glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

プチ・フール

こんにちは。

ホントに短いですが、グレジュビ短編を2本詰め合わせで。

可愛い妹、ハルハルちゃんへの、捧げものです。

ハルちゃん、遅くなって、そしてこんな内容のないもんでごめんね。
よろしければ、どうぞ、お受け取りくださいませ。

では。







〈1〉ギルドな風景


宴の途中で、脱ぎ散らかした服を拾って席に戻ってきたと思ったら、なんだかキョロキョロと視線をさまよわせている男を発見した。

おそらく、少し前までその席の隣にいたはずの彼女がいないことに気付いて、探しているのだろう。
まったく。
普段はそっけないくせに、こういうところはホントにわかりやすいよね、と、カウンターの中で手伝いをしながらレビィは苦笑した。

どこに行ったんだ、と言う表情で辺りを見回していた彼は、ある1点でピタリと視線を止めた。
その視線の先には、なんだか数人が輪を描いて座っていて。
1枚の新聞記事を覗き込んで、へぇ、だの、ほぉ、だの、言っているようだ。
その中に、頬を染めて何かを言っているジュビアがいる。

『……チッ』っていう、小さな舌打ちが聴こえた。

こちらに気付かれている、ということに、彼は気づいてないんだろうなぁ、とレビィは再度笑みを零した。
誰かが見ていると思ったら途端に発動する、照れ隠しと言う名のツン攻撃も、ギルドのメンバー達にはもう慣れたものだ。
見ないふり、気づいてないふり。
そうすると彼は、いつもより盛大に素直に自分の気持ちを表現してくれるのだから。

この間のマカオ達は、あれは、彼らが悪い。
あんなふうにからかったら、絶対にアクロノギア級の照れ隠しによるツンが発動するに決まっているのに。
結果、不機嫌を装って『住み着かれた』なんて言い出した氷の彼の言葉に、あの後ほんの少し落ち込んでいた水色の彼女の事を思い出して、レビィは、ふぅ、と、ため息をついた。

クルリ、と踵を返して、グレイがそのジュビア達がいるテーブルの方に足を向ける。

面白そうだ。
あ、それに、ガジルもいるじゃん。
ちょっと自分も覗いてみよう。
ちょうど今、ここの手伝いも終わったし。
そう思ったレビィは、急いでエプロンを外して、カウンターの外に足を進めた。







グレイと、ほぼ同時に、件のテーブルにたどり着くと。

いやぁ、それにしてもねぇ、っていうルーシィのセリフが聞こえたので、
『なになに?何の話ー?』とレビィはその話題に首を突っ込んだ。

すると。

「あのね、これこれ。」

そう言ってルーシィが出してくれたのは、
1枚の新聞記事だった。

「西の島国に生まれたお姫様の名前が決まったんだってー。」
「へぇ。そういえば、もうすぐ生まれるとかなんとか、話題になってたねぇ。」
「うんうん。
それがね、見て、ほら。」

ルーシィが指さしてくれたそこには。

「……シャルロッテ=イリザベータ=ディアーナ?」

そのお姫様の名前がそう記されていた。
なんというか。
お姫様なんだから別にいいっちゃいいんだけど。
確かにご大層なお名前では、ある。

「……長いね。」
「だよね。
真ん中は現国王である曾お祖母さまの名前を貰って、ラストは亡くなったお祖母さまの名前を貰ったらしいよ。」

ルーシィの説明に、なるほど…、と納得していたら、向かいから、

「素敵です…!」

というウットリとした声が聴こえた。
ふと見ると、向かいに座っていたジュビアがキラキラと瞳を輝かせて、胸の前で手を組んでいる。

「旦那様のおばあ様やお母様の名前を貰うなんて!
ジュビアも、ジュビアも、そんなふうに子供に名前を付けたいです…!」
「ジュビア」
「たくさんの方の、赤ちゃんへの幸せを願う気持ちがこめられている感じです!
ジュビア、感激しました!」

水色の彼女は、本当にキラキラと瞳を輝かせてそう言った。

確かに。想いは、込められてるよね、と思う。
長いけど。
この西の島国は、確か王室にまつわる騒動とかも結構大変で、だから、いろいろ大人の事情的なものもあってこういう長い名前になっているのだとは思うが。
しかし、そういう即物的なことは彼女には関係ないのだろう、純粋にニコニコと微笑んでいるジュビアを見ると、気持ちもほっこりとしてくる。

それから。
ちゃっかりと彼女の隣を陣取っている黒髪の彼の方に、そうっと目を向けると。
グレイは、フッと口角を上げて、なんだか優しい目で、隣の水色を見ていた。
おぉ、めずらしく、デレ発動。
確かに、可愛いもんね、こういうジュビアはさ、と、こっそりと思った事は黙っておく。

「ジュビアも、たくさん名前をならべてみたいです。」
「ふふ、可愛いなぁ、ジュビア。」
「あ、じゃあ、これもジュビアなら好きかもね?
遠い東の島国なんだけど。
子供につける名前でキラキラネームってのもあるらしいわよー?」
「キラキラネーム!?」

ルーシィが、はたと何かを思いついたようにニマニマと笑って言ったそんな一言に、ジュビアがお約束通りに飛びついた。
瞳はまたしても輝いている。

「……おい、コイツにくだらねぇ入れ知恵すんなよ?ルーシィ」
「なによ、グレイ。
人聞き悪いこと言わないでよねー。」

なんだか面倒くさそうな展開の予感を感じ取ったのか、グレイがじとっとルーシィを見つめてそんなふうに言った。
ルーシィの方は、べーっと舌を出して、グレイのことを軽くいなしている。

「……で?
どういう代物だよ、そのキラキラネームっつーのは。」

「いやいや、まぁ、なんか当て字っていうのかなぁ、無理矢理に字を読ませる感じで、結局奇妙な名前になっちゃって、子供にとっては迷惑な感じなんだけど。」

サラリと質問してきたガジルに、ルーシィがそう答えると、ガジルは
「……やっぱな、どうせろくなもんじゃねぇと思ったぜ」
と、ほんの少し顔をゲンナリさせてそう言った。

しかしジュビアは、そんな2人の様子にはちっともお構いなしに(どうやら妄想タイムに入ったらしい)、
「ジュビアとグレイ様の子供にキラキラネーム、なんて素敵なのでしょう…!」
などと呟いている。
そうして、ワクワクとした表情を浮かべたまま、可愛らしく小首を傾げて。

「ルーシィ!
キラキラネームとは、どんなふうにキラキラしているのですか!?」

と、聞いてきた。

そんなジュビアに、ルーシィはクスクスと微笑みながら。

「えーっと、そうねぇ。
例えばー」

「例えば?」

「 そうそう。あっちの国の文字で、
苺愛と書いて(べりーあ)って読んだり。
あ、この『苺』って字がイチゴって意味で『愛』って字が愛するって意味ね。
それから、七音、七つの音って書いて(どれみ)って読んだり。
あと、それから、姫の星、姫星と書いて(きてぃ)とか(きらら)とか、あるんだってー。」

「…あぅ、なんだかよくわからないですけど。
確かに、キラキラしてるような気はしますね。
他には?」

遠い国の言葉だけに、イマイチ伝わりにくいことではあるのだが、まぁ、無理矢理に変わった名前にしようとする親の存在だけは浮かんでくる。
そんな無理矢理な名前で、将来子供が苦労するかどうかとかは考えないのだろうか、とは思うが。
それはさておき、
ジュビアは、相変わらずニコニコと笑ったままで、ルーシィの次の言葉を待っている。

「あとねー、あ、黄熊って書いて(ぷう)っていうのもあるよ?」
「黄熊(ぷう)!?」
「うん。」
「そ、それは!それは、確かに可愛いです!」

ジュビアは、その黄熊(ぷう)っていう名前を聴いた途端に、それこそキラキラとした瞳でピョンと跳ねてそう言った。
それからさらに、キューンって感じで手を組んでうっとりとした顔で続ける。

「黄熊(ぷう)、素敵ですね…!
それは、それは、ジュビア、子供が出来たら、ぜひ…」
「ちょっと待て!」

そのジュビアのトキメキ発言に、思わずといった体で黒髪がバコンッ、ジュビアの後頭部を叩く。

「痛いです、グレイ様〜」
「知るか。おまえ、自分の子供の名前だぞ?
もっとちゃんとしたのを考えろ。」
「えぇ!?
黄熊(ぷう)、可愛くないですか!?」
「可愛いわけねぇだろ、アホか!」

グレイが、じとっ、とジュビアを見つめてそう言うと、ジュビアもなんだか今回は負けじとグレイの方を見て。

「グレイ様、ジュビア実はよく知ってますから、教えて差し上げますね。
プーっていうのは、さらに遠い国のファンタジーの物語に出てくる熊なのですよ?とっても可愛いのです。」
「だから、なんだよ。」
「そして、プーさんは、ハチミツが大好物なのです!」
「知るか!どーでもいいわ!」

2人の掛け合いは、まだまた続いていたが、この先の事を予想して、周りのメンバー達は、そろり、そろりと少しずつ距離を取っていく。

「えぇ!?可愛いのに…!
ジュビア、将来ぜひとも子供に、黄熊(ぷう)っていう名前を…」
「…だーっ!
だから!
なんっで、俺がそんな珍妙な名前を自分のガキにつけなきゃなんねぇんだ!
却下にきまってんだろ、アホか!」
「えぇ〜そうなんですかぁ…」

ジュビアがシュンとして頭を垂れている横で、グレイはもう一度ペシッとジュビアの頭をはたいて。

「だいたい、普通でいったら、色だろ色。
そっから、名前を考えるのがセオリーじゃねぇの?」
「色、入ってます!」
「俺とおまえのどこに、黄色の要素があんだよ!」
「うぅ、まぁ、それは、そうですけど…!」
「黒とか蒼とか、灰色とか水色とか、その辺だろ、普通。」
「あぅ、そそ、そうですよね…!」

ジュガーンと、音が鳴りそうな勢いで、ジュビアがまたガックリと俯いた。
それを見て、ヤレヤレって顔で苦笑している、グレイを遠巻きに見つめて。



「……ねぇ。
グレイ、自分の発言に気づいてるの?
それとも、馬鹿なの?」
「…気付いてねぇんだろ、馬鹿だから。」
「……ま、残念なことに、ジュビアも気付いてないけどね。」
「うぅっ、ジュビア、おしい!
なんで気付かないかなぁ…!」
「……アホとアホで、お似合いなんじゃね?」
「……ガジル、教えてあげなよ。」
「は?なんで俺様がそんなめんどくせぇ事しなきゃなんねぇんだ。」

思わずそんなふうに会話をしながら、遠巻きに2人を見つめる。
幸か不幸か、こちらの声はどうやら聴こえてないらしい。
やれ、瑠璃色がどうの、翡翠がどうのと、2人は今度は色談義で、白熱を始めたようだ。

鈍感似たもの同士の2人には、もう勝手にやってもらおう。

見ないふり。
気づいてないふり。
それが、フェアリーテイルの暗黙の了解。


「……はぁ。しかしあの分じゃ、上手く行くのはいつになることやら。」
「知るかよ、ほっとけ。」







〈2〉大学生な風景 ~同窓会



「同窓会、ジュビアわくわくします…!」

なんて、にこにこと楽しそうに、ジュビアが笑った。
その、無邪気にあどけなく笑う様子に、心の中で盛大に舌打ちする。

一学年下の彼女は、明日の久しぶりの高校の同級生達との再会を楽しみにしているようだ。

ルーシィに、レビィ、リサーナにユキノ。
そりゃ、久しぶりに皆が揃うのだからきっと楽しい時になるだろう。

フワフワと笑うジュビアは可愛いけれど、こうして一緒に暮らしてて、こんなにコイツを独占していても、ほんの少し面白くないのは事実で。


ああでもない、こうでもない、と、俺の目の前で、ジュビアは同窓会に着ていく服を一生懸命に選んでいる。

「グレイ様!
こっちと、こっち、どっちの方がいいと思います?」

ニコニコと笑ってそう問うてきたジュビアに、
「……別に、そんなに気合い入れなくてもいいんじゃねぇの?」と、素っ気なく返事を返した。

「えぇ?そんなことありません~!
だって、久しぶりなのですよ。
ジュビア、ほんの少しでもいいから「綺麗になったねぇ」って思われたいです!」

俺の返事なんてどこ吹く風で、キラキラした瞳でそう言ったジュビアは、うーん、と、悩んだ後で手に持っていたその服を置いて。
今度は、アクセの箱を覗きこみ始めた。

えぇっと……と呟いてピアスを耳に当てていたジュビアのその手を、後ろからそっと掴んだ。
そのまま、髪をかきあげて、耳たぶをゆっくりと食む。

「……っ、グレ……」

「……ムカつく」

一言そう言って、そのままジュビアを腕の中に閉じ込めた。
細いその顎をもちあげて、唇を合わせる。
つつっ、と、撫でるように腰に指を這わせたら、ビクッとジュビアの身体が揺れて「……やっ…」と吐息を零したから。
その隙を狙って、舌を差し入れながら、こちらを向かせて、正面から抱き込んだ。
ゆるゆると、口内を蹂躙してやると、ジュビアの身体からどんどんと力が抜けていって。
自分では立っていられないとばかりに俺にしがみついてくる。

……ムカつく。
服なんて、何だっていい。
むしろ、なんでそんなに気合いいれなきゃなんねぇんだ、野郎どもだって来るんだろ。

そっと唇を外して、何かを言いたそうにこちらを見つめてきたジュビアの手を引く。

そしてそのまま、二人してベッドに倒れ込んだ。
両の手首を縫い止めて、首筋に唇を這わす。

「……っ、グレイ様、待って…」

身体を、ビクリと震わせてそう言ってきたジュビアの目元にキス。
鼻筋にも、耳元にも、それから、首筋にも。

洋服選びを中断させられて、少しばかり恨みがましい瞳でジュビアが可愛く俺を睨みつけて、くる。
どうやら、このまま喰われる事は、もうわかっているらしい。
諦めが肝心なのは、日々教え込んでいるからな。
よく出来ました。

こればっかりは、仕方ない。
とにかく、俺をムカつかせた、お前が、悪い。







結局朝まで、ジュビアをひとりじめして抱きしめて眠ったその翌朝。

洋服選びは、昨晩と違って、すんなり最速で終わった。
まぁ、着れる物が限られてしまったのだから、当然だが。

「うぅ、ジュビア、ほんとはこっちが着ていきたかったのに、残念です…!」

恨みがましい目で、じとっとオレを見つめてジュビアがそう言った。

「…はぁ?……何言ってんだ。
加減してやった、つの。」
「加減!?
こんなに、こんなに、痕がついてて、そんなこと言います!?」

ジュビアは、キッパリとそんなふうに文句を言ってくる。

何を言うか、と心の中で、大きくため息をついてやった。
ほんとは、もっともっと見えるとこにくっきりはっきりつけてやりたかったのを、一応我慢してやったんだぞ、と。

ドレッサーの前に座っているジュビアに向かってそっと足を進めた。
鏡越しに、じとっと、こちらを見てくるその顔にふっと笑みがこぼれる。

くしゃっと、その水色の髪に手を入れて、その頭を撫でてやった。

「……ルーシィや、レビィ達と、いろよ?」

「はい?」

「その辺の奴らとだけ、喋ってろ、ってこと。」

どういう意味なのか分からなかったのか、ジュビアがキョトンとしてコチラを覗きこんでくる。

コイツのこういう無邪気なとこが、とんでもなく心配なとこで、とんでもなくムカつくとこで。
……そして、とんでもなく愛しいと、そう思う。

きっと、ルーシィもレビィも似たような状況かもな、と苦笑する気持ちが湧いてきた。
どうせ、ガジルもナツも、面白くないと思っているに違いない。

「…終わる頃に、迎えに行ってやるよ。
そのあと、6人で飲めばいいんじゃね?」

虫除け、そして、まさかのお持ち帰り防止のために。
奴らもきっと来るはずだ、との確信を込めてそう言ったら。

「……6人??」

そう言って、ますます解らないという顔をしたジュビアを見て、クソやっぱ可愛いと思った俺は結局負けっぱなしなのだと、改めて思った。







〈了〉






ちょっとした、二人の風景をまとめてみました。

お馬鹿なグレイ様、そして、独占欲なグレイ様、の2本立てです。


プチ・フール。
小さなお菓子を詰め合わせで。

スイーツ大好きなハルハルへの、微甘のプレゼントです。
(こんなんで、ごめんね。苦情返品、いつでも受け付けます…!)