから、何がだよ!

「…わかるよ、ナツ。
なんか、こう、……負けた気分だよね。
人生に、おいて」

「あぁっ、はっきり言うなよ!
余計、ムカつくだろ!」

ナツは、ロキのそのセリフに、地団駄を踏んで怒っていた。

何、言ってんだか。
コイツらは全く。


すっと、スタンドの方に目を向けると、
ジュビアが、不思議そうにそんな俺たちを覗き込んでいた。

もう一度、小さく笑ってジュビアに手を振る。



快晴の空の下、整列の笛が鳴り響いた。

一試合でも多く、コイツらとサッカーが出来ますように。

そう願いながら、俺は、ナツとロキと一緒に、ピッチに向かって駆け出したーー。











~ハートピー(フウセンカズラ)
……あなたと共に生きる~<了>








∞∞後書き∞∞


学パロ、最終話までお付き合いいただいてありがとうございます!

長かったですよね。
ホントにホントにすみません(>_<)

グレイ先輩は、マジに頑張りました。
報われてくれて、私も嬉しいです。(おい)

ジュビアも頑張りました。
健気でかわいいジュビア、大好きです。

そして、保護者ガジルへの、愛が止まりませんでした(笑)
影の主役?(^^;

最後は学パロらしく、爽やかに青春で纏めてみました。


付き合ってからの二人の話、
ナツルーや、ガジレビ、ジェラエル、それからロキ(レオ)アリの話、また次の機会に。
どのCPが一番需要があるのかな?と思いつつ。

リオン、ラクサス、ミラ姉も、今回出ませんでした。
グレジュビとの絡みも決めてあったのに、出せなくて残念でした。
それもまた、第二部で。

初学パロだったので、私にとっても思い入れの強い作品となりました。
ここの二人がとても愛しいので、続き超書きたいです。
進展してゆく二人をね!フフ(*≧∀≦*)

皆さんに応援していただいてホントに幸せでした。
ありがとうございました!


柚子雨