glazed frost

FTのグレジュビ、OPのサンナミをこよなく愛するブログ。

この言葉を…③

グレジュビ、この言葉をシリーズ③です。

グレイ視点とジュビア視点、切り替わって進んでいきます。

 

*****

 

この言葉を…③

 

 

 

飲んでいたバールを出たのはちょうど夕方前だった。酒も大分入ってはいるが、頭はこれ以上ないくらいに冴えている気がする。まずは、何処に向かうのが確実か……

とりあえずはギルドか。

もしかしたら、ジュビアが戻っているかもしれないし、戻ってなかったとしても、ジュビアの受けたという仕事の内容を確認して、情報を得よう。

それから……

 

頭の中で冷静に考えをまとめてから、まずはギルドに向かったが、やはり予想通り、そこにはジュビアの姿はなかった。

 

ミラちゃんが言うには、戻りは今晩か明日、だったな。

 

そんな風に考えていると、珍しくカウンターに入っていたカナから、朗報を手に入れた。どうやら、ジュビアの行っていた仕事先から、任務完了とお礼の連絡が入ったらしい。

聞いてみると、場所もそんなに遠くはない。

ならば。

少なくとも今日中には戻ってくるはずだ。

 

一瞬考えた後ですぐに踵を返してギルドを出た。

フェアリーヒルズで待ち伏せるのが、一番地道かつ確実な気がした。

エルザにでも見つかったら相当ヤバいよな。

なにしろ男子禁制の女子寮だ。

 

だが、そんなことはもうどうでもよかった。

 

必ず、掴まえてみせるからな。

覚悟しろよ---

 

 

 

 

***

 

 

 

「よぉ」

 

フェアリーヒルズの門の中、木幹にもたれて、じっとジュビアを待って1時間ほど。

ゆっくりと俯き加減で帰ってきたジュビアの顔を見た瞬間、膨れ上がる気持ちをぐっと抑えて、口をついて出たのはそんな言葉だった。

いつもの待ち合わせかよ!と自分で突っ込みたくなるほどダセぇ言葉。

 

「……グレイ様っ…?」

 

弾かれたように振り向いたジュビアは、これ以上ないくらいに目を見開いて俺を見た。

 

やっと、会えた--。

 

会いたくて会いたくて、顔を見たくてたまらなかった。

こんなにも渇望したことなんて、今まであっただろうか。

 

 

「…グレイ様っ、あのっ、

…どうしてこんな所に…?」

 

本当に吃驚したのだろう、胸の前でギュッと手を組んで震える声でジュビアが訊ねてきた。

 

「どうして…って」

 

少しずつ、ゆっくりと。

ジュビアに近付きながら息を吐き出す。

ぐっと距離を詰めるとジュビアが一歩後退さったから。

焦燥感そのままに、腕を掴んで引き寄せた。

 

「……グレイ様っ…」

 

「…話がある。」

 

ホントは話なんてどうでもいい。

このままどこかに連れ去って、朝まで俺の腕の中で放すもんか。そんな風に思う気持ちをぐっと堪えてそう言った。

 

「…ここじゃ、マズイよな。

…どこか別の…」

 

そう言った瞬間、ジュビアが体を水にして、サッと俺の腕からすり抜けた。

 

「…!」

 

「…あのっ、グレイ様、

すみません。ジュビア、今日はとても疲れていてっ……」

 

「……」

 

「…ですから、あの…、今日はちょっと…」

 

どうしようもなく困った顔でジュビアが必死に訴えてくる。

目元が少し、潤んでいるようにも見えた。

 

あぁ、そうかよ。

ここまで来ても、まだ逃げる気かよ。

ちゃんと、冷静に、話そうと思ってきた、のに。

そっちがその気なら、俺ももう感情のまま動くからな。

自分の手に思い切り魔力を集めて冷気を貯める。

そして再びジュビアの腕を掴むと、一気に凍らせてやった。

 

「……グレイ様っ」

 

「……行くぞ。」

 

そう言って引きずるようにジュビアの腕を引いて歩き出した。

 

「……グレイ様っ?

行くって、あの、何処に…」

 

「いいから来い!」

 

有無を言わせず怒鳴りつけると、ジュビアはビクッと肩を震わせて涙ぐんだ。

…くそっ、泣かせるつもりなんてなかったのに。

 

でも。

久しぶりに見たその泣き顔がたまんねぇくらい愛しいなんて。

震えるジュビアの腕を掴んで、そのまま無理矢理その場から連れ出した。

 

 

 

***

 

 

 

フェアリーヒルズから歩いて10分と少し。

たどり着いた自分の部屋の前で、苛々とポケットに手を突っ込んで鍵を探す。

途中からは、何処に向かっているのかわかったのだろう、ジュビアも抵抗を止めておとなしくついてきた。

相変わらず、俯いて震えてはいたけれど--。

 

バタン、とドアを開けてジュビアを中に引きずりこんだ。逃げられないように、鍵とチェーンを乱暴に閉じた後、ぐっと引き寄せてジュビアと向かいあう。

ここに来るまで、一切顔を見ないようにして引っ張ってきた。

顔を見たら、もうヤバいと思ったから。

そうして、ここにきてやっと、ちゃんとジュビアの顔を見た。

潤んだ瞳、少し上気して赤くなった頬、

小動物のように震えてるくせに、逃げようとしたくせに、それでも俺の上着をギュッと握りしめてくる手。

 

何だかいろんなものが溢れそうな位にこみ上げてきて、頭の中で、プツンと何かが切れたような気がした。

そのまま一息に力一杯ジュビアを腕に閉じ込めた。

力の加減なんて出来るはずもなく、思い切り抱きすくめて、首筋に顔を埋めた。

 

「…グレイっ…様っ」

 

そうして、そのまま噛みつくように唇を奪った。

 

「…ん、っ…」

 

声をあげた時に少し開いた口にすかさず舌を入れて、深く貪っていく。

 

「…あ…っ、待っ…」

 

角度を変えて、何度も何度も。

ジュビアの抵抗なんて無視して、思い切り抱き締めてキスしてやった。

 

そうして、ゆっくりと唇を離した後、少し腕を緩めて覗き込むと。

腕の中で息をあげてジュビアが上目遣いで見つめ返してきた。

相変わらず少し震えて、目を潤わせて。

 

くそっ。

そういうのがヤバいんだって、前から何回も何回も言ってるのに。

こいつはまるでわかってねぇ。

 

「…おまえさ、これで終わりだと思ってんの…?」

 

「…えっ…」

 

「…悪ぃけど、全然、

足りねぇから。」

 

そう言って、そのままジュビアを抱き上げて、

部屋の中へ連れていく。

 

「……グレイさまっ…!?」

 

腕の中でバタバタし始めたこいつの行動は見ないようにして。

ジュビアを抱き上げたまま、足でダンッと寝室のドアを蹴り開ける。

そうしてそのままベッドに放り投げて、上から覆い被さった。

 

「…やっ…グレイ様…待っ…」

 

両手をベッドに縫い止めて、耳元にキスを落としたら、ビクッとジュビアが体を固くした。

そのまま首筋に唇を滑らせていく。

 

「…おねがい…ですっ…待って…」

 

「…待たねぇし、やめねぇから。」

 

そうして、

ジュビアの両手を頭の上で一纏めにして押さえつけた後、空いた片手で 服のボタンに手をかけようとした、…その時だった。

 

「…グレイ様は、ずるい…っ」

 

ジュビアが、涙声で、そう叫んだ。

 

…は…?…ずるい…?

 

一瞬、動きを止めた俺の顔を、あの大きな猫目でキッと見つめて、ジュビアが続けた。

 

「…グレイ様は、…ずるい、です…

ジュビアが、逆らえないって、わかってて

……こんな…」

 

ジュビアの目元から、大粒の涙がポロポロと落ちていく。

 

「……」

 

「…グレイ様は、ジュビアの、気持ちなんて、

全然、わかってない…!」

 

そうして、何度も息を詰まらせて、つっかえながらジュビアがそう言った、その瞬間。

頭の中で何かが沸騰するのを感じた。

 

 

「…お前こそ…」

 

「………」

 

「お前こそ、俺の気持ちなんて、全然わかってねぇだろ…!」

 

吐き出すようにそう言うと、ジュビアが更に吃驚した目をして息を飲んだ。

押さえつけた手に思わずぐっと力が入る。

 

「……こんな…、

…好きな女に、こんだけ逃げられて、

平静でいられる男がどこにいんだよ…!」

 

こみ上げる気持ちを抑えきれずに、絞り出すような声でそう叫んだ。

……あぁ、そうだよ。

お前の言う通り、さっぱりわかんねえよ、今のジュビアの気持ちなんて。

何で、こんなに俺から逃げようとするのかなんて。

でも、お前の方が、もっとわかってねぇ。

俺がどれだけ必死か。

……俺が、どれだけ、お前を…

 

「…好きだ …」

 

掠れるような声でそう言った後、押さえつけていた手を放して、我慢出来ずにジュビアをギュッと抱き締めた--。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

その、言葉を聞いた瞬間は、何が何だかよくわからなかった。

 

今、グレイ様は、なんて、言ったの?

『好きな女』って言った?

『好きな女』って、ジュビアの事?

 

ジュビアが、頭を真っ白にして呆然としていたら、続けてグレイ様が、絞り出すような掠れた声で、

 

「…好きだ…」

 

そう言って、抱き締めてくれた。

 

ずっとずっと、聞きたかった言葉。

 

ジュビアの事が好きだって、その言葉を

グレイ様がくれた。

 

嬉しい。

嬉しくて、さっきまでとは違う涙がポロポロと顔の横を伝ってシーツに落ちてゆく。

抱き締めてくれたグレイ様の体を、ジュビアもギュッと抱き締め返した。

でも、涙が止まらなくて。

何度も何度もグレイ様の腕の中でしゃくりあげてしまった。

 

「…何で、そんなに泣くんだよ…」

 

そっと、腕を緩めて、両手でジュビアの顔を包みこみながらグレイ様が不安そうに聞いてくる。

 

「…だって、…う、嬉…しくて…」

 

大きな手で涙を拭ってくれるグレイ様に向かって一生懸命言葉を繰り出す。

 

「…は、はじめて、聞いたから…。

グレイ様の、気持ち………」

 

「……は…?」

 

「…ずっと、ずっと、

わからなくて、

グレイ様がジュビアをどう思ってるのか…

…だから、不安で…

でも、…聞けなくて…」

 

「ちょっと待て」

 

ジュビアが、ずっと思っていたことを少しずつ

言葉にすると、グレイ様が急に真剣な表情でそれを遮った。

 

「意味が、わかんねぇんだけど。」

 

「……?」

 

「…俺が、お前の事、好きかどうかわかんねぇってどういうこと?

俺、何回も自分の気持ち、お前に伝えてる、よな?」

 

グレイ様が心底わからないっていう顔でそう訊ねてきた。

フルフルと首を横にふる。

聞いた事、ない。少なくとも、はっきりした言葉では。

グレイ様は、そんなジュビアを呆然と見つめて、その後でピタッと固まってしまった。

 

 

 

 

<続>

 

 

 

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