glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

この言葉を…<幸せの色>

本編の続き、おまけのグレジュビです。

ちなみに『出来てた』方です。

苦手な方は、ご注意くださいね。

  

*****

 

この言葉を…<幸せの色>

 

 

 

「遅いわねぇ、ジュビア」

 

今日は、ジュビアと駅で待ち合わせをしている。

エルザと私とジュビアとの3人で仕事に行くためだ。いつもは必ず、きちんと時間よりも前に来ている彼女にしては珍しい遅刻。

ま、どうせ、理由は決まっているけれど…。

 

「仕方ない。

…どうせ、奴のせいだろう。」

 

横のエルザも、呆れたような軽いタメ息をついている。

そんなことを言いながら、待つこと少し。

通りの向こうの方から、ジュビアが焦って歩いて来るのが見えた。

 

「おっ、来たか。」

 

「…あー、ほら、やっぱり送ってきてる。」

 

予想通りの展開に、私の眉はへにゃりと下がった。そして、やっと私達の元にたどり着いたジュビアは、

 

ルーシィ、エルザさん、

ごめんなさい!」

 

少し息を切らせながら、ホントに申し訳なさそうにそう言った。

 

「いいのよ。たった15分じゃない。」

「そうだな。それにジュビアのせいじゃないことは解っているし。…どうせ、コイツのせいだろう?」

 

そう言ってエルザは、不機嫌そうにジュビアの横に立っているグレイを指さした。

 

 

 

***

 

 

 

「「…けっ、けけ結婚~!?」」

「「誰が、誰と!?」」

 

「俺が、ジュビアと。」

 

あの日、突然ジュビアの手を引いて現れたグレイの爆弾発言に、ギルドの中は騒然となった。

 

「な、なんで!?

何がどうなって、急にそんなことになんの!?」

 

中でも私とエルザの驚きは半端なかった。

何!?その急展開って感じ。

 

「…あー、まぁ理由はいろいろあんだけど。」

 

グレイはそう言って、そっとジュビアの背を押して、カウンターのスツールに座らせた。

そうして、カウンターの中で静かにその喧騒を見守っていたミラさんに向かって、

 

「ミラちゃん、コイツの話、聞いてくれたんだってな。…ありがとう。」

 

穏やかに微笑んでそう言った。

 

「ふふっ、イエイエ」

 

「…で、こいつ、当分仕事は休ませるから。

指名の依頼とかが入っても断ってくれるかな。」

 

「…あら、じゃあ、やっぱり?」

 

「…ん。いたわ。ちゃんと。」

 

グレイが、前髪をいじりながら、少し恥ずかしそうにそう言った。

そんなグレイを見て、ミラさんは

 

「…グレイ。おめでとう、って、言っていいのよね?」

 

まるで、魔人ミラジェーンを彷彿とさせるような、少し挑むようなほほえみでそう聞いた。

 

「勿論。」

 

グレイも、しっかりとミラさんの目を見つめてそう答える。

 

「…こうなったから、結婚するってことなのかしら?」

 

「…いや。まぁ…、それが直接の原因ではあるけど、

でも、一番の理由じゃねえ。

…マスターにも、ちゃんとそう言ったよ。」

 

グレイが、ミラさんの迫力に退くことなく、キッパリとそう答えると。

 

「ふふっ。…合格ね♡

 

おめでとう。ジュビア。」

 

 

グレイの台詞を聞いたミラさんは、心底嬉しそうに微笑むと、ジュビアに向き合って優しくそう言った。

 

「…あ、ありがとうございます…///」

 

「ちょっと、ちょっとまって!

どういう事!?

いた、って何が!?

なんで、ジュビアが仕事休むの!?」

 

私の頭の中は、もう???の連続で、話もさっぱり見えない。

 

「ちょっとグレイ!説明しなさいよ~!」

 

「…あー、もぅ。うるせぇな、ルーシィ。」

 

グレイは面倒くさそうにそう言うと、ジュビアのお腹を指さして、

 

「…ここに、子供がいんだわ。」

 

と、またしてもとんでもないことを、イケしゃあしゃあと言ってのけた。

 

それから後のギルドの中の喧騒といったら、それはもう筆舌に尽くしがたいものだった。

 

カナは「あー、やっぱりね。なーんか怪しいと思ってたんだわ。」と言い、エルザは「なんという事だ、グレイ!貴様っ」と顔を真っ赤にしている。私はと言えば、もうプチパニックの連続で、理解が頭をついていかなかった。

いつの間に、付き合ってたの!?

それどころか、いつの間にそんな関係に!?

でも、私がびっくりして口をパクパクさせているというのに、周りではエバもシャルルも「やっぱり付き合ってたのね」とか「まぁ、そうなのかなとは思っていたけど」とか口々に言っている。

 

「ちょっと、ちょっと待って!

もしかして、全然気付いてもいなかったのって私とエルザだけ!?」

 

確かに、ここしばらくジュビアがグレイを避けてるっぽい事には気付いていたし、それが原因でグレイが日に日に不機嫌になっていくのももちろん解ってたけど。

 

「まぁ、ルーシィはしょうがねぇよなぁ。

馬鹿だから。」

「あい」

 

隣でナツが、カカカと笑ってそう言った。

 

「ちょっとナツ!あんたにだけは言われたくない!」

「馬鹿言え。俺はちゃーんと気付いてたぞ。」

「うそおっしゃい。そんな訳ないわ。」

 

私が自信たっぷりにそう言うと、ナツはこれまた平然ととんでもないことを口にした。

 

「ホントだって。…ジュビアの身体から、しょっちゅうグレイの匂いがしてたし。

特に、何日か仕事で会えなかったりした次の日の朝なんかは、立ちこめるほどキョーレツな…」

「キャーー!なっ生々しい事言わないでよ!

信じられない!」

 

私が耳を覆ってそう叫ぶと、あろうことか今度はレビィちゃんまでが納得顔で、

 

「…あぁ、だから、ガジルも言ってたんだぁ。

私が二人の事を心配してたら『…まぁ、上手くいってるニオイがするから大丈夫だろ』って…」

と、とんでもないことを口にした。

 

「ちょっ…やだ!レビィちゃんまで何てこと言うのよ!

ウェンディ、聞いちゃダメぇ~!」

 

こんな感じで、ギルドの中は、それはもう上を下への大騒ぎとなった。

 

 

 

そして、それからというもの、グレイの日常は天地の如く一変した。

毎朝、寮までジュビアを迎えに行って、帰りは送って帰る。

そうこうしているうちに、二人で住む家をあっという間に見つけて契約してきたかと思うと、直ぐにフェアリーヒルズからジュビアを連れて出て、一緒に暮らし始めた。

 

自分が仕事に行く時には、必ず誰かギルドのメンバーにジュビアの事を託していく。

 

お医者様からは『元気なら仕事もしていい』と言われたので、ジュビアがリクエストボートの前で仕事を物色していると、必ずいつの間にかグレイが横に立っていて、あーだこーだと言い合いをした挙げ句に、シュンとしたジュビアを連れて戻ってくる。

そして、本当に時々ジュビアが仕事に出かけるような時には、必ず付いて行って送迎しているようだ。(というよりは、自分が一緒に行ける時しか許可してないと言うのが正しい。)

 

まぁ、確かに、自分の事は二の次なジュビアだから。

仕事となるとけろっとして無理をするし、どんなに体調が悪くても、決して口にしない。

そんなジュビアだから、グレイもそれだけ心配症になってしまうのだろう。

わからないでもないが、それにしても過保護が過ぎる。と、私やカナは日々言い合っていた。

そんなグレイを、ナツやラクサス、エルフマンなどの男性陣は、さも当然だとでも思って見ている様子で、これといって意見を差し挟むような事はない。ガジルも時々呆れ顔で『イカれてるぜ』と呟いていたりはするけれど、特に異論を唱えたりはしなかった。

 

でも。

 

「…ジュビア、一人でも、お仕事大丈夫なんですけどね…

なんだかグレイ様に負担をかけてるのが申し訳なくって…」

 

ジュビアが、苦笑しながら困り顔でそんな事を言うのを聞いた私とエルザ、カナ、レビィちゃんの女子組は、グレイのあまりの過保護っぷりに業を煮やして、今回ジュビアを連れて私達だけでクロッカスでの仕事に出かける事にしたのだ。

ぶつぶつと難色を示すグレイはエルザが一撃の鉄槌で黙らせた。

その後は、ミラさんが悪魔の微笑みでグレイに別口の仕事を押し付けたので、ジュビアは久しぶりにグレイと別々に仕事に出かけることになった。

 

クロッカスでちょっとした会議に出た後は、

美味しい物を食べて、楽しいガールズトークに勤しむ。

そうだ。リュウゼツランドにも遊びに行こう。

ジュビアも、キラキラと目を輝かせて、

「ふふ、素敵ですねー!」

と楽しみにしている様子だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

「…もう~!

いつまで不貞腐れてるのよ。グレイ」

 

「…別に、不貞腐れてなんかねぇ。」

 

「嘘ばっかり。そんな顔してよく言うわ。」

 

ジュビアを待ち合わせの駅まで送ってきたグレイは、やっぱり何とも不機嫌な顔をしてそう言った。

 

「そうだぞ。グレイ。お医者様も、ポーリュシカさんも、ビスカも、元気なら動いてる方がいいんだと言っていただろう。

いい加減、納得せんか。」

 

エルザがガツンとそう言うと、

 

「…っせーな。…わかってるよ」

 

拗ねた顔でプイッとグレイが横を向いた。

ホント、子供みたい。笑っちゃうわ。

 

「グレイ様。大丈夫です!

ジュビア、きちんと頑張ってお仕事してきます!」

 

グレイの心配はそんな所じゃないことをわかっているのか、いないのか…。無邪気に胸の前で握りこぶしを作って、ジュビアが宣言している。

こんな風に天然な彼女は、ホントに可愛いと思う。

 

「…おぅ。ま、行ってこい。

ただし。絶対に絶対に無理はしないこと。

わかってるよな?」

 

ジュビアの水色の髪に手を入れて、くしゃっとかき混ぜながら、ゆっくりと確認するように、グレイが言う。

 

「はい!大丈夫です。

ジュビア頑張りますね!」

 

するとジュビアが、またしてもピントが合ってるのかズレてるのかよくわからない返事をした。

グレイの眉毛が、へにゃりと下がる。

 

「ジュビア、切符の確認をしてきます!」

 

ジュビアはそう言って、いそいそと駅のカウンターの方へ移動していった。

 

グレイは、それをじっと見つめた後、

ゆっくりとこちらを向いて。

 

ルーシィ、エルザ」

 

力のこもった声で、私達を呼んだ。

 

そして、

 

「……よろしく、頼むわ。」

 

そう言って、静かに頭を下げた。

 

その姿に私達は大きく目を見開いた。

 

なんて温かくて、

そしてなんて力強い姿だろう、と思った。

 

ジュビアを大切に想うということ。

彼女の人生を受け止めて生きるということ。

そんなグレイの気持ちが、しみじみと私達の心に流れ込んで来るような気がした。

 

「…任せておけ。」

 

エルザがしっかりとグレイの瞳を見つめて、緩やかに微笑みながらそう言った。

それを見て、グレイがホッとしたように息をつく。

 

「グレイ様~!」

「おう。確認出来たか?」

「はい。」

 

ジュビアが満面の笑みでグレイの前に歩みよると、グレイがまたジュビアの髪にくしゃっと手を入れて、「よかったな」そう言いながらワシャワシャと頭を撫でた。

 

「もう、グレイ様。

髪型がぐしゃぐしゃになってしまいます~」

 

「…向こうに着いたら、ちゃんと連絡すること。

…それから、昨日みたいに、高い物取ろうとして、はしごに昇ったりするのは言語道断だからな。…それから…」

 

延々と続くグレイからのお説教を、ジュビアがポカポカとグレイを殴ってみたり真っ赤になって焦ってみたりしながら、ホントに幸せそうな顔で聞いている。

二人から、温かな空気が雪崩れ込んでくるような気がした。

とっても綺麗な、幸せの色をした空気。

 

「…うーん、やっぱり、

ちょっと羨ましいかも。」

 

私が、ぼそっ、とそう言うと、エルザも

 

「…だな。」

 

と呟いた。

 

目の前で、当の二人はまだなんだかんだと言い合いながら笑っている。

 

それを見ながら私達も、

二人して肩をすくめた後で、目を見合せて笑いあった。

 

 

 

 

〈了〉

 

 

 

 

 

 

 

°○゜

 

∞∞後書き∞∞

 

 

 

オマケのストーリーまでお付きあい頂き、ありがとうございました。

ドタバタ&ほのぼの系を目指した筈が、何故かやっぱり甘くなってしまうという罠……

 

朝、グレイが『もう一枚ピザトーストが食べたい』などとごねて引き延ばし作戦に出たものだから、ジュビアが慌ててもう一枚作るだけ作って『じゃあジュビアは行ってきますからグレイ様はゆっくり食べてて下さいね!』なんて発言して一人で出て行こうとしたものだから、結局焦ってグレイが『ちょっと待て!俺も行く』って追いかける羽目に……的な朝の風景もありましたが、入らなかったので、後書き追加で(笑)

 

ではでは、

ここまでお付きあいくださってありがとうございました。