glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑬

グレジュビ短編。『ことのは』シリーズ ⑬

あけおめSSです。
お付き合いし始めたばかりの2人。
(全然、内容ありません…逃げ…)

ではでは。






ベッドの中で、悲しげにじとっとこちらを見ている瞳を見つける。

「……なんだよ?」

「ジュビア、大丈夫です…!」

「まだ言うか。」

俺はベッド脇に腰掛けて、心の底から残念そうな声を出しながら横たわってるジュビアの頬をフニッと摘んだ。

「…うぅ、グレイしゃま、いひゃいれす…!」
「しかたないだろ。
これだけ熱あるんだぞ?」
「……。」
「ばーか。こんな状態で動ける訳ねぇだろ。
いいから寝とけ。」

つままれた痕を手でさすりながら、それでも恨めしそうに、ジュビアがじっと俺を見てきた。





新年あけて、半日たった昼すぎ。

前日の大晦日の夜は、ギルドで皆と大騒ぎして年越しパーティをした。
夜中に家に帰りついた後、数時間眠ってから、昼過ぎにジュビアとの待ち合わせ場所に行ったら。

そこに、真っ赤な顔で目元も潤ませて、少しだけ息も辛そうに立っているジュビアがいた。

それでもニコニコと笑って、
「おはようございます、グレイ様。」
そう言ったジュビアの様子がどう見てもおかしいから。

「まさか…」そう思って、そっと額に手を当ててみたら
まるでジュッと音がしそうなくらいに熱い。

「おまえ…。」
「…はい?」
「何してんだよ。」
「何って、あの、グレイ様を待ってました。」

相変わらずニッコリと笑って、さも当然のようにジュビアがそう言う。

頭にはフワフワとした白いファーの帽子を被って、
ニットのミニのワンピースに揃いの薄手のショールとブーツを合わせて。
気合いの入った可愛いらしいカッコでジュビアは立っていた。

付き合い出して、初めての年越し。
新しい年の最初を2人で過ごせたらいいな。
昨日の夜、そう言って、初めて俺からジュビアを誘った。
その、カルディナ大聖堂への初詣を、ジュビアはとても楽しみにしていて。
「ジュビア、ジュビア、嬉しいです。」とニコニコ笑って、俺の前ではしゃいでた。
その話をヤレヤレっていう顔を作って聞きながら。
本当は俺もすげぇ楽しみだった、けど。


「グレイ様と、初めての初詣、
ジュビア、緊張します…!」

「帰るぞ」

「…えっ?」

ワクワクした顔でそう言ったジュビアの腕を掴んで、ちょっとばかり不機嫌にそう言った。

こんな状態で初詣なんて行ける訳ねぇだろ。

きっと昨日のギルドでの大騒ぎの時から調子が良くなかったに違いない。
なのに、ミラちゃんの手伝いだと言って、パタパタとあっちのテーブル、こっちのテーブル、と動き回っていたジュビアを思い出す。
自分の事はいつも二の次三の次なジュビアに対するイラつきと、気付いてやれなかった自分への憤りとで、声にまで不機嫌さが現れてしまうのは否めなかった。


「グ、グレイ様、…あの…?」

困惑した表情で口ごもりながらそう言うジュビアを、無言で引っぱる。
少しだけ行き先に悩んだ後で、元来た道を戻って自分の家への道を選んだ。





部屋に着いてから、自分のベッドをさっと整えて、ジュビアを寝かせた。

ここまで歩いて来るその間も、ジュビアは、フラフラしてる癖に頑なに「大丈夫です、ジュビア行けます。」を繰り返していた。

ホントは歩くのも辛そうなジュビアを見て、無理矢理にでも抱き上げるなり、おんぶしてやるなり、したい位だったが。

それでも、ジュビアの主張を一応尊重して、ウチまでの道を一緒に歩いた。

ベッドに突っ込んだ後も。
しゅんとしてモゾモゾと毛布の中に潜り込みながらも。

「……ジュビア、行きたかったです…。」

ぐすぐすと涙ぐみながらそう言い続けるのをやめない。

はぁーっとため息を1つついて、軽くジュビアを睨みつけた。

「仕方ねぇだろ。
…風邪をひいた、おまえが悪い。」
「そうですけど……!」

ジュビアは毛布のなかに顔を半分埋めて。
いつも帽子の下に隠れているゆるふわ髪もベッドの上にハラハラと乱れさせて、瞳も熱のせいと涙のせいで潤ませて、頬も紅潮させながらそう言った。

「……そうですけど…。」
「……けど?」
「………。」

やっぱり熱の篭った潤んだ瞳で、毛布から半分顔を出したままそんな風に見つめられると。
不謹慎なのはわかってるけど、なんだか誤解しそうになる。
おまえが、熱出してて調子が悪いのはわかってる、のに。
勘違いしそうになってヤバい…。
ジュビアの具合が悪いことには気付かなかったくせに、こんな時にこんなどうしようもねぇ気持ちだけは一人前に湧くなんて。
自分の中に湧き上がった自己嫌悪とこの不埒な気持ちを隠すために、ジュビアからバッと顔を背けた。

「…とにかく、寝ろよ?
何か飲みたいとかあるか?」

焦ってそう聞いた俺に、ジュビアがフルフルと首を横に振る。
そして、そっとその潤んだ瞳をふせた。
その表情はここに来るまでよりもますますしゅんとして、ぐっと唇を噛み締めている。

おずおずとジュビアの髪に手を通して、親指で涙に濡れた瞳をぬぐってやると。
ジュビアはそんな俺の袖口をギュッと掴んで、またじっと俺を見つめてきた。

それから。

「……ごめんなさい。」
「……。」
「……せっかく、グレイ様が初めて誘って下さった、のに。」
「……。」
「……ちゃんと、行けなくて。
グレイ様が怒るのも、当然です…。」
「……は?」

一瞬、ジュビアの言う事にポカンとしてしまった。
思ってもみない事が、その口から紡がれたからだ。

「…でも、でも、ジュ、ジュビア、頑張りますから…!」
「……。」
「つ、次はグレイ様をがっかりさせないように、ちゃんと頑張ります…!」
「ジュビア」
「…だ、だから、あの、き、嫌いにならないで、ください…。」
「ジュビア、聞けって…」
「お願いです…!
…わ、わ、別れる、とか、言わないで…。
もう一度、チャンスをくださ…、……っ…!」

何度声を掛けても全然聞いてなくて、必死で焦って言葉を並べるジュビアの唇を、自分のそれで塞いで黙らせた。

突然の、初めてのキスに。

ピタリ、と、ジュビアが固まった。

そっと、合わせていた唇を離して。

それから、放心状態のジュビアを自分の腕の中に閉じ込めて、ギュッと抱きしめた。

「…怒って、ねぇから。」

「グレイ様…?」

「……ムカついてるのは、自分に、だよ。
おまえの調子が悪いことにも気付かねぇくせに、
……こうして腕の中におまえがいたら、
……テメェの欲ばっか出てくるダメな自分に。」

そう言って、少しだけ腕を緩めて、ジュビアを見つめた。

「グレイ様…」

「……泣くなよ。」

「……。」

「……ちゃんと、好き、だから。おまえのこと。
こんなにおまえに必死な俺の気持ちも、ちょっとは判れよ。
……別れる、とか、冗談でも言うな。」

じっと、ジュビアを見つめてそう告げると、ジュビアはその瞳にまた、溢れそうなくらいの雫を溜めてゆく。

「……今日は、無理でも。
また、いつでも、行けるだろ?」
「………。」
「おまえが、行きたいって言うなら…、これからいくらでも、どこでも。…連れてってやるから。」

ジュビアの目から、ポロポロと涙が零れて落ちていく。

「…もっと、我が儘も言っていい。
おまえの我が儘くらいなら、何でも、きいてやる。」
「…グレイ様」

いつもいつも人のことばっかで、自分の我が儘なんて滅多に言わないジュビアだけど。

今日も、明日も、明後日も。
そう、これからずっと、ずっと。
できたら、一生死ぬまでずっと。

おまえの我が儘をきいてやるのは、俺でありたい、と思う。

調子が悪ぃのに、こんなふうに泣かせるんじゃ、なくて。
病気や怪我の時には頼ってもらえるような、せめてそのぐらいには一人前の男になりたい。

行けなかった初詣がわりに、自分の胸に今年の誓いをたててみる。

おまえをちゃんと包み込める、そんな男になれますように。

それから、これからもずっと、2人で過ごしていけますように。

そして、いつかいつか、この腕にジュビアの全部を抱きしめることが出来ますように。

そんな誓いを胸に、もう一度、ジュビアをギュッと抱き寄せて。
そっと耳元にキスをした--。









〈了〉









風邪ひきジュビアと、甘々グレイ。
グレイ様別人警報発令中…!

なんも内容のない話でごめんなさいm(_ _)m