glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑫

グレジュビ短編。『ことのは』シリーズ ⑫
久しぶりに、ことのは、書きました。

お付き合い直前な感じの2人。
自覚はしてるけど、告白なんて今更どうやってすんだよ、なグレイ様。

ではでは。





「あぁ~。そっちに行ってはダメです~!
ロキさん、捕まえて~。」

ギルドの中に、ジュビアがバタバタと走り回りながら叫んでいる声が響く。
そして、キャラキャラと笑いながらこれまたギルド中を走り回っている小悪魔が1人。
その小悪魔は椅子からテーブルに飛び移ったかと思うと今度はそのテーブルに積み上げられている果物の山に頭を突っ込んだ。
ミラちゃんが、スイーツとジュース用にと大量に仕込んであったその果物の山が、その衝撃でバラバラと崩れ落ちそうになる直前に。

ロキが、すっとその元凶を抱き上げた。

「こら、大人しくしてないと、ジュビアが困るだろ?」

ニッコリと笑ってそう言ったロキの腕の中には、翠の髪を揺らした小さな男の子が、ちょこんと抱かれている。
そこに、パタパタとジュビアがやってきた。

「ありがとうございます。ロキさん」
「いやいや、ジュビアに迷惑をかけてるのは僕だしね。
ほんとにごめんよ。」
「いいえ。ジュビアも楽しいですから。」

ロキに抱き上げられたソイツが、ジュビアに向かって手を伸ばす。
すると、ジュビアは愛しそうに微笑みながらロキからそのガキを受け取ると。
ふふっ、と微笑みながら優しくギュッとソレを抱きしめた。
そんな二人の様子を、温かい笑みで見つめるロキ。
そしてロキは、ジュビアに抱かれているそのガキの頭をそっと撫でてやっている。

「ほんと、微笑ましいわよねぇ。」
「ね、親子みたい。」

カウンターの中からそう呟いたミラちゃんに、カナもそう答える。

確かに微笑ましい。

まるで、新婚夫婦が如く、だ。

そう考えるだけで、胸の奥の方からムカムカとどうしようもない感情が舞い上がってくるが、それはともかく。

「ね?グレイも、そう思わない?」

ミラちゃんが、ニッコリと笑ってそう訊いてきた。
俺にそれを聞くってどうなんだ。

「……あ?
…まぁ、微笑ましいんじゃ、ねぇの?」

「だよねぇ!
ホント、ジュビアってああいうとこ、甲斐甲斐しくてさ~。いいお嫁さん、いいお母さんになること間違いなしっていうかさぁ~」

ミラちゃんに対してしぶしぶ返した俺の言葉に、カナがニヤニヤとそう返してくる。

……おまえに向かって返事したんじゃねぇっつの。

つか、この話題そのものが大層面白くない。

俺は、まだ皿に半分近く残ったパスタを早々に食いきってこの場所から戦線離脱することを決めた。

「ライザくん、あっちで一緒にご飯、食べましょうね。」
「うん!」
「あ、じゃあ、僕が運んでくるよ。
ジュビアとライザは、先に座ってて。」

向こうのテーブルでは、ジュビアとライザ、そしてロキのそんな会話が繰り広げられている。


最近。
俺の心の中は、非常に、穏やかでない。

この状況が致し方ないものだという事も、誰が悪いわけでもないという事も、充分すぎるほどにわかってはいるが、しかし、面白くないないものは面白くない。

この状況が、ギルドに巻き起こったのは5日前、の事だった。

ロキが突然、一人の小さな男のガキを連れてギルドにやってきたのだ。
金色と青と足して2で割ったような翠の髪をしたそのガキ、ライザ(4歳)はグズグズと泣きながら不安げにロキに抱きついていた。

「どうしたんだよ?ソレ」

すわ、いよいよ失敗してまさかのガキが出来たのか!?
と、心配して聞いてみると、知り合いの女性から預かっているのだ、と言う。(知り合いって、おまえソレ彼女の一人だろ!というツッコミは敢えてしないでおいた。)

なんでもその女性は、旦那と死別して一人でこの子を育てているのだが、病気で10日ほど入院しなくてはならなくなってしまったらしい。いつも頼っている友人達も仕事で都合がつかず、ライザの事をどうしようかと困っていたら、ヒョイと彼女の元にロキが顔を出した。(ロキが以前、素敵な未亡人と恋をしていると言っていたのは、きっと彼女の事なのだろう。)
彼女に頼まれ、困っている様子を放っておけなかったロキは、退院するまでのしばらくの間、その子供、ライザを預かってやる事にしたらしいのだが。

預かったはいいものの、何しろライザが泣いてばかりで、飯を食わせるのも一苦労だったらしく、困ったロキはギルドの女性陣に助けを求めるべく、ライザを抱いてギルドにやってきたのだ。

「ほぅー。それは大変だな。
よし、私も協力しよう。
さぁ、おいで。」

エルザがそう言って手を差し伸べた時も、ライザはビクッとして不安げにロキを見ていた。

まぁ、当然だよな。
初めて会った人間にいきなり懐け、つっても、そりゃ無理があるし。

その後、ミラちゃんにリサーナ、そしてカナやルーシィも優しくライザに声をかけてみたが、ライザはやっぱりもじもじとして、上手く皆に手を伸ばす事が出来ないみたいだった。

しかし。

「…可哀相に。ママと離れて不安なんですよね。」

ジュビアがそう言って、ライザの小さな手をそっと握ってやった時だけ。
ライザはパッと顔を上げてジュビアを見たかと思うと、瞳にジワッと涙を溜めながら、ジュビアに向かっておずおずと両手を伸ばした。

「おぉ、ジュビア、いけるんじゃないか?」

エルザのその声に後押しされてジュビアがそっとライザに手を伸ばすと、ライザは少し躊躇いがちにジュビアを腕の中にやって来て、それからギュゥゥとジュビアにしがみついてきた。

「あぁ、やっぱり。
ジュビアならもしかしたら、と思ったんだ。
リーラ、この子のママに雰囲気が似ているからね。」

ロキはその様子を見て満足げにそう言った。

なんでも、件のその未亡人彼女とやらは、青い髪でジュビアによく似た雰囲気の女性だと言う。

「頼む!
ジュビア、しばらくの間、この子の世話を手伝って!」

ロキにそう泣きつかれ、そしてジュビア自身もおそらく放っておく事が出来なかったのだろう、
「いいですよ。」とにこやかに笑って、ジュビアはライザの世話役を引き受けた。

それからというもの、ライザはジュビアにべったりで、どこに行くにも離れようとしなかった。
ジュビアは、夜、寮に戻る時も、ライザを寝かしつけてからこっそりとギルドを出て、また翌日朝早くに戻ってくる、という生活だ。
(ロキは星霊界に戻ってからは自分の部屋は解約してしまったので、こちらの世界にいる時は基本女のところか、俺のところか、ギルドで寝泊りしている。今は、ライザと2人、ギルドの客室を使っているのだ。)

そうこうするうちに、さすがは子供、順応性はあるようで、2~3日もするとライザはすっかりギルドにも馴染んで、日々子供らしく走り回って元気に遊ぶようになった。
それでもやはりジュビアにべったりなのは変わらない。
必然的にライザの世話のため、ロキとジュビアがいつも一緒にいて、まるで新婚家庭であるかのようにライザを挟んでやり取りしている。

……わかってるし。
別に、これが一時的なものだってことも。
ロキにも、ジュビアにも、お互いにそういう感情があるわけでもないことも。

日々、そう言い聞かせているものの、
しかし、心の中はもう、どんどんとムカムカする気持ちが溜まってくる。
ギルド内不快指数は、増してゆくばかりだ。

…ジュビアが、俺を、呼ばない。
俺のところに、全然、寄ってこない。
いつ見てもロキと一緒に、ベタベタと新婚ごっこで、
溢れるような笑顔で、ロキとライザに向かって微笑む。
…ジュビアが、ライザを抱きしめる。
そのジュビアを、優しくロキが見つめる……。


「グレイ、顔。」

ミラちゃんが、カウンターの中からクスッと笑いながらそう言った。

「……あ?」

「このへん。皺が寄ってるわよ?」

ミラちゃんは、そう言って自分の眉間をそっと指さした。

……危ない。
顔には出さねぇように…って、気をつけてたはずなのに。
無意識の産物って怖ぇ。

「まったく、そんな顔するくらいなら、さっさと言えばいいのに。ヘタレ目はこれだから。」

隣でカナが、まるで蔑むような視線でチラリと俺を見てそう言った。

「ヘタレ目ってなんだよ!」
「は?ヘタレのタレ目ってことだけど?
あれ?自覚ないの?」

カナは、容赦ない。
ピシャリと即答でそう返してきやがる。

「ジュビアも、大変だね。」

そうして、ハァ…と大袈裟にため息をついて、また酒を煽り出した。

うるせぇな。
わかってるっつの。
俺、俺だってな…!

最近は俺なりに、ジュビアに対して気持ちを出すように努力しているつもりである。
しかし、それが、一向にジュビアに伝わっている気配はない。

「まぁ、わざわざジュビアのために買ってきたおみやげのブレスレットを、『貰ったけど要らねぇからやる』なんて言ってる時点でアウトだけどね。」

「……なっ!?」

な、なななんで知ってやがる!?

あの時そばには誰もいなかった筈なのに!

「いつまでもそんなだから、ジュビアにも相手にしてもらえないんだよ。」
「………。」
「…その時点で、アンタに、あの未来は来ない。」

カナはまた上から見下ろすようにフッと笑うと、向こうのテーブルにいるジュビアとロキとライザを指さした。

カナの指の先にある、幸せそうな家族の光景。

……くそ、ただでさえ見たくもねぇその光景なのに、こんな付属品の精神波状攻撃までついてきやがる。

俺はすっとそこから視線を外して、
ただ無心に目の前のパスタをたいらげる事に集中することにした。

そんな俺の様子に、カナはまた大きくため息をついたが、今度はもう何も言わなかった。


あぁ、もう、駄目だ。
いろいろ、いろいろ。

言いたい事が喉元までせり上がってきて、今にも飛び出しそうになる。

ジュビア。

そんな顔して、俺以外のやつに笑うなよ。

俺以外の奴の名前なんて呼ぶな。

おまえは、俺だけ見てればいいんだよ。

ずっとグレイ様グレイ様つって、俺だけに引っ付いてればいい。



『好きだ』という、たったその一言。

言いたくても、言えない言葉。

もう、今更どうやって言えばいいのかわからないその言葉が、胸の中でこだまする。

心の中のいろんな風船が毎日ムクムクと膨らんでいって、もう破裂寸前なことは間違いない。

そろそろ限界が近いことをひしひしと感じながら。

ミラちゃんに一言「ごちそうさま」と告げて、俺はそのカウンターの席を後にしたーー。





〈続 or 了〉







【後書き】


動き出す直前な、グレイ様。

私の中のグレイ様は、自覚するまで時間がかかって、
その後動き出すまでにも、うだうだとかかって、
でも、いざ動いた後は、独占欲爆発で我慢もきかないタイプ、ですかね。