落花流水
グレジュビ大人向け。
ここから始まる純愛もある、がテーマです。
ちょっと、激しいので、苦手な方は回れ右、お願いします。
大丈夫な方は、続きから、どぞ。
落花流水〜
¨
グレイ様と、一晩を共にした。
ちょうど、1週間と少し前の話だ。
その日は、なんだかギルド中が、浮かれていて、宴会でのお酒の盛り上がり方も、半端ではなかった。
最強チームも、それからガジルくんとリリーも、そしてジュビアも、ちょうど大きな仕事を終わらせて打ち上げ気分で気持ちよく飲んでいたし、マグノリアの街そのものも3日後に春の終わりのお祭りを控えて盛り上がっていたし、とにかくギルド全体がなんだか浮き足だっていたことは事実だ。
いい具合にお酒も回って、隣でグラスを傾けてくれていたグレイ様の肩に、コツンと頭を乗せて凭れかかった。
なんだかとっても、甘えたい気分だった。
グレイ様も、前みたいに邪険にすることもなく、凭れたジュビアの髪に手をやって、くるくると毛先で遊んでみたり、じっとジュビアを見つめてきたなぁと思ったら、ムギュとジュビアの鼻をつまんで、ケタケタ笑ってみたり。
つまりは、二人とも、とてもいい気分で完全に酔っぱらっていたのだと思う。
「ふふっ、グレイさま~…」
ジュビアが、甘えた声でそういうと、
「お前、誰にでもこういうこと、してんの?」
グレイ様は、へにゃっと笑ってそう訊いてきた。
「そんなわけないじゃないれすか~…
ジュビアは、グレイさまだけれす~!」
ジュビアも呂律が回らないながらも、コレだけははっきり言わなければ、と思いながらそう返した。
宴会もそろそろお開きになろうかという時間になって。
ふと、周りを見てみると、何人かは酔いつぶれてそのまま折り重なるように爆睡しているし、女子組はもう皆が順に家路についたのか、人数も疎らにしかいなかった。
「…俺んちで、続き、飲むか?」
グレイ様がそう訊いてくれた時には、
心の何処かでそういうことを考えなかった訳ではないけれど、でも、このとんでもなくいい気分の中で、ただただ、まだもっとグレイ様と一緒にいたくて躊躇いもなく「はい」と返事をした。
グレイ様の家に着いた後のことは、もう、今思い出しても、どうしようもないことだらけだった。
続き、飲むか?と言っていたグレイ様は、結局グラスやお酒を出すどころか、リビングに入って電気もつける前に、ジュビアの事を後ろから抱きしめた。
ジュビアも、ビクッ、として身体を震わせたけれど、でも、されるがままにそのままギュッと目を閉じた。
抱きしめてくれたグレイ様の腕と体温に、これ以上ないくらいにドキドキして何も言えなかった。
首筋や耳許を、グレイ様が唇で食んでくる。
もう、ダメ。
そんなことしないで。
心臓が爆発しそう。
「……抵抗、しねぇの?」
グレイ様の低くて優しい声が耳許で響く。
「……っ、」
「…抵抗しねぇなら、このまま、喰っちまうぞ?」
その台詞に、また、ビクン、と震えた。
どうしよう。
でも。
グレイ様が、ジュビアを抱きしめてくれてる。
ジュビアに、触れてくれてる。
背中から、グレイ様の心臓がどくどく言ってるのも感じた。
この、心地よさをなくしたくない。
こんなとこまでついてきて、何の抵抗もしないなんて、オッケーサインを出してるのと同じだった。
「…こっち、向いて、ジュビア」
くるりと身体を反転させられて、グレイ様の正面を向かされた。
目の前に、ちょっと熱に浮かされたようなグレイ様の顔があった。
じっとグレイ様を見つめてみた。
グレイ様は、ゆっくりゆっくり唇を近づけてきて、…ジュビアの唇の前で、一瞬だけ止まってから、でも、そのままジュビアにキスをした。
「……あー、ダメだ…。
我慢できねぇ。
…シャワー、浴びる?ジュビア」
グレイ様にそう言われて、ジュビアもこくんと頷く。
抵抗する気も、何もなかった。
もう、どうにでもなれ、どうなってもいいからこのままこの時間を手放したくないと、思った。
グレイ様に案内されて、先にシャワーを浴びた。
グレイ様の用意してくれた、パジャマの上だけを羽織って、濡れた髪もそのままにシャワールームを出た。
「…ヤバい。その格好、超、そそる。」
グレイ様は、少しだけ赤くなった顔を掌で隠すようにしながらそう言うと、ジュビアの手を引いて、ベッドに連れて行ってくれた。
そのまま、雪崩れ込むように、ベッドに押し倒される。
「…っ、グレイ様…」
グレイ様は、ジュビアがギュッと閉じた瞼にペロッと舌を這わせて、
「…俺も、すぐ浴びてくるから。
ここから、動くなよ」
そう言って、自分もシャワールームに向かっていった。
ベッド、グレイ様の匂いがする。
初めてグレイ様の部屋に来て、グレイ様のパジャマを借りて、グレイ様のベッドに横たわって。
泣きそうな位にドキドキして、どうにかなりそうだった。
グレイ様は、本当にすぐシャワーから上がってきた。
短パンだけ身につけて、上半身はそのままタオルをかけただけの姿で、冷たいシャンパンの瓶を開けながらベッドに腰かけた。
くっと、一気に1/3ほどを飲み干したあとで、
「…ジュビアも、飲む?」
と訊いてきた。
確かに、喉は渇いていたので、こくんと頷いてベッドの上に座る。
グラスがないけれど、もしかしてこのまま、瓶からラッパ飲み?
そう思っていると、グレイ様は瓶からシャンパンを自分の口に含んで、くっとジュビアの顎を掴むと、そのままジュビアに口づけた。
グレイ様から流し込まれたお酒をそのままゴクンと嚥下する。
それだけで、とんでもなくクラクラした。
ベッドに縫い止められた後のことは、もう、必死だったからきちんとは覚えていない。
覚えてるのは、グレイ様が、とてもとても優しく、ジュビアに触れてくれたこと。
身体中にキスして、胸元には紅い華をたくさん咲かせてくれた。
何度も何度も、指でジュビアの中をかき混ぜて、それから、そこにも優しく唇を這わせてくれた。
グレイ様がジュビアの中に押し入ってきたときには、ジュビアはもうどうしてたらいいのかもわからなかったけど。
グレイ様は、ジュビアをなだめるようにキスしながら、ゆっくりゆっくりジュビアの中で動いてくれた。
だんだんだんだん、グレイ様の動きが激しくなってゆく。
ジュビアの声も、恥ずかしいものに変わる。
突き上げられる痛みと翔ばされるような快感との中で、グレイ様は何度も同じことを訊いた。
「…ジュビア…っ、俺のこと、好き?」
まるでジュビアを追い詰めるような顔で、グレイ様がそう訊いてくる。
ジュビアはグレイ様に突かれて、何も考えられない頭で、
「…好き、です…っ、グレイ様、
…っ、大好き、…です」
何度もそう言って答えた。
その度毎に、ジュビアの中でグレイ様がぐんっと張りつめるように大きくなる。
そして、律動もどんどんと激しくなる。
追い詰めるように訊いてきた癖に、グレイ様の方が追いつめられたように見えるのは何故だろう。
ジュビアの中で、グレイ様が、弾けた。
その瞬間に、グレイ様が何かを吐き出すように一言、ジュビアの耳許で囁いたけれども、それがなんて言われたのかは、本当に覚えてない。
グレイ様の部屋で、朝早くに目が覚めた後。
酔いも覚めて、冷静になると、これが最悪の出来事だということはわかった。
まず頭で考えたことは、あぁ、もうこれで終わった…っていうことだった。
グレイ様もジュビアも酔っていた。
ジュビアは、それでも幸せだったけれど。
でも、きっと、起きたらグレイ様は後悔するにちがいない、と思った。
困った顔で
「…ごめん」
って言われる事が簡単に想像出来て、それだけは、どうしても嫌だった。
謝らないで。
ジュビアは、幸せだったの。
たった一回きりのことかもしれないけど。
でも、それでもグレイ様に抱かれて、幸せだった。
グレイ様に、困った顔で謝られるのが怖くて、ジュビアは、黙ってグレイ様の部屋を後にした。
重い下半身に、華が散った胸元に、グレイ様が刻み込んだ痕が残ってる。
しばらくは。
せめて、この痕が消えるまでは、グレイ様に会いたくない。
この幸せの痕をなくしたくなかったから。
朝一番で、ギルドに顔を出した。
仕事に行こう。
出来るだけ、長期間、しかも一人で行けるものに。
神様はジュビアを見捨てていなかったらしい。
10日間という期間で、海上での要人と積み荷の警護という仕事があった。
ミラさんに頼んで、すぐに出発した。
往復の時間も含めて、暫くの間はマグノリアを離れる事が出来そうだった。
そして。
仕事を始めて今日で9日、明日には、この任務も終わる。
胸の痕も、もう、消えた。
2~3日後には、マグノリアに帰らなくてはならない。
帰ったら、まるで何事もなかったように振る舞おう。
お酒のせいで、記憶がなくなることはよくあることだ。
ジュビアには今までないけれど、カナさんやエルフマンさんなんかはよく色んな事を忘れていたりするし。
「グレイ様~」と普段通りに声をかけることができるかしら。
ジュビアが何も覚えてないと言えば、きっとグレイ様はホッとするにちがいない。
その顔を見るのは少しだけつらいけれど、でも、困った顔で謝られるよりはずっといい。
それにもしかしたら、グレイ様もホントに忘れていたりするかもしれないし。
とにかく、こうして間を空けたことで、ジュビアの気持ちにも少しだけ余裕ができたのだから。
きっとグレイ様も同じ。
普段通りに。
グレイ様とジュビアの間には、何もなかった。
これが、これからの、グレイ様とジュビアの真実ーー。
***
朝、目覚めたら、隣で眠っていたはずのジュビアがいなかった。
ベッドの脇には、きちんと畳まれた俺のパジャマと、それから、放り投げていた俺の短パンやタオルもきちんと横に畳んであった。
…ジュビアらしい。
気だるくベッドの上に起き上がって、髪をかきあげる。
……しでかしちまった、な。
いつか、こんなことになるんじゃないかと怖れていたことが現実になった。
もう、だいぶ前から、
ジュビアを意識し始めている自分に気づいてた。
ギルドにいると、ついつい目であの水色を探している自分。
なんだかんだですぐに危なっかしい事をやらかすジュビアを、ハラハラして見ている自分。
カナやミラちゃんに色々と下らねぇ入れ知恵をされては突撃してきて、そして、俺の言葉一つで撃沈するジュビアを見て、ウザいと思うよりかわいいと思う方が大きくなっている自分。
少し前のイベントの仕事で、露出の高い衣装を着ていたジュビアに、他の野郎共がチラチラと視線を遣るのを見てとんでもなく不快になった自分。
この、はっきりしない手探りの気持ちの正体は何だろう。
いや、もう、解ってるんじゃないのか?
ただ、認めるのが怖いだけだろ?
自分が大切なものを抱え込むのが、怖いだけなんじゃないのか?
自分で自分に迷っているくせに、
ときどき、無意識にジュビアに触れそうになる度に、ハッとして我にかえる。
ありえねぇだろ、ちゃんと好きかどうかもはっきりしてねぇのに。
それなのに。
それなのに、昨日の、この有り様だ。
確かに、酔ってた。
自分で自制が効かないほどに。
ジュビアも酔ってた。
少し赤みを帯びた目許に、凭れかかって甘えてくるその薫りに、とんでもなく欲情した。
自分の部屋に連れて帰ってからの事はもう、何の言い訳もしようもない。
ジュビアが抵抗しねぇのをいいことに、ただ自分の願望のみでどんどんと事を進めた。
俺のパジャマの上だけを着ているジュビアに、
口移しで飲ませた酒を、少し唇からこぼしながら、潤んだ瞳でゴクンと飲み込んだジュビアに、
また、これ以上ないくらいに欲情した。
俺に突き上げられて啼いているジュビアに、何度も何度も
「俺のこと、好き?」
と訊いた。
自分は、ちゃんと好きかどうかも言わねぇくせに、ジュビアの気持ちは何度も確認したいなんて、最低すぎて自分でも呆れる。
でも、俺の下で俺に揺すられながら、潤んだ瞳で息も絶え絶えに「好きです」と繰り返すジュビアに、全身が震えるほど興奮した。
…かわいい。
こんなに愛しいと思って、女を抱いたことなんてない。
何もかも、持っていかれたのは、間違いなく自分の方だった。
最後の最後に、
自分が限界に達して爆ぜる瞬間に、
「…好きだ…」
とジュビアに囁いたあの言葉が、紛れもない自分の本心。
あの瞬間に、はっきりちゃんと自覚するなんて、俺ってなんて馬鹿な奴なんだろう。
でもその言葉が、ジュビアに伝わったかどうかはわからない。
ちゃんと、話をしなければ。
確かに酔ってたけど、でも、酔ってたせいじゃない。
誰でもよかった訳でもない。
ジュビアだから。
ジュビアだから、抱いたんだって。
順番が逆になっちまったけど、ちゃんと自分の気持ちを伝えて、そして。
ふぅー、と大きくため息をついて、もう一度髪をかきあげた。
…なんでだよ。
なんで、今、…ここにいねぇんだよ。
ちゃんと、抱きしめて眠ったはずだったのに、いつの間にかすり抜けてしまった彼女。
捕まえなければ。
こうなってやっと、動く決心がついたのだからーー。
***
「…ただいま。ミラちゃん。
…コレ、報告書。」
ぶっきらぼうにそう言って、一枚の紙を放り投げるようにカウンターの上に置く。
仕事によっては、こうやって報告書を出さなければならないものもたまにあったりして、それが本当に面倒くさい。
普段チームで出かける時には、そういうのはエルザかルーシィが請け負ってくれているのだが、こうして一人で仕事に出ると当然コレも自分でやらなきゃならねぇから、そんな些細なことでも機嫌はますます落ちていく。
「ご苦労様。
ふふ、…ご機嫌ナナメね、グレイ。」
ミラちゃんの何かを含んだような笑い声にもげんなりして、ダンッとカウンターの椅子に腰かけた。
「…おーおー、相変わらずだな。
…何があったか知らねぇが、テメェの不機嫌を人に振り撒くなよ、グレイ」
一つ向こうの席に座っていたラクサスが、ニヤッと笑ってそう言う。
…うるせぇ。
テメェにだきゃ、言われたくねぇ。
あの頃、どんだけ不機嫌オーラ出してたと思ってんだ。
昔のラクサスを思い出して、心の中で突っ込んでやった。
あの日の朝、ギルドに行ったら、ジュビアはまだ来ていなかった。
いつもきっちりしているジュビアにしては珍しいが、まぁ昼には来るだろう。
…身体、つれぇのかな。
あいつ、…初めて、だったし。
なかなか現れないジュビアにイライラして、心配も最高潮に達した頃に、ミラちゃんからジュビアが朝イチで仕事に出かけた事を聞いた。
…しかも、大方2週間近くもギルドを留守にするという。
頭をガツンと撲られたようなショックを受けた。
なんでだよ。
昨日の今日で、それはねぇだろ…。
そこからは、もう、日に日に苛つきが態度に出るようになった。
日数のあまりかからない近場の簡単な仕事のみを選んで日々を過ごす。
3日前からチームのメンバーは、遠方の大きな仕事に繰り出して行ったが、今回は俺はそれには遠慮させてもらった。
ジュビアの仕事は、昨日で終わってるはずだ。
今日、明日辺りには、ギルドに帰ってきてもおかしくない。
ここで俺が遠出の仕事に出ると、また擦れ違っちまう。
カウンターで、ミラちゃんが出してくれた酒を喉に流し込む。
ここのところ、いくら飲んでも、全く酔えない自分を自覚してはいるが、それでも手持ち無沙汰でついつい飲んでしまう。
そんな時だった。
ギルドの扉の辺りから小さなざわめきが聴こえた。
「…お、…やっと、お帰りだぜ?」
隣でラクサスが揶揄するように言ったセリフに振り向くと、ギルドの入り口から、この2週間会いたくて仕方なかった顔が入って来るのが見えた。
…ジュビア。
……戻ってきた、か。
…情けねぇ。
ホッとして、…それから、ぐっと拳を握りしめた。
「あ、おかえり~!ジュビア」
レビィがそう言って迎えているのが見える。
「ただいま戻りました。」
「長かったねぇ~。今回の仕事。」
「…そうですね。ちょっと長めでしたね。」
「…ふふふ、お待ちかねの人がいるんだよ。」
「……?…ジュビアを、ですか?」
「そそ。…機嫌が悪くてさ、皆困ってんの。
早く、行ってあげて」
「………?」
クスクスと笑いながらのレビィにそう言われて、キョトンとした様子のジュビアが目に入る。
なんでそこでキョトンとすんだよ。
…わかるだろうが、普通。
…クソ。
ジュビアは、きちんと姿勢をただして、カウンターの方に向かって歩いてきた。
そして、
「ただいま戻りました、ミラさん」
そう言ってにっこりと微笑む。
「…おかえりなさい。ジュビア」
ミラちゃんもやさしく微笑んでそう言った。
「ただいま戻りました。グレイ様」
それから、今度はチラリと俺の方を見て一言そう言う。
「…おう。…お疲れさん。」
長期の仕事を終えて戻ってきたジュビアを一応は労わなくては、と思い、俺もとりあえずそう返した。
「疲れたんじゃない?」
「…そうですね。
移動が長くて、それには少し疲れました。」
「そう。…何か、食べる?」
「いえ、今日は、もう帰ります。
やっぱり少し疲れたので、部屋で休みますね」
ジュビアは、そう言って、ペコリと頭を下げた。
ギルドには、ホントに報告のためだけに寄ったのだろう。
それから、2~3言、ミラちゃんと仕事に関する話をして、ジュビアは本当にギルドから出ていこうとして、その場を後にした。
俺には、一瞥も、くれずに。
…どういうことだよ。
ありえねぇだろ…。
飲んでいたグラスを、ダン、とカウンターに叩きつけた。
「ジュビア!」
そう叫んで、扉の方に向かうジュビアを追いかける。
ビクンとしたジュビアを、背後から、ちょうど扉を出るか出ないかの所で捕まえた。
ぐっ、とジュビアの腕を握りしめた手に、力が籠る。
吃驚した顔でおれを見上げるジュビアの腕を引いて、そのまま一緒にギルドを出た。
「…グレイ様」
小さく抗議の声をあげるジュビアを強引に引っ張る。
ギルドの門を出た所で、そのまま、自分の方に引き寄せて、ジュビアと向かい合った。
「……話さなきゃ、いけねぇ事があるよな?」
まるで睨み付けるかのようにジュビアを見つめてそう言うと、ジュビアはビクンとして俺の方を見た。
それから、ありえねぇことに。
少し困惑した表情を浮かべて、
「…あの、話さなきゃいけないことって、何でしょう?」
と、尋ねてきた。
ジュビアのその台詞にまたしてもガツンと撲られたような衝撃を受ける。
「…お前…」
「…あ、もしかして、仕事に行く日の前の夜の事、ですか?」
ジュビアは、まるで何のことかわからないといったキョトンとした顔でそう言うと。
「…ごめんなさい。
ジュビア、あの日の記憶が、全くなくって。」
と、困ったような顔で、そう続けた。
「……は?」
俺の方が今度は戸惑ってしまって、何も言葉が出てこない。
「…あの、ジュビア、
…あの日、グレイ様に何か、ご迷惑をかけましたか?
…だったら、あの、ごめんなさい。」
ジュビアは、瞳に戸惑いの色を浮かべて、焦った風にそう言った。
……覚えて、ねぇって、…マジで?
あの、夜の事、何も覚えてないっていうのか?
呆然として、ジュビアを見つめる。
…俺に、抱かれたことも?
突き上げられて、涙をためてあんなに可愛らしく喘いだことも?
好きです、って、何度も何度も言ったことも?
何も、覚えてねぇって言うのか?
ジュビアから出てきた、そのとんでもない台詞に、再び胸を何かに貫かれたようなショックを受けた。
戸惑った顔で俺を見上げるジュビアに、何も言えなくなって、ただじっと見つめる。
…どうすりゃ、いいんだよ…。
この2週間、ずっとずっとお前のことばかり考えてきたのに、こんなことって…。
どうしたらいいのかわからなくなって、視線を外して俯く。
そうしたら。
外した視線の先に、
俺に掴まれていない方のジュビアの手が見えた。
…ぐっと握りしめたその掌が、
小刻みに、震えてた。
その姿に思わず目を見開く。
ハッとして、もう一度顔をあげて、ジュビアを見つめた。
……覚えて、ないわけない。
だって、目が覚めたら俺の部屋だったんだぞ。
自分で起きて、部屋から出ていったんだ。
たとえ前日の記憶がなかったとしたって、それでわからないわけない。
まして、ご丁寧にきちんと服まで畳んで。
ちゃんとお前がしっかりしてたって証拠だろ。
もう一度、じっとジュビアの顔を見つめた。
ジュビアは、固い意志を感じる表情で、静かに俺の方を見ていた。
…あぁ、…そうかよ。
なかったことにしようって、そういうことかよ。
俺が。
俺が、どんだけ…。
そこで、プツンと何かの糸が切れたような気が、した。
ぐっと、ジュビアの腕を掴みなおす。
「…わかった。
じゃ、行こう。」
「…っ、グ、グレイ様…?」
「…覚えて、ねぇんだろ?
だったら、思い出させてやるから。全部。」
「グレイ様…!」
ジュビアが、大きく目を見開いてそう叫んだ。
そのまま、力ずくでジュビアを引っ張って歩きだす。
「グレイ様…!あの…っ」
「思い出させてやるから。
ついてこい。」
「グレイ様!」
ジュビアが、焦って必死で叫んでいた。
…なかったことにしようなんて、
絶対ェ、許さねぇからな。
もう一度、刻み込んでやるから。
どんだけでも、泣きわめけばいい。
覚悟しろよ。ジュビア。
***
自分の部屋にたどり着いて、そのまま強引にジュビアを部屋の中に連れ込んだ。
リビングに着いたとたんに、後ろからギュッとジュビアを抱きしめる。
あの日と同じ、ジュビアの薫りに、下半身がどんどん熱を帯びてくる。
ぐっと抱きしめる腕に力を込めて、そのまま耳や首筋に唇を這わせた。
「…グ、グレイ、様、…やめ…」
「この間は、やめて、なんて言わなかったぞ?」
「………っ」
ビクンと震えたジュビアを、また、ギュッとしてから、くるりとその身体を反転させた。
そして、何もかも飲み込むように唇を奪う。
「…んんっ」
この間は、最初のキスに、すごくすごく躊躇ったのに。
ジュビアが、嫌がってねぇかな、って。
ビクビクしながら、そっと唇を合わせたのに。
今日のキスは、それとは全然違うキス。
何もかも食い尽くすような、深い深いキス。
ジュビアが、声をあげた隙を狙って、舌を捩じ込む。
そうして、口腔の中をこれでもかっていうくらいに蹂躙してやった。
自分で立てなくなって、崩れ落ちそうなジュビアの腰を支える。
ゆっくりと口づけをほどくと、真っ赤な顔をして、ハァハァと息をあげているジュビアと目が合った。
「…シャワー、浴びる?ジュビア」
「…っ、グレイ様…!」
ジュビアが、また、真っ赤な顔で叫ぶ。
「…いいか。今日は、このままで。
もう、これ以上、待てねぇし。」
「グレイ様…!」
射抜くようにそう言った俺に、ジュビアは、またどうしようもなく困った顔でそう言った。
そのまま、寝室にジュビアを連れて行く。
ベッドに押し倒して、ジュビアの両手を押さえつけて、首筋に舌を這わせた。
「…あ、っ、…や、やめ…」
「…思い出させてやる、つったろ?
まだまだ、こっからだろ。」
「…グレイ、様、…あ、やぁっ、」
首筋を強く吸い上げて、赤い痕を残す。
それから、両手を頭の上で一纏めに押さえつけて、どんどんと服のボタンに手をかけていった。
「…やっ、おねが…、いやぁ」
ジュビアの瞳に、大粒の涙がたまっていく。
必死で頭を振っているせいで、ジュビアの目元から、その綺麗な涙が零れて落ちていった。
「…コレも、全部、俺のだろ?」
そう言って、ジュビアの目元にたまった涙を舐めとる。
…零すなよ、もったいねえ。
全部、俺が、舐めとってやるから。
そのまま僅かに抵抗して動き回るジュビアを押さえつけて、着ていた服を、ぐちゃぐちゃに肌蹴させる。
「観念しろよ。ジュビア。」
「グレイ様…!」
「…やめねぇからな。」
「……っ」
肌蹴かけた胸元から、少しだけ汗ばんだ肌見えて、青い髪がそこで乱れていた。
首筋から鎖骨へかけてのラインにそっと唇を這わせる。
「こっち向いて、ジュビア」
そう言って、そのまま唇を重ねた。
何度も角度を変えて唇だけを食むように吸って、ようやくうっすらと開いた唇の間に舌を捻じ込ませた。
「ん…んっ…」
散々貪ったあとで唇を離したら、お互いの唾液で唇が濡れてた。
唇をゆっくりと指でなぞった。
それから、鎖骨から肩へ、そして首筋へ、舌を這わせて、甘い素肌を味わう。
その間にも、一枚、一枚とジュビアの服を剥ぎ取ってやったから、もう、素肌を隠すものは何もなくなってしまった。
まだ明るい部屋で、何もかもが露になってしまったので、ジュビアが身を捩って身体を隠そうとする。
「…隠すなよ。」
そう言ってまた両手を縫い止めてやると、
「…やっ、グ、レイ様、…お願い、です」
ジュビアがまた、そう言って鳴いた。
自分の服も、もう、一枚も身に付けていない。
そうして、何も遮るものがなくなった素肌を重ねて、ジュビアの頭をかき抱いて、深く口付ける。
柔らかそうな双丘に、手を乗せた。
少しだけ指に力を入れて、やわやわと指を沈み込ませる。
それから、掌で下から押し上げるように撫であげた。
「…あ、…あ、やぁっ…」
ジュビアの吐息と艶声が耳に響く。
繰返し撫でてやると、柔らかかった先端が少しずつ固くなって、尖ってくる。
そこを手の平でこねるように、指でつまむように撫でてやれば、ぴくんとジュビアの身体が反応した。
「…やっ、あ……っ」
そのまま、そこを唇で吸い付いて転がす。
見せ付けるように胸の先端に舌を這わせた。
「や…め……、グ、レイ、さ…」
「…やめねぇ。
ここも、俺のもん、だろ?」
ちろちろと舌を這わせて先端を刺激しながらそう言うと、ジュビアは、白い喉を仰け反らせて「…あぁっ、」と喘いだ。
何度も吸い上げると、その度にジュビアの身体が震えた。
「…気持ちいい?ジュビア」
「…やっ、…そんな、ことな…」
「…あんまり、強情だと知らねぇぞ。」
片方は指先で摘んだまま、もう片方の先端を口に含み、張り詰めてきたその場所を舌先で突く。
舌の上で転がし、軽く歯を立てれば、大きくジュビアの身体が震えた。
もう堪らなくなって、ゆっくりと脚の間に手を動かす。
そこは既にちゃんと湿り気を帯びて、しっとりとしていた。
溝の辺りを指の腹で何度か撫でると、湿った音が聞こえて、ジュビアが身を捩らせる。
「濡れてる…」
「…やっ、……っ」
くちゅ、という濡れた音が部屋の中で響く。
指で、優しく肉壁の周りをなぞり、入り口部分をなで上げた。
「……あ、あっ、……~~っ!」
ジュビアが、声が出るのを嫌がるように唇を噛む。
「……声、我慢すんなよ」
「……~~っ」
「我慢すんな。
…聞きてぇんだから」
そう言って、ジュビアの噛み締めた唇をペロリと舐める。
その弾みに「あぁ……っ」というジュビアの艶声がまた響いた。
ゆっくりと中指をそこに埋める。
何度も何度も、出し入れを繰り返して、ぐちゃぐちゃにかきまわす。
同時に、甘噛みするように耳朶を軽く噛んで舌先を耳穴に這わせる。
途端に中で動かしていた指先がきゅっと内壁に締め付けられ、指に絡みつく粘液の量が増した。
耳……感じる?
意地悪く耳朶を口に含みながら、そう囁くと、より一層ジュビアの身体が跳ねた。
「や……やっ、そこ、やめてくださ…」
「…やめるかよ。」
そう言ってますます指の動きを激しくしていく。
指の本数を2本3本と増やして内側で曲げた。
「すげぇ……聞こえるだろ?この音。」
「…い、やっ、」
「イヤ、じゃねぇだろ。
お前が、出してんの」
そう言うと、涙に濡れた瞳を大きく見開いて、ジュビアがふるふると首を横に振った。
くそ、こんなに苛めるように組み敷いたのに、
なんで、こんなにかわいいんだ。
差し込んだ指で膣壁の内部を刺激しながら、探るように指の腹で内部を撫でていく。
そうすれば、少しだけ膨れたような感触に突き当たったので、ぐっと指の腹で押してやった。
「…や、あぁぁっ、」
ちょうど恥骨の裏側あたりに当たるであろうそこを指で思いきり刺激する。
「あ…っ、やめ、やめて」
「…大丈夫だから。…そのまま」
「やぁっ。いやっ……怖……おかしく……!」
「ジュビア…いいから」
とろとろと流れ出てくる粘液を指に絡ませて、こすりあげるようにそこを押し続けると。
「やっ!……あ、ああっ!」
脚がビクビクと小刻みに震えだしたかと思うと、きゅっと内壁が狭まって俺の指を締め付けた。
ジュビアはハァハァと息を切らして、目尻から涙を流している。
その涙を唇でそっと吸ってから、思いきりジュビアの身体を抱きしめた。
**
ぐったりしたジュビアの腰を、そっと引き寄せて脚を開かせる。
限界まで主張している自分のそれを、そっと逝ったばかりのジュビアのそこに這わせた。
「グレイ様…!…待っ…」
ジュビアの制止に耳を貸すことなく、ゆっくりとその先端をそこに埋めた。
「…っ…!…や…ぁぁぁっ」
まだ、2週間前に初めて開いたばかりのそこはすげぇキツくて、先をくわえこむだけでも、食いちぎりそうに俺を締め付けてきた。
ゆっくりと、でも一息に、奥まで突き刺す。
「…やぁぁ…っ」
俺に突き刺されて、ジュビアがまた、声をあげて哭いた。
全部が収まった後で、ほぅっと、1つ息を吐き出す。
やべぇ。……すげぇ、気持ちいい。
このままで、いっちまいそうだ。
ジュビアが、ハァハァと息をあげて、ふるふると顔を左右に振る。
もう一度、ゆっくりと息を吐いた。
「ジュビア、こっち向いて」
涙でボロボロになったジュビアの頬を両手で包んで、額と額を合わせた。
俺が、無理矢理逝かせてしまったから、そしてこうして捩じ込んでしまったから、ジュビアは、自分でもどうしたらいいのかわからずにしゃくりあげていた。
「…おまえが、悪い」
「グレ、イさま」
「…覚えてねぇとか、言うから…」
俺のその台詞に、ジュビアはビクンとして、目を見開いた。
「…俺が、ジュビアを抱いたこと、なかったことにしようとするから……」
「…グレイ様…」
手で頬を覆ったまま、親指で涙を拭ってやる。
それから、ゆっくりと腰を動かした。
「…あぁっ…」
「…抱いたよな?
…あの日も、こうやって」
「…っ…!
…あっ、やっ、」
頬を包んだままで、そっとそっと、ジュビアを揺すった。
「…啼いたよな?
…あん時も、こうやって、俺の下で…」
「やぁっ、グレイさま…っ、やめ、」
追い詰めるようにそう言うと、ジュビアはまた、俺に突かれながら、ボロボロと涙を流して哭いた。
…そうだよ。
あの日も、そうやって喘いだだろ?
その顔も、その声も、
…俺だけの、もんだろ?
俺の下で、声をあげて震えるジュビアを見て、愛しくて、たまらなくなって。
ひとつに繋がったままで、ギュッとジュビアを抱きしめた。
「…ジュビアが、好きだ…」
掠れるような低い声で、ジュビアを抱きしめながら、そう言った。
腕の中で、ジュビアがビクンと震えた。
「……好きだから、抱いたんだ。
だから、なかったことになんか、したくねえ…。」
そう言って、ゆっくりと抱きしめていた腕を弛めた。
そっとジュビアを見つめると、腕の中で、ジュビアがこれ以上ないくらい驚いた顔をして、大きな猫目を見開いて俺を見ていた。
「……うそ…」
「……っ、なんでこんなときに嘘つくんだよ。
…そんなわけねぇだろ。」
ジュビアは、まだ、信じられないというような顔で俺を見ていた。
俺も、その顔を見て、また、込み上げて来るものを我慢出来なくなる。
もう一度、ジュビアを揺すった。
今度は、少し、激しく。
「…っ、…好きだ…」
そう言って、何度も何度も突き上げる。
「……やっ、あっ、あっ、」
ジュビアも再び始まった律動に、また声をあげ始めた。
……かわいい。
もう、どうにか、なりそうだ。
ジュビアの声に惹き寄せられるように、下腹のすぐ裏のあたりの浅い場所を擦るようにして、何度も腰を押し付ける。
「分かる?…ここに俺がいんの……」
ギュッと目を閉じて、口元を抑えるジュビアの下腹部に掌で軽く触れる。
「…あ…!や……グレイさ、ま……」
その場所を刺激することは止めずに、そっと胸にもキスを落とす。
「…やっ、グレイさま、…やめ、
また…」
刺激するとどんどんと奥から甘い液が溢れ出てくる。
「…好きだ」
激しく抽挿を繰返しながらそう言うと、ジュビアの中が、きゅっと締まった。
…そうか。
俺が、とんでもなく興奮したように、おまえもそれで感じるんだ。
俺の言葉で、こんなに鳴くんだ。
かわい過ぎるだろ…。
もうすぐ頂点に昇りつめそうなのか、ジュビアの中がきつく締め付けてくるのがわかる。
「ココは?」
そう言って赤く膨らんだ粒も指で擦りあげた。
「…あ、あぁっ、…だめ!…だめです!」
途端にジュビアの声が大きくなって、元々狭かった内部がもっとぎゅっと締め付けられた。
…ヤバい。
こっちの方が、持っていかれる。
そう思ったけれど、なんとか耐えた。
とにかくジュビアをもう一度昇りつめさせてやりたくて、指と腰でジュビアを刺激した。
「…やぁっ……だめです、…っ、だめ…」
「…だめじゃ…ねぇ…よ」
混じり合う水音が更に大きくなる。
「…あ……あぁっ」
「そのまま…いっちまえ、…ジュビア」
「…っ、やぁぁぁっ、だめ……あ!」
ギュゥゥとジュビア内側が狭まって、咥え込んだ俺をギリギリと締め付けた。
その感覚に持っていかれそうになりながらも、歯を食いしばって耐える。
ビクビクと身体を震わせて逝ったジュビアを優しく宥めるように抱きしめた。
ハァハァと息を切らせて潤んだ瞳。
俺に開かれたその顔で、脚を開いて、俺を咥え込んで感じてる
だめだ、…かわいい。
「…っ…
俺も、もう限界……」
もう一度額を合わせてから、込み上げてくる愛しさにそっとジュビアに口付けた。
それから、ジュビアの両足を肩にかける。
そうしたら、今まで届かなかった奥まで、尖端が届いて、ジュビアが息を飲み込んだ。
「奥、…痛ぇよな。ごめん」
そう言いながらも、もう止めてやることは出来なかった。
抉るように、奥まで突き刺しては引くを繰り返す。
「…っ…グレイ、様、…待っ」
「…ジュビア、…好き、だ」
「…あっ……あ…っ…」
まだ固い奥を欲望のままに、掻き回す。
とんでもない愛しさと快感に、振り回される。
めちゃくちゃに叩きつけるように、腰を押し付けた。
「…ごめん、も、う…」
絞りだすような声で、そう言うと。
「…好き、です…グレイ様…」
という、ジュビアの声が聞こえた。
その瞬間。
突き上げる愛しさと共に、ジュビアの中で、快楽を吐き出した。
何度も何度も、奥まで、流し込むように。
***
「…グレイ、様、…もう…」
俺の膝の上で、ジュビアが、ぐったりとして凭れかかって、そう言った。
最初に一度吐き出した後、そのまま抜かずに、今度はジュビアを俺の膝の上に乗せて揺すったから。
縦に、何度も持ち上げられて、腰を落とされて。
ジュビアが震えながら、抱きついてくるのが可愛くて、そのまま下から、がつがつと突き上げてやった。
後頭部を掴んで、メチャクチャに舌を入れて深いキスをした。
耳も、執拗に、舐めあげてやった。
ジュビアが、もうぐったりとして俺に抱きついてきたから、許さないとばかりに叩きつけて、
もう一度、ジュビアの奥に、自分自身を解き放った。
最後まで出し切った後で、そっとジュビアを抱きしめる。
下腹部は未だ繋がったままだった。
それから、互いに向き合って座っていた姿勢を解いて、もう一度、ジュビアをベッドに寝かせた。
そのままゆるく腰を揺らすと、角度が変わったことで感じたのか、ジュビアが「…やっ、…」と声を上げた。
「…グレイさ、ま…もう……」
「わりぃ。止まんねぇ……」
「…っ…、や、あぁっ、」
「すげぇ……ジュビア、
……めちゃくちゃにしていい?」
「…え…、…やっ、やぁぁ」
そう言って、もう一度、ジュビアの中を抽挿する。
ジュビアの中は、もう、ぐちゃぐちゃに濡れてて、俺も、その暖かさと気持ちよさで、どうにかなりそうだった。
「ジュビア、…ほんとにすげぇ。」
俺がそう囁くと、ジュビアは、顔を真っ赤にして、ふるふると首を横に振った。
そんな仕草が可愛くて、また、どんどんとジュビアを揺すっていく。
こうやって、ジュビアが哭く声を聞いて、互いの体温を感じて。
繋がった所からは、愛しさと同じだけの快感が生まれてくる。
これを、幸せっていうんだ、と思った。
「…ジュビア……」
熱に浮かされて、ジュビアの名前を呼ぶと、涙に濡れた顔をしながらも、俺を見てすがるように「…グレイさま…」と言ってくれた。
…あぁ、もう、だめだ。
繋がったところを掻き回して。
溶けるようなそこを、がつがつと突き上げる。
「…や、あ、あっ、グレイさま…っ」
「もっと…
もっと啼いて、ジュビア」
そう言いながら、激しくジュビアの中を穿った。
「…あっ、…だめ、だめです…っ
…や、また…」
「…いいから、
…っ、いっちまえ、ジュビア」
腰を激しく叩きつけながら、もう一度、赤い粒に手を伸ばして、指でそこを押し潰した。
「……や、ぁぁっ、だめ…です、やめ、…」
「…ほら、いけよ」
「~っ、あ、…やぁ、ああっ」
ジュビアが哭く声に合わせて、最後に粒をきゅっと摘むように引っ張ると、ジュビアはビクビクと脚を痙攣させて果てた。
ジュビアの中が、うねるように俺を飲み込んでいったが、なんとか唇を噛み締めて耐える。
そして、ハァハァと息をきらせるジュビアに向かってまた激しく腰を揺すり出した。
「…いやっ、…グレイ様、もう、」
「…まだ、終わらねぇからな。」
「…やぁ、もう、無理、
…無理です…」
脚を開かせて、繋がった所を見ると、俺の出した白いのとジュビアの中から出る甘い液とが絡まって、溢れて出ているのが見えた。
膝裏を抱えて、ジュビアの身体を折り曲げる。
そうして、また、深く深く、ジュビアを穿ってやった。
上から、叩きつけるように、ジュビアの奥を突く。
さっきはまだ、固かった子宮の入り口も、少しだけ柔らかくなって俺を飲み込もうとしていた。
「…やぁっ、おねが、…もう、たすけて」
「…ジュビア、…っ」
「…グレイさま、…あ、あぁっ」
「ごめ、…!………っ」
ジュビアの、涙に濡れた喘ぎを聞いて、
その中が蠢くように絡み付いたその時、
俺は3度目の熱い滾りを、ジュビアの中に解き放った。
そのまま、ぎゅっと抱きしめて、脱力するようにジュビアの上に圧し掛かる。
ドクドクと全て吐き出したところで、そっと、額と目元に口付けを落とした。
そこで初めて、ジュビアの身体から自分を引き抜く。
栓をなくしたその場所は、俺が出て行くと共に、白く濁った液体をつーっと伝わせた。
「すげぇ…」
「…やっ、見ないで、くださ…」
ジュビアが、顔を真っ赤にして横を向く。
傍にあったタオルで、そっと、拭き取ってやろうとすると、またとんでもなく赤い顔でそのタオルを取り上げられた。
そして、ベッドの上に丸まっていたタオルケットを引き寄せて、その中にくるまって背中を向けてしまう。
その中でごそごそと動いているところを見ると、恐らく自分で綺麗にしているのだろう。
「…ジュビア」
そっと、ジュビアの名前を呼んでみた。
すると今度は、顔までタオルケットの中に潜り込ませて、ますます丸くなってしまった。
その姿がかわいいやら、小さな拒絶が淋しいやらで、そのまま、後ろから、タオルケットごとジュビアのことをぎゅうと抱きしめた。
ジュビアは、一瞬ビクンとなった後で、また、貝のように丸まってしまう。
「…ジュビア」
優しくもう一度、名前を呼んでみた。
汗ばんだ髪にそっと手をやって、つむじにキスを落としたら。
今度は、バッと振り向いたと思うと、真っ赤な顔で涙目にキッと睨み付けてきた。
「…っ、なんだよ?」
俺が焦ってそう言うと、
「…~~っ!
もう、しません…!」
ジュビアは真っ赤な顔でそう爆弾を言い放った。
「はぁ!?」
「…~っ、ジュビア、グレイ様とは、
もう、しません…!」
「…っ、なんでだよ!?」
今度は俺の方が焦って、ぐっと自分の方にジュビアを引き寄せる。
「…っ、なんでもです…っ
ジュ、ジュビアが、無理って、何回も無理って言ってるのに…っ」
「…っ、や、だって、それは…~っ」
ジュビアは、涙目でこっちを恨みがましく睨んだまま、そう言った。
仕方ねぇだろ!
止まんなかったんだから!
「…っ、ジュジュビア、あんな、あんなっ、」
「…~っ、ごめんって!
…でも、おまえも、何回もイって…」
「キャァァ!…~っ、
そ、そんなこと、い、言わないでくださっ…!
っていうか、もう、ほんとに信じられません…!」
ジュビアは、そう言うと、また、カタツムリのように丸まって、タオルケットの中に潜り込んでしまった。
「…~っ、ジュビア、悪かった、って。
…なぁ」
天岩戸のように閉じ籠ってしまったお姫様の機嫌をとるべく、もう一度後ろからそっと抱きしめる。
するとジュビアは、俺の腕の中で、真っ赤な顔をして、キュッと目を閉じて固まってしまった。
そんなジュビアを宥めるように、ポンポンと頭を撫でる。
そりゃ、そうだよな。
まだ、2回目なのに。
あんな抱き方して、無理矢理逝かせられて、怖かったよな。
あんな風に乱れることも、恥ずかしかったにちがいない。
「…悪かった。」
そっと、耳許でそう呟いた。
俺のその声を聞いて、ジュビアも少しだけ身体の力を抜く。
「…悪かった。
…でも、止めらんなかった。
俺が、この2週間、どんな気持ちでいたか、
…ジュビアに、わかる?」
「…グレイ様…」
「…あの日、朝起きたら、おまえがいなくて…。
おまえが好きだってことも、
順番が、逆になっちまったことも、
ちゃんと話して謝りてぇのに、もう、ずっと、おまえはいなくて…」
「…グレイ様…」
今日まで、ずっと抱えてた思いを思い出して、ギュッと抱きしめる腕に力を籠める。
「…もう、…帰ってこねぇんじゃねぇか、って…、思ったんだぞ…」
そのまま、後ろからジュビアの肩口に顔を埋めた。
…ホントに、怖かった。
あんなことしでかして、もう、この腕の中に、ジュビアが戻って来なかったらどうしよう、って、自分でも呆れるほどビビってた。
やっとこさ戻ってきたと思ったら、あの日のことなんてなかったことにしようと言い出す始末だ。
「…ずっと、ずっと、こうして抱きしめたかったんだ…」
「…グレイ様…」
俺の情けねぇぐらいに小さな呟きを聞いて、ジュビアが、腕の中でくるりとこちらを向いた。
じっと、こちらを見つめる目には、ユラユラと雫が揺れている。
「…ジュビアも、怖かった、です。
グレイ様に、困った顔をされて、謝られるのだけは嫌だった…。」
「…ジュビア」
「…ジュビアは、幸せだったから。
だから、どうしても、グレイ様に拒絶される言葉は聞きたくなかった…。」
目に雫を揺らしてそう言うジュビアを見ていると、たまらない気持ちになって、今度は正面から、思いきり抱きしめた。
「…ごめんな。
ちゃんと、自分の気持ちもわかってなかった俺が悪いんだよな。
…ホントに、ごめん。」
「…グレイ様…」
「…でも、順番が、なんかもう色々無茶苦茶になっちまったけど。
…ジュビアは、もう、
俺のもんだよな?
そう思って、いいんだよな?」
腕の中にいるジュビアに確認するようにそう言った。
ジュビアが、腕の中で小さく身動いで、こくん、と頷く。
その姿と、頷いてくれたという事実に、また胸の奥が熱くなって、そのまま、抱え込んでいた頭をそっと撫でた。
ゆっくり、少しだけ腕をほどいて、ジュビアの顔を見つめる。
そうして、軽く、触れるだけのキスをジュビアに落とした。
ジュビアが、じっと俺の方を見つめてきたので、俺もそのままフッと笑って、ジュビアを見つめた。
「…ってことで。
…いい、よな?」
「…はい?」
「…~っ、だから、さっきの!
…取り消す、よな?」
「……??」
「…~っ、だーから!
さっきの、もうしねぇって言った奴。
取り消せ、っつってんだ!」
ジュビアの方を、じとっと見つめてそう言った。
ジュビアは、また、さっきのごとく顔を真っ赤にして、
「…~っ、それとこれとは別です…!」
と、怒鳴った。
「…っ、なんでだよ!」
「…なんでもくそもありません…!
と、とにかく、ジュビア、しししばらく、グレイ様とは、しませんから~っ…」
「…おまえなぁ!
…っ、クソ、取り消さねぇなら、今すぐもう一回突っこむぞ!コラ!」
「…キャァァ!
なななんてこと言うんですか!?
もう、ほんとに知りません…!」
腕の中で、バタバタと暴れるジュビアを押さえ込んで、もう一度ギュッ抱きしめる。
俺は、とりあえず、このわがまま姫をどうしてくれようかと考えながら。
ジュビアの頭の天辺に、もう一度キスを落としたーー。
了
∞∞後書き∞∞
ごめんなさい…。
調子に乗って、やってしまった奴です…。
だってだって、書きたかったんです。
とんでもなく濃厚な奴が!
抜かずのグレイ様が!(最低)
初物も好きですが、2夜目も実は大好きです(//∇//)
(→ますます最低。でも愛はある。)
ここから真面目にタイトル話。
落花流水。
散る花と流れる水の意味で、晩春の景色ですね。相思相愛のたとえです。
花が流水に散り落ちれば、流水もこれを受け入れ花を浮かせたまま流れてゆくように、男が女を慕う心を見せれば、女もまた男を慕い愛を受け入れるという意味ですね。
落花がグレイ様、流水がジュビアのイメージに合っているので、いつか使いたいと思っていたタイトルでした。
(それをここで使うんかい!という突っ込みはスルーの方向でお願いいたします。)
ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
少しでも大人なグレジュビが、皆さんと共有できたなら幸せです。
柚子雨