glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑮

グレジュビ短編。
『ことのは』シリーズ ⑮

ヤンデレグレイのお話、です。
暗いです。

レビィちゃん視点。

途中まで書いて放り投げていたものを、改稿して供養。あの、いつも以上に・・・な出来です…(遠い目)


では、どうぞ。









「行かなくていい」

そう言い放ったグレイに、ジュビアが大きく目を見開いた。

「必要ない」

そう言って、依頼書をリクエストボードから引きちぎって破り捨てる。

「……!ちょっと、グレイ…!
なんで破っちゃうのよ!」
「……あ?」
「あ?じゃないわよ!
他の誰かが受けるかもしれないでしょうが!」

ジュビアから奪い取った依頼書を破り捨てたグレイに、側にいたエバーグリーンがそう怒鳴りつけた。

エバーグリーンの言う事は、確かにその通りで。
キッとグレイを睨みつけて、怒りを顕にしている。

「……あぁ、わりぃ」

グレイは、一応はそう謝ったものの、実際にはエバーグリーンの苦言なんて、意にも介してないのは明らかだった。
そして、そのまま、ジュビアの手首を無理矢理に引っ掴む。

「……っ…ぃた」

「帰るぞ」

グレイはそう言って、強引にジュビアを、引っ張る。

「グレイ様…!
あの、あの、ジュビア、お仕事を……!」

グレイに手を取られたジュビアは、困り果てた顔でそう告げながら、それでもグレイに逆らえずにそのまま手を掴まれたままに、ギルドから連れ出されて行った。

呆然とその様子を見送っていたカナとリサーナが、大きく1つため息をつく。
この3週間、どんどんとエスカレートしていくその光景に、ギルドの誰もが心に燻ぶる想いを抱えていた。

「……、っていうか、いい加減こっちがキレそうなんだけど!!」

我慢出来ずにそう叫んだのは、ルーシィだった。
その気持ちも痛いほどわかる。
勝手がすぎるとは、まさにこのことだ。

「自分のこと棚に上げて、なんなのよアレ」

そのセリフをルーシィにぶつけられたナツも、なんとも言えない顔で無言を貫いている。
ルーシィがそう言うのももっともな話だ。
だって、彼女達は実際に見たのだから。
半年間、グレイを待ち続けていたジュビアを。
村の名前を変えてしまう程に、雨に打たれて待ち続けるしかなかったジュビアを。

ギルドが完全に元に戻って、そして、あの西の大陸からの死力を尽くした全面戦争を終えて、数か月の時が過ぎた。
立て続けに起こった様々な困難を皆で乗り越えて、やっと手元に戻ってきた自分たちの家。家族。
ガジルとリリーと共に評議院に入って過ごした日々の中でも「いつかはまた…」という微かな希望を捨てきれずにいた、この大切な家族を私達は取り戻した。

ギルドが解散して、皆が散り散りになっていたその間。
グレイとジュビアは、半年間も2人で一緒に暮らしていた。
なのにグレイは、一言も連絡もせずにその後半年間もジュビアをその家に置き去りにして、アヴァタールに潜入して捜査をしていた。
ジュビアは、身も心もきっとボロボロになっていただろうに、一応はすまなそうにはしていたもののキチンと謝りもせずに戻ってきたグレイを、いとも簡単に許してしまった。
グレイ様が無事なら、それで、それだけでいいのです。
そう、言って。
「同居」なのか「同棲」なのか、はっきりしない2人の関係。でも真実が何かなんて関係ない。
たとえ、ただの兄弟でも友達であったとしても。
自分の同居人が半年も帰ってこなかったら、誰だって心配する。
ましてや、あんなにグレイを一番に想っているジュビアのことだ。
その心労たるや、高熱でぶっ倒れる位に、身も心もちぎれそうになっていた事は明らかなのに。
それでも、ジュビアはグレイを笑って許した。
なのに。

「自分がやったこと、思い出してみろっていうのよ!
なのに、いざ反対の立場になったらあの態度。
信じられない」

ルーシィの苦言はまだまだ終わりそうもなかった。



『この闘いが終わったら答えを出す』

大陸との決戦前夜に、グレイがジュビアに言った一言らしい。

そして、戦いが、終わって。

結局、どんな結論になったのか、一体グレイがジュビアになんと言ったのか、それはよくわからない。

ただ、2人の間では、納得のいく答えだったのだろう。
ジュビアの雰囲気が、落ち着いて柔らかく、なった。
グレイも、皆の前でベタベタするような事はなかったけれど、それでもジュビアを見つめる瞳が優しく温かくなった。
それまでだって、ギルドの皆から見れば。
パッと見はジュビアの一方通行に見えても実はグレイの方もいつもジュビアを気にしていたし、お互いに充分に相手を特別に想っている様にしか見えなかったけれど。
でも、そういう曖昧な部分が、フワリと泡のように溶けて、消えた。
それまで、ただジュビアに甘えていただけのグレイが、何かを真正面から見つめることを認めた、覚悟を決めた、そんな風に見えた。

そんな、2人の雰囲気が柔らかくなって、そして、ギルドが通常運転を始めてしばらくたった、そんな頃に。

事件は起こった。

ある日を境に、ジュビアが、2ヶ月間、どこに行ってしまったのか全く分からなくなってしまった、のだ。

勿論、ジュビアが何も無いのにそんな不義理を冒すわけはなくて。
ただ単に、それは実は仕事、だった。
居場所を知ってたのは、ガジルとエルザのみ。
グレイと同じように、とある仕事で潜入捜査の依頼を引き受け、グレイと同じようにある日突然、忽然と姿を消した。

ギルドの皆も口々に心配を口にして、焦ってジュビアの居所を気にし始め、探し始めたそんな中で。
グレイを纏うオーラが、少しずつおかしくなり始めたのは、ジュビアの居所が全く掴めなくなって半月を過ぎた辺りだった。

『長期の仕事にでも行ってんだよな?
一言くらい、誰かに何か言ってけっつの』

最初の数日に叩いていた軽口が、段々となくなっていく。
そのうちに、一切の連絡がないことに、目に見えてイライラとし始めた。
フラリとどこかに出かけては、また、苛つきを隠しきれずに戻って来る。
おそらく、というか、確実に。
あれは、必死でジュビアを探していたのだと、思う。


そして、1ヶ月を過ぎた頃から。

苛付きや不機嫌が鳴りを潜め始めたと同時に、グレイの纏う雰囲気が日に日に、冷たく冷ややかなものに変わっていき。
無言で2〜3日どこかに行ったと思ったら冷たい顔でギルドに戻ってくる。
そうして、黙ってお酒を煽りながら、自分の腕の黒紋をただじっと見つめていることが、多く、なった。

そんな様子のまま、その後さらに1ヶ月を過ぎて。

ジュビアが、やっと戻ってきた。

ガジルの腕に抱かれて、全身ボロボロに怪我をして。

その瞬間に、ギルドのメンバー全員が息を飲んだのは言うまでもない。
慌てて駆け寄った皆は、口々にジュビアを心配する言葉を発して、そして、ウェンディも、必死でジュビアを労わって治癒の魔法を施した。

見た目の壮絶さ程には、それほど深い傷ではなかったらしく、ジュビアはその日のうちにすぐに魔力も身体も回復して。
それから、皆に心配をかけたことを謝った。
自分が受けていた仕事についても、丁寧に説明してくれた。
誰にも言えない、調査の仕事であったこと。
無事、解決して、こうしてギルドに帰ってこれることになったこと。
本当はもっと早くに終わる予定だったのに、予定外に長引いてしまったこと。
その間グレイと会えなくて辛かったこと。

『やっと、やっと、グレイ様の所へ帰れる、と。
そう思ったら、ちょっとだけ油断をしてしまいました。
こんな怪我をして、ジュビア情けないです』

ペロッと可愛らしく舌を出したあと、そう言っていつものジュビアの笑顔で微笑んで。

それから、

『グレイ様ぁ〜、ジュビア、寂しかったです〜ぅ』

これもまたいつものジュビアらしく、グレイの腕に飛び込んで、ギュゥゥと抱きついてそう言った。

いつもと全く変わらないジュビアを見て、『あぁよかった』と皆が胸をなでおろしていた、そんな中で。

いつもと違ったのは、グレイの方、だった。

昔は、まるで何でもないことのように抱きつくジュビアを受け止めていたり、時には照れたり面倒くさそうにしてみたり(おそらくそれも照れ隠しのポーズだとは思うのだが)。
それから、2人の雰囲気が変わってからは、ただフワリと優しく微笑んで、当たり前のようにジュビアを受けとめていたり、していたのに。

抱きついてきたジュビアの肩を、グッと掴んだその後で。

まるで何かに怯えるような表情で唇を噛み締めながら、じっとジュビアを見つめた。
その、ジュビアの肩を掴んだグレイの手が、小刻みに揺れて震えていた。

『……グレイ様?』

そんなグレイを見て、キョトンとした顔でそう呟いたジュビアの、その声を聞いて。

グレイの目に、すっと蒼い焔が灯ったように見えた。
その蒼く冷たいオーラが、グレイの全身を覆っていく。

そして、無言でジュビアの腕を力任せに掴んだと思ったら、一言も発することなく、ジュビアを連れてギルドの奥、医務室の扉の方に向かって歩き出した。

『ちょっと、グレイ!』
『ジュビア、まだ、怪我が…!』

皆のそんな声をまるで無視して、グレイはその場からジュビアを連れ出して消えて行った。

そして、その日から。

ジュビアは、寮のジュビアの部屋にも戻ってはこなかった。
いや、戻ってこなかった、というのは、正しくない。
戻して、貰えなかったのだ。
グレイが、自分の部屋にジュビアを連れて行ってしまったから。

寮に戻してもらえない、だけではなかった。

事態はそんなことでは収まらず。

グレイは、ジュビアを自分の傍から、片時も離さなくなった。
中でもとりわけ、ジュビアの仕事に関しては、特に酷かった。
最初のうちは、マグノリアの中の小さなお手伝いのような仕事なら何かを押し殺したような顔をしながらも、しぶしぶ認めていたが。
ここ数日はそれも鳴りを潜め、ジュビアに、一切の仕事をさせようとしない。

一応は、朝、ジュビアを、ギルドには連れてくるのだが。
それも、どちらかというと、家に置いておくのが不安で仕方がないから、しょうがなく連れて来ているといった風にしか見えなくなってくる。

始めのうちは、グレイにされるがまま、特に不満そうな顔も見せずにグレイにくっついていたジュビアだったが。
ここに来てさすがに、段々と困ったような苦しそうな顔を見せるようになってきていた。

エルザが見かねて、グレイを思いっきり説教して、怒鳴りつけた時も。
ルーシィやカナが苦言を呈した時も。

グレイは、
『……あぁ。わかった、気をつける』
そう一言、誰の目も見ずに、小さくそう言い放っただけだった。

まさに、棒読み。
ただ、その場を収めるために一言そう言っただけだ。

……誰の、声も。
そう、ジュビアの声ですら。
今のグレイにはきっと届いていない。

変わり果てたグレイに、ギルド中が、戸惑い、呆れ、心配し、怒り。
そして、段々と、怖くなっていく。

今。
グレイの心の中を、黒く塗り潰すように占めているものは何なのだろう。

いや、ただ単に、愕然と気づいてしまったのかもしれない。
当たり前のようにいつも傍にあったジュビアを失うということが、どういうことか。
そして、今まで一度たりとも実感として考えたこともなかったその事実が、実は意外とそれこそ当たり前のように存在する事に--。


そんなことを考えていたら、なんだか視線を感じたので、ふっと顔をあげてみると。

ガジルが、なんだか困ったような途方に暮れたようなそんな瞳で、私の方を見ていた。

ガジルも最近、よくこういう顔をする。
彼は事情を知っていてグレイに黙っていただけに、もしかしたら色々な事に責任を感じているのかもしれない。
勿論、ガジル自身もエルザも、その2ヶ月間は碌にギルドに居なくて、何度か顔を出しに戻って来ていただけだったから。
その間のグレイの様子をそんなにちゃんと見ていた訳ではなかった。ましてやグレイも居ないことが多かったから、殆ど顔を合わせてもいないだろう。
ここまで、事態が拗れるとは、思っていなかったに違いない。

相変わらずの強面のその顔を僅かに歪めてじっと私を見た後で、ガジルはフッと苦笑した。
それから、ポンポン、と2回、その大きな手で、私の頭を優しく叩く。

「ガジル?」

ガジルの、どこか諦めたように苦笑するその表情の意味が掴めなくて、問いかけるようにガジルの名前を呼んでみた。

「……わからねぇでも、ねぇんだ」

ボソッと、ガジルがそう呟いた。
そうして、グシャグシャとかき混ぜるように、私の頭を撫でる。

「……ガジル?」

「……仕事、一緒に、行くか?」

「え?うん」

「こんなに、小せぇくせにな。
……デカすぎるのも、困りもんだっつーか」

「……?」

「……マジで、勘弁してほしいわ」

ガジルはそう言うと、最後にもう一度、ポンと私の頭を小突いた後で。

ヒラヒラと後ろ手に手を振って。

ゆっくりと、リクエストボードの方に向かって歩いていったーー。








〈 了 or 続 ?〉










【後書き】


絶賛病みグレイ様、降臨・・・!

ごめんなさい、私の趣味全開。
病み愛、束縛愛、も、読んだり書いたりする分には好きです・・・もちろん最後にはハピエン推奨。
現実には、自分に降りかかると『無理』ってなりますよね(苦笑)

ナツ、ラクサス、ガジルは、途方に暮れたような顔をしながらも、どこかにグレイを理解できるところがあって、今は黙って見てる感じですかね〜
まぁ、そのうちに、きっとナツあたりが、1発グレイの目を醒まさせてくれるかもです。

そして、この続きを書いたら、完全なる束縛愛のR物になるので、一旦ここで止めよう・・・(理性)