glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

ことのは ⑨

グレジュビ短編『ことのは』シリーズ⑨

すごく久々に、ことのは。
⑥の続きです!

書きたいもの一杯あるのになぁー。なかなか。

ではどうぞ。








「てかさ、合コンって一体どこと?」

リサーナが、思い出したようにそう尋ねた。

そうだよな。
そもそも、一体何処のどいつが「合コン」なんて言いだしやがったんだ。

「…ん?あれ?言ってなかったっけ?
猟犬、だよ。ケルベロスの奴らが、合コンしたいって言い出してさ。」

カナは、カードを覗き込みながら、ケロッとした様子でそう言った。

四つ首の猟犬(クワトロ-ケルベロス)、あいつらか!
まぁ、男臭さMAXのギルドだし、そういう話が出てもおかしくは、ない。
ないが!

俺が憮然とした表情を浮かべる横で、リサーナの話はどんどん進んでいく。

「なるほど、猟犬かぁ。」
「うん。こないだ、バッカスと飲んでてさ、そういう話になったのよ。
なんか、ケルベロスの中の一人が、大魔闘演武のジュビアを見て、ファンになっちゃったんだってー。」
「へぇ〜!」

わかるー。ジュビア、可愛いもん!
と、リサーナはニコニコ笑いながらレビィに向かってそう言った。

「だよね。」

レビィも目を三日月型に緩めながら、ちらっとコチラを見てからそう答える。

......なんだよ!?
その、何かを含んだような目は!

くそ、コイツも、何か聞いてやがるな。カナから。

「ジュビアに、合コン一緒に行ってくれない?って頼んでみたんだけど、なんだか乗り気じゃなくてさ。」

「ジュビアは、お出かけするならグレイ様がいいのです。」

「なので、交換条件出して、勝負に持ち込んだって訳」

カードを覗きこみながら間髪入れずにそう返事をしたジュビアを横目で見て、カナが、肩を竦めてそう続けた。

乗り気じゃないなら、無理矢理連れてこうとすんなっての!
大体、合コンなんて、合コンなんて...

「あ、そうだ!」

俺の思考を邪魔するように、カナがまた口を開く。

「ジュビアが負けて、マジで合コン行くことになったら、アンタたちにも付き合ってもらうからねー、
ルーシィ、レビィ、リサーナ」
「...え!?」
「私達も!?」
「向こうは出来たら、4〜5人がいいんだって〜。
はい、よろしくー。」

カナは、ニヒャリと嘲笑ってそう言った。

その瞬間。

テーブルの周りを囲んで、ただの野次馬と化していた一角から、剣呑な空気が漏れ出した事を、俺は見逃さなかった。

カナの真後ろに陣取っていたガジルが突然徐ろに立ち上がる。
かと思うと、そのままジュビアの横に座っていたマックスを押し退けて、その席にドスンと腰を据えた。

「...おい、それじゃねぇ。
こっちだ。」
「ガジルくん?」
「...こっちの、カード、これを捨てろ。」

突然ジュビアの援護を始めたガジルに向かって、カナが
「ちょっと、ガジル?」
と、突っ込んでいたが、ガジルの野郎は何処吹く風だった。

ナツの野郎も、静かにカナの背後に回ったかと思うと、なんだか口をパクパクさせている。

......くっ、こいつら...。

滅竜魔道士の二人は、突然タッグを組んで、どうやらジュビアを援護することにしたらしい。
俺達の耳にはナツが何を言ってるかは聴こえてこねぇが、おそらくガジルには聴こえているのだろう。
ジュビアのカードを見つめながら、あーだこーだと口を出している。

てか、このままだと、ジュビアが勝っちまうじゃねぇか!

と、なると、アレを、アレをバラされてしまうということで......。

「おい、こら、てめぇら。
突然なにジュビアの味方についてやがんだ。」

真横から突っかかるようにガジルにむかってそう唸った。

「...はぁ?うるせぇな、なんだよ?」
「うるせぇな、じゃねんだよ。
急に口出してきやがって。
ジュビアが、勝っちまうだろうが!」
「あぁ!?それに何の問題があるんだよ。
俺達ゃ、別にテメェの秘密がバレようがどうしようが知ったこっちゃねぇんだよ!」
「...つか、テメェに関係ねぇだろが!」
「アホか!合コンなんて行くことになったら大事だろうが!ちょっとは考えろ、馬鹿氷!」
「テメェ、喧嘩売ってやがんの...」

「あああ!!もう!
グレイ様もガジルくんも黙って!」

後ろでヒートアップを始めた俺達に向かって、ジュビアが、キレた。
と、同時に、頭の上からバシャリ、とバケツ一杯分位の水が降ってくる。
まさに、水も滴るいい男?なんて、冗談を言っている場合ではない。

「ジュビアの真剣勝負を、ジャマしないでください!」

目線をきっと、カードに見据えたまま、ジュビアは切って捨てるようにそう言った。

「...オマエなぁっ...勝たせてやろうとしてんのに!」

ガジルが、ジュビアの頭をカツンと叩いてそう言うと、
今度はカナがニヤリ、と笑った。

「...っていうかぁ、なんで、ガジルに関係あるわけ?
なんで、合コンなんて行くことになったら大事なのかな?」
「......っ。」

カナが、ガジルの言葉尻を捕まえてニヤニヤと笑いながらそう続けると、ガジルが、うっ、言葉に詰まった。

馬鹿が。
墓穴を掘ったのは、テメェだろ。

お前は、ただ単にレビィを合コンに引っ張って行かれるのがイヤなだけだろ、わかってんだぞ、コラ。

「...んでぇ、ナツは一体そこでナニしてんのかなぁ?」

ぐるん、首を後ろに回して、カナは今度はナツに向かってそう訊いた。

桜頭は、フイ、っと横を向いてピューと口笛を吹き始める。完全にしらばっくれることにしたようだ。

「フフフ、まぁ、あんたたちがそうやってイカサマをするって時点で、もう、私の勝ちで決まりだけどね?
そうだよねー?ジュビア」
「ジュ、ジュビアは、イカサマなんてしてません!」
「でも、ほら、コイツらがさぁ〜。
ふふーん、もうコレは合コン確定で決まりだね?」

ニヤニヤと笑ってそう言うカナに向かって、ジュビアは、
「いいえ!まだ、負けてませんっ。
ジュビアは、ジュビアは、グレイ様の秘密を教えてもらうのです〜!」
と、息巻いてそう言った。

だから。
その、秘密とやらは、もういいって......。
そんなことより、合コンだ、合コン。

確かに、癪に触ることこの上ねぇが、ガジルの言う事にも一理ある。
と、いうか、二理も三理もある。

「カナー。ミラ姉は、なんでメンバーに入ってないの?
エルザは?」
「んー?
相手の決まってる奴は、ダメでしょ?一応。」

リサーナの問いに、カナは笑顔でそう答える。

「っつうか、ミラはダメなんだって〜。
ラクサスから、却下された。」

ちゃんとした「彼氏」からダメだって言われたら、流石に連れてけないよね〜あはは、と、カナはチラリと俺達3人の方を見ながらそう言った。

......クソ、こいつ、マジでムカつく...!

俺は、大きく肩を落として、ハァ、とため息をついた。

ガジルとナツの、視線も痛い。
なんだよ、お前らだって、同じ穴のムジナだろ。

ただ、現実として、カナと勝負を繰り広げているのはジュビアだ。
そして、なんだか知らねぇが、猟犬の奴から直接指名を受けているのも。
...ったく、何処のどいつだよ?
その辺は、後でキッチリと、カナに口を割らせなければ。
そして、二度とそんな馬鹿げたご指名が出来ねぇように、しっかりとそいつの身体に叩き込んでやらなければならない。

それは、ともかく。

とりあえず、ここは、俺が、なんとかしねぇといけない所らしい。

アイツらの「さっさと動け、この馬鹿」とでも言いたげな視線に怒鳴りつけてやりたい気持ちをぐっと堪えて。



「......ジュビア」

ジュビアの名前を呼んで、後ろからそっと腕を引いた。

「グレイ様?」

そうして、そっとその手からカードを取り上げる。

「あっ、グレイ様、何を......」

「......教えて、やるから、俺が。」

「...えっ?」

キョトンとするジュビアに向かって、苦笑いながら。

「......その、カナの言う、俺の、秘密?
俺が、教えて、やるから。」

そう言って、ゆっくりとジュビアの腕を引いて立たせる。

「...ググググレイ様?」

「ってことで。
ここじゃ、無理だから。
...行くか。」

「行く?行くってあの、どこに......」

「...あぁ、...俺の、部屋?」

「...えっ?」

キョトンとしているジュビアの手を引いて、その場から連れ出す。

ふっと後ろを振り向くと、何がなんだか分からないという顔で、ジュビアが、慌ててワタワタと俺の後をついて来ていた。
その向こうに、にっこりと嘲笑ってヒラヒラと手を振っているカナの顔も見える。

これで、満足なんだろ...!クソ女め。


「あの、あの、グレイ様?」

ジュビアは、相変わらずアワアワとしながらも、黙って俺に腕を引かれてついてきてくれていた。

こんなに無防備に、キョトンとした顔で男に手を引かれるようじゃ、危険極まりないじゃねぇか。
そこのあたりも、きちっと、説教たれなくてはならない。
他の男にこんなことされようものなら、それこそ、バケツ一杯じゃすまねぇ激流で流してやってくれて構わないのだから。

「......おまえが、悪い。
家についた後のことは、責任とれねぇかもしれねぇから、そのつもりで。」

「......は?」

相変わらずキョトンとしたままのジュビアを連れて、
帰ってきたばかりのギルドを、後にする。

......そういや、飯も食ってねぇじゃん。

まぁ、いいや。

途中でなんか買って、ジュビアと一緒に部屋に帰って。

それから、......それから。


赤くなる頬と、浮き立つような心臓の音とを必死に隠しながら後ろのジュビアを振り返ると。

ジュビアは、俺をじぃっと見つめた後で、

パァァ、と溢れるような、

とんでもなく可愛い笑顔で、微笑んだ。







(......っ、クソ、だから、その顔、やめろって…!)






【後書き】


追い詰められてやっと動くことに。

おせぇ…w